↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/168

低地と山と

レーダーヲイジメヌンデ

君塚は暫くうんざりした表情で今朝方提出されたそれなりに分厚い報告書を見つめていた。


山の国が平原の国の農産物を買い漁っていて、それを戦狼の国を経由させてから加工して食品にしてから龍の国へ再輸出しているという事実である。

平原の国の穀物や野菜、果物が産地ロンダリングされ輸出がされていると言う面倒な事態に悪意が見え透いてしまい、仮想敵国として彼らを認識してしまいかねない状況ではあった。


そしてその取引での龍の国の側の対価は鉱山資源や人的資源──つまり奴隷であり妃以外の女性や男性達を対価に支払っている。


(……龍の国の件はほとほと愛想が尽きるな、一体全体なんだねこのクソみたいな内容の交易は?穀物の代わりに人を輸出って何時代……いや一応世界設定レベルでは中世ヨーロッパレベルだったな、クソっ)


このふざけた交易で山の国は傭兵として動員出来る兵士の数を増やす事が出来て、自国民は龍の国の民達(輸出された奴隷達)の管理職をするだけで良くなったと言う訳だ。

だが農産物を元々彼らは購入していたと言う訳であり経済的にも無闇に交易ラインを閉じて潰す訳にも行かず、平原の国としては今回の件について問い質すべきでは有るが無闇に突く訳にもいかないので困り果てていた。


だが平原の国でとある報せが届き事態は加速していった。


「ご報告致します摂政閣下、これが我らの掴んだ情報です」

「そうか」


諜報部は山の国に潜伏していた工作員からとある重大な報告を君塚に提出していた。


「ご苦労、この報告書が真実なら今回の事案は少し面倒な事態に成る。低地の国は『空間絵画』──月白もねの手によって復興出来たのであり、もし彼女を失えば確かに低地の国は崩壊してしまいかねないな」


低地の国への侵攻要請とそれを受諾した神堂の返信が丸ごと記載された報告書であり、月白もねの奪取を目論む神堂と低地の国の崩壊を願う山の国の結び付きを示す確固たる証拠であった。


「だが神堂に関しては少しだけ侵攻に前向きな理由は分かる。恐らく女だ、アイツは美女に目が無いが取り分け低地の国の資料に載っていた月白もねの写真を見るに彼女は美少女と呼んで差し支えないだろうな」


君塚は今回の軍事作戦の理由は美少女狙いだろうと思い、神堂に呆れると神堂のメンタルに関して一定の推測を行い浅ましいあの男の行動の理由について簡単に説明した。


「……よもやそのような理由で侵略行為に及ぼうとは、軍事に関して私は素人ですがこれは流石に……それに低地の国に侵攻すると言えど国境線はそこまで大きくなく侵入には大規模に行えるものでは無いかと……それに北方には鷲の国と高地の国が居ますから……」

「やるよ、アイツ高校生だから多分政治の事なんて分かるわけ無いだろうし攻める方がよっぽどリスキーな事を全く理解せずに攻めるさ」

「……暗君にも程があります」

「暗君どころかアイツがずぶの素人で無知な未経験者なのだから、何をするか分からん」


そして報告してきた担当者を下がらせてマルゲロフ将軍麾下の空挺軍とゴルシコフ提督麾下の海軍歩兵師団に出動を準備させた。動かせる時に動かせる兵力を何時でも投射する準備は万端だ、やるべき時に切るべきカードを揃えれば良いのだ。


低地の国に向かうなら戦車部隊を向かわせるよりもBMD-4Mを展開した方が手っ取り早いからだ。

IL-76も用意させて低地の国に向かう手段も用意して平原の国から低地の国へ介入する準備を整えてから最後に一つ重要な手続きをする事にした。


全ての準備を完了させた後君塚はヤドヴィガ殿下に念の為お伺いを立てていた。以前龍の国潜入の際に独断専行で注意されていたので、その件を反省して報告はせめてするようにしようとヤドヴィガの執務室に入った。


「殿下、神堂が動きました。場所は低地の国です。下級妃と上級妃を率いての侵攻計画を立てているようであり上級妃は2名動員とのことです。彼らに恩を売る為に一度政府と接触し外交的アプローチを行いたいのですがよろしいでしょうか?」


ヤドヴィガは相談を受けてから少し考え込んだ後、取り敢えず王として国益を第一にして動く事にした。


「君塚様、その提案大変結構では有ります。許可しますが一点考えて頂きたいのが高地の国です。低地の国は高地の国の関心が有る地域ですからあまり面倒な事態にならない程度に活動は抑えてください。これ以上外交的問題を抱える方が厄介なので」

「御意に、殿下」

「では早速取りかかってくださいね、君塚様。全てを一任いたします」

「は!!」


そして君塚がヤドヴィガの執務室を出るとそこに居るはずが無いのに何故か居た透が抱き着いてきた。


「兄さん♪来ちゃった」

「のわっ、透!?何でこんな所に…てか警備は一体…?ああもう、仕方ない俺の執務室に来い。安全にここから出してやるから二度と勝手に来るなよ?」

「えー兄さんのいけず、でもそんな兄さんも良いかもな〜。で、兄さん低地の国って所に行くんでしょ?」


しっかり聞いていたこの地獄耳弟に恐怖を感じた悠里はギョッとした顔で実の弟を見ていた。部屋は防音がしっかりなされている筈の部屋だ、漏れ聞こえる可能性は君塚自身がそれを良く知っている。


「あっ、図星じゃん。ならアドバイスだけど、私がアイツなら今回の遠征に連れて行くとして……そうだな、今回は負けられないし戦闘部門の上級妃を連れて行くと思うよ?多分その子達はナディアちゃんが全く相手にならない程度には強いから」


透は自身の知識と情報、そして神堂の考えを読んで兄に助言をした。


「そんなにそいつは強いのか?ナディアは複数の火球を同時に展開して操作出来るが」

「うん、めちゃくちゃ強いよ。あのクソ野郎に死ねと言われたらすぐ死ぬ位にメンタル面も怪物過ぎて逆に付け入る隙もないよ。相性もあの娘達側からしたらめちゃくちゃ良いし、ナディアちゃんは手も足も出ず嬲り殺しにされても仕方ないかな。遺体が残っていれば御の字、燃えカスかそれとも身体を消されてるかどっちかが基本だし」


その恐るべき上級妃の戦闘力について透は真っ直ぐ簡潔に伝えて、今回の武力介入に対する人選についても助言した。


「そうか、なら俺は護衛に誰を連れていけば良い?そんなに厄介な奴らなら誰が居ても変わらなそうだが」

「…うーん、連れてくなら兄さんがお気に入りにしてるソコロワ中尉って人にした方が良いんじゃないかな?あの娘達は気配を感じ取れるギフトじゃないから不意打ちするのが多分有効かなぁ?まぁ、全盛期の私なら全部撫で切ってるけど」


透はソコロワ中尉を推した。もし自分が全盛期なら、と言っているが本心でも自分の力が弱体化している事を嘆いてはいる。


「まぁナディアちゃんはそこらの下級妃相手にはまぁ、普通に勝てるからあの娘も同行させて後は兄さんの部下がそれなりに数が居たら勝てるかな☆」

「そうか、ありがとう。あとでコーヒー位は奢ってやる」

「わーい、兄さんの奢りだ!!」


その後低地の国侵攻部隊を率いる上級妃達の情報の書かれたメモを渡されて尚も付いてこようとする透を何とか説得し弟を部下に連れ出させて低地の国に行く人員について選別して行くことにした。


何故会議が漏れ聞こえていたかはこの時点では君塚は尋ねなかったが、もし聞けていたら少しだけ話が変わっていたかもしれない。



一方こちらは高地の国。


とある日常風景である。

今日も国防空軍は市民の要望に可能な限り沿い夜間と朝方に訓練を行い、ユーロファイタートランシェ4に乗った戦闘機乗り達は市民に配慮して高高度で戦闘訓練に勤しむ。基地司令のバルクホルンやラル、ルーデルは騒音問題に対する市民団体からの抗議活動に対して対応に苦慮していたり、女帝陛下の思い付きによりスウェーデンのBas 90をモデルにした機体格納庫の分散配置策により整備作業の作業員から改善を求められたり格納庫周辺の木の手入れについてのクレームが来たりと彼らも彼らなりに苦慮していた。

空軍のミルヒ元帥やグライム元帥は議会下院に呼び出されて飛行訓練時間の削減を求められていてうんざりした表情を浮かべて平和ボケしている自国の現状に嘆いていた。


国防陸軍は訓練後レオパルト2A8戦車やプーマ歩兵戦闘車でドライブスルーに来ている兵士達が続出しており店員達も普段通りの日常風景の為それらを動じす接客していた。

朝歩兵達が訓練の為に行進していても市民達は一切関心を示さず、今日の仕事や勉強──つまり目先の用事について考えていて軍国主義だのどうのはあまり関心が向いていなかった。

ロンメル元帥やモーデル元帥、ルントシュテット元帥は普段通りの日常であるエリカへの定時報告を行い自分達の隷下の部隊が予定通り訓練に勤しんでいる。


レーダー提督率いるクリークスマリーネは16隻の戦闘艦と6隻の潜水艦を抱えていて、彼らは定期的に外洋で訓練するものの艦艇数の少なさから存在がエリカにそこまで重要視されてライヒの中では地味な存在では有るものの敵艦隊と差し違える覚悟を決めた水兵達は精強な兵士達である。尚現在提督はレーダーのみであるが、それは今も尚問題無く海軍は稼働しているので誰も指摘はしていない。


民衆は一人一人に普及しているテレビで帝国議会の国会中継を見たり政府に批判的なニュースのコメンテーターの意見を聞いていたり、またはサッカーの試合を見て熱狂したりして余暇を過ごしていた。

彼らは自由主義国家であり資本主義国家として基本的人権が尊重され、様々な職業に就き投資家や資本家層も成長して多数の大企業が並ぶ摩天楼を帝国の首都ゲルマニアに建てていた。


内政についてはシュペーアが転生者達の鎮圧と討伐で破損したゲルマニアを見て定期的に発狂していたり、政府の派遣した警官隊が転生者との戦闘で大体1個大隊規模で消し飛ぶ様や特殊部隊がサラッと壊滅したりする報告書にハイドリヒがその金髪を掻き乱して泡を吹きながら荒れ狂っていたり愉快なゲルマニアの宮廷音楽が奏でられている。


「あああああああ!私のゲルマニアがまた壊されてしまったああああ!!今度は官公庁ごと大通りが吹き飛ばされて大勢の上下水道管や電柱まで!??モゥマヂムリ…」


今もシュペーアはFXで資産が消し飛んだ投資家のような悲鳴を上げながらゲルマニアの再建策を模索している。南無三、隣のハイドリヒは燃え尽きた灰のようになり警察官の屍150ダースの報告書で崩壊寸前の帝国を守るのにどれだけの血を流せば良いのか悩まされている。

エリカが創造した旧ナチ系幹部や軍人達は西ドイツもビックリの洗脳めいたコンプライアンス研修により倫理観の矯正が実施されていて少なくとも市民を弾圧・虐殺するような事は起きる事は無い。



軍の規律は正しく、そして今日も歯車として絶え間なくいつも通り問題なく稼働している。

そのせいかエリカは────完全に熟睡していた。だらしないパジャマ姿で8時に成っても起きようとはせず、寧ろ更に夢の世界へと旅立とうとしている。


「お目覚めください陛下!もう朝どころか昼でございますぞ!?今日もまた夕方まで寝られるおつもりですか!??」

「うっさいわね伍長……久しぶりにお休みなんだから良いじゃないの……それに今日も平和なんだし」

「平和であろうともいつか戦争はやって来るものでございます陛下ぁっ!後、至急お伝えしなくてはならない事案が出て参りましたから起きてください陛下っ!!」

「グエッ、……何よ至急の案件って?私が動かないと駄目なの?国家人民軍では駄目なの??」


国家人民軍はエリカが高地の国を平定した際地方領主達の私兵が失業者に成った際、やむを得ず立ち上げた議会側に統帥権の有る軍隊であり彼らはIV号戦車やFw-190A-8等を装備した現地人部隊でエリカが統帥権を持つ国防軍の代わりに政府側に持たせた軍隊である。

政府と皇帝のパワーバランスの為に作成された軍隊で国家ではなく憲法と民主主義の為の軍であるのがこの軍の特徴だ。


国外に駐屯するのも基本は国家人民軍であり国防軍はやはりエリカに統帥権が存在しているもので国外での活動は控えられていて、海外での国益保護の為に真っ先に出てくるのが国家人民軍だ。


「そういう訳には参りません陛下、議会にかけても間に合いませんし首相は今議会で自身のスキャンダルの対応で手が取られています!『龍の国』が動きました。平原の国より知らされたもので同盟国たる低地の国へ侵攻するとの報せです」

「ついになのね……わかったわ。なら直ぐに向かうとしましょう。同盟国を見捨てるような大国に誰が大陸の盟主として奉じてくれるの?」



黄金の千年王国は今新たな敵に対し牙を剥く。

フリゲートチョワヨー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。