表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/47

ふざけた話

OJT研修

平原の国の国境を、隣国である「戦狼の国」が侵犯したとの急報が届いた。

君塚は訓練中の「王国軍」を後方へ下げ、自身の手駒である私兵を派遣して迎撃にあたらせた。

国境警備旅団は一時後退し戦力を再編しつつ遅滞戦闘を試みるが、敵の主力である「聖女」たちの攻撃魔法に苦戦を強いられていた。

魔法障壁による防御と広範囲への攻撃魔法。

旧式戦車と相対的に練度の低い二線級の兵達では分が悪すぎた。

君塚は即断し航空支援を投入する。

「Su-17M3は爆装で発進。敵軍の先頭を叩いて何とか出鼻を挫け」

聖女が前線に出ているとの情報に基づき先制空爆による出鼻くじきを狙ったのだ。

この目論見は成功した。

超音速で飛来した戦闘爆撃機が投下した爆弾は聖女の対空警戒の隙を突き敵前衛に甚大な被害を与えて進軍を停止させた。

ここまでは良かった。

問題は主力となる陸上戦力の展開だ。

主力となるT-72戦車部隊が進撃を開始するが現場は大混乱に陥っていた。

「総司令部! こちら第1師団第1戦車大隊、地図と地形が合いません! 現在地ロスト!どうぞ!!」

「バカ野郎、無線が通じないぞ! 伝令を出せ!」

「偵察部隊は何やってる!? ……は? まだ最後尾で給油中!?戦車部隊がもうすぐ戦場に着くんだぞ?!?」

新規編成された師団は装備こそ相対的に最新だが、兵士の実戦経験が皆無だった。

さらに致命的だったのは指揮通信手段の欠如だ。

君塚のいる総司令部スタフカと前線を結ぶのは前時代的な有線電話と不安定な無線のみ。

意思疎通には絶望的なタイムラグと齟齬が生じ進軍速度は亀の歩みとなった。

偵察部隊が最後尾を進むという笑えない喜劇まで発生し、君塚は頭を抱えた。

(やはり、無理だ。俺一人で3個師団のマイクロマネジメントなんて……師団長クラスの人材が最低でも一人は必要だ)

しかし現地人に近代戦の指揮など不可能。

幕僚たちもお手上げ状態で君塚の胃には穴が開きそうだった。


それでも腐っても近代兵器だ。

負傷者を治癒させ再び進軍を開始した戦狼の国正規軍とやっと到着した君塚軍の機械化部隊が正面衝突した。

君塚軍は南方から進出し敵正面へ展開。西方に後退していた国境警備旅団と連携し、敵を半包囲する形を作る(意図したというより、結果的にそうなった)。

敵の狙いは手負いの国境警備旅団を食い破り側面から君塚軍本隊を叩くことだったようだがここで増援の補給を受けた国境警備旅団が粘りを見せた。

T-55をトーチカ代わりに防衛線を固め、反転攻勢の機会を窺う。

「航空支援、第二波! 敵の魔法障壁を飽和させろ!」

再補給を終えたSu-17編隊が爆撃を敢行するが今度は聖女たちも警戒しており強固な魔法障壁に阻まれて決定打にならない。

ならば、と君塚は「量」で押し切ることを選ぶ。

Mi-24ハインドによるロケット弾の雨、そしてBM-21グラート、2S1、2S3自走砲による猛烈な効力射。

「撃て! 撃ち続けろ! 魔法のバリアが破れるまで撃ち続けるんだ!」

砲兵達は叫びながら次々と弾薬を消費していく。

物理的な弾幕が魔法障壁を削り切り、その隙に展開を完了したT-72部隊が牙を剥く。

125mm滑腔砲の斉射が聖女の障壁をガラスのように砕き、敵本陣を蹂躙した。

国境警備旅団もこれに呼応してT-55で突撃。混乱した敵右翼を食い破り、主力との合流に成功する。

結果敵将軍クラスは一斉に逃走。戦狼の国軍は壊滅したが追撃はグダグダで多くの敵を取り逃がしてしまった。

捕虜の連行も一歩間違えれば「死の行進」になりかねない惨状だったが何とか平原の国の収容所へ連行することに成功した。


戦闘処理がひと段落した執務室にあの不快な電子音が響いた。

【おいーっす☆ 頑張ってんねー君塚ちゃん? どしたん? 相談乗ろっか?】

「……久しくて懐かしささえ覚えるよ、このやかまし女」

久しぶりの運営の声に、君塚は「しばくぞ」という感想を抱く。

【いやーん☆ 君塚くうん、やかましいなんて女の子に言うセリフじゃないよー?】

「御託はいい、本題を言え。俺の時間を浪費させるな」

【…ちぇっ、久しぶりに構ってくれそうな雰囲気だったのになー。ま、いっか…でー…何だっけ】

「しばくぞ」

【何も話題なくてもいーじゃん別にさー!? 話しかける事くらい自由にさせてよぉー!!】

思わず漏れた本音に、担当官が逆ギレする。

「黙れスットコドッコイ。これ以上わけのわからない戯言を並べるなら、貴様の評価アンケートに『最低』と書いて送るぞ」

【えー、そろそろギフトの使い方に慣れたかなーって思っただけだよケチー。で、えーと……ああそうそう! 君塚悠里、あんたに1個朗報があるんだ!! それも今すぐアタシに土下座して感謝すべきやつ!!!】

「さっさとそれを言わんか、このバカモンが」

君塚の苛立ちはピークに達していた。

【えーと、とりあえずそっちに資料を送付したけど見れる?】

「……ああ、目の前に突然湧いたこの謎の紙束か? 題名は……」

【そうそうそれそれ! 多分『将軍ガチャ』ってなってると思うけど、合ってる??】

「ああ、このふざけた虹色のフォントをどうにかしたいと思うのは俺だけではないはずだが?」

【は? アタシのセンスバカにしてんのー? ざけんなし】

担当官の説明は簡潔だった。

要は、国盗り成功ボーナスのガチャチケットで、史実の将軍を召喚し、指揮官不足を解消できるというものだ。

「……リスキーなギャンブルをさせるな。無能な将軍を引いたら大惨事だぞ」

【でもでも〜、結局人手不足なんでしょ〜? なら回した方が良くね? ね? そう思うじゃん?】

「……腹立たしいが、一理はある」

背に腹は代えられない。君塚は覚悟を決め、担当官が出現させたガチャ筐体のレバーを回した。


ピコーン、という気の抜けた音と共に、カプセルが開く。

そこに現れたのは――。

『SSR将軍 コンスタンチン・ロコソフスキー元帥』

「…………は?」

君塚は我が目を疑った。

かの有名な「ソ連邦元帥」。独ソ戦の勝利の立役者であり、スターリンの大粛清を生き延びた不屈の男。

ぶっちゃけ、君塚が全権を委任して隠居してもいいレベルの超大物が来たのだ。

「やぁ同志君塚。これから貴殿の下で――」

ロコソフスキー元帥が流暢な言葉で挨拶しようとした瞬間、脳内で運営が絶叫した。

【んぬっふぉ!? 何でSSRいきなり当ててやがるのさこのアホ塚?! あんたそんなにガチャ運良かったの!?? スタートダッシュガチャでもここまで良心的な設定ないわよ!!!】

「……こんな大物がいきなり来るとは。俺はしばらく後方部門に引きこもれそうだな……あるいは兵站ラインの作成とか」

「……あの、同志君塚?」

困惑する元帥の声に、君塚は我に返り、居住まいを正した。

「失礼した。やぁ同志ロコソフスキー元帥、君に会えて光栄だ。……とりあえず、私の指揮下の全軍を君に任せたいのだが、頼めるか?」

「……了解しました、同志君塚閣下。では、その部隊はどこに?」

「それも含めて、この後ブリーフィングを行う。すぐに来てくれ」


君塚は念のため、ヤドヴィガ殿下にロコソフスキーを紹介した。

「彼は遠い北国から来た優秀な傭兵隊長でして……」などと適当な理由を取り繕ったが、5歳の女王にはあっさりと見抜かれ、やむなく「魔法のような力で呼んだ」と真実を伝える羽目になった。

ロコソフスキーは正式に軍団長に就任し、3個師団の指揮を執ることになった。彼にはまず戦狼の国方面の防衛と、軍の再編リハビリを任せる。

これで一安心……と思った矢先、運営から新たな通達が届いた。

『君塚悠里への創造不可兵器の設定について』

『君塚悠里はSu-57、T-14等のロシア系最新兵器の創造を禁ずる』

「……まあ、そんな未来兵器があっても整備できないしな」

君塚はどうでも良さそうな顔をしたが、問題はその次だった。

戦狼の国との戦闘経験値ボーナスにより、さらに「1個戦車師団」と「1個機械化狙撃兵師団」が追加されたのだ。

戦力増強はありがたい。しかし、この追加された兵士たちが問題だった。

彼らは全員、「コサック」出身の兵士達で編成されていたのだ。

「皇帝」か、あるいは「自分たちが認めた強い将軍アタマン」にしか従わない、誇り高き荒くれ者たち。

彼らは君塚を見て、「なんだこの優男は?」という目で見てくる。

「……ロコソフスキー元帥に、もしかしたらもう一つ仕事が増えそうだな」

君塚は再び頭を抱えた。

若しくは社長の悲嘆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ