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【祝10000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第9章

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嗚呼、無情

捕らえられる者

こうして新倉の『三日天下』だったとはいえ鷲の国で起きたクーデターに端を発した泥沼の内戦は終結し、外部から浸透しようとした『第三の転生者・天道輝』の強力な軍事力の撃退にも一応は成功した。


だがそれ以降も問題は続く。このファンタジー大陸におけるシステムを用いた覇権争いはここからが正念場であるが故に。


「さて、俺は今割と不愉快な気分だ。理由は分かるか、駄メイドエルフ女?」

「……」


JTF総司令部、キャンプ・フォードの簡易尋問室。


目の前のパイプ椅子に縛り付けられたエルフ耳の少女が黙秘を続けているが君塚は焦りが内心の苛立ちが募る。久々に自ら実戦に駆り出されて、それでいて『見た目』だけなら「身重の少女」への尋問なんて汚れ物を自分がやるのだから。


部下の尋問官とかでも連れてくれば良かったがそのような事よりも「やりたかった確認作業」が一つ有りそれをどうしても自分の目で確かめたかったが故に来ている。


部屋の隅では複数のカメラによる録画もされているがこれはあくまで軍や諜報部での『教材』の為の録画であり、「女性支配を受けた者への判別法と対処」としてマニュアル化して使わせる動画である。


「……取り敢えず聞くぞ。お前の名前は?」

「誰が吐くもんですか」

「天道とやらは、洗脳するだけで、捕虜になった時の教育(SERE訓練)と防諜情報とかも全く与えてなかったということか。程度の知れる浅はかな男よ」

「……! ご主人様を愚弄しないでください!! 私は『リフィーネ』です!!」

「ありがとうリフィーネ。名前を教えてくれたならこれから話しやすくなるよ、可愛らしい名前だ」


『女性支配』による精神隷属の副作用によりリフィーネはアッサリと自分の名前を吐き、君塚は案の定だと思いこの「相手を煽るパターン」で尋ねる事にした。


「……っ! 貴方のような野蛮人に気安く名前を言われるのは不快なのでやめてください!」

「正規軍の捕虜尋問でもこの程度は最初に聞かれるぞ? というか、君達が軍のドックタグや身分証を持ってないからこんな下らない問答をさせられ俺が苦しんでいるんだ。こっちも暇じゃないんだぞ。女遊びしか能のない君の『ご主人』とは違ってね」

「な……!? ご主人様を何処まで愚弄するのですか、この野蛮な汗臭い独裁者!!」

「……そのはしたない事した結果の『不自然な腹』とか、肌をガンガンに出してる実用性皆無のフレンチメイドの服装で文句言われてもな。俺はそっちの趣味が弱めの堅物なんでわからんがどうなんだリフィーネ」

「……!! 私とご主人との間のこの愛の結晶をよくも!!」

「知らんわ。俺達転生者にはシステム的に不老が備わっているから後継ぎの子どもなんて政治的にリスクが有るから不要だし、そういう性欲は自分で処理すれば良い。後逆セクハラで訴えてやりたいのをこっちは必死に抑えてやってんだから、感謝の一つは欲しいもんだ」


みるみる顔を赤らめ怒りのあまり拘束されたまま立ち上がろうとしたが、手を上げても結局立場が悪くなるだけだったリフィーネは悔しげにそのまま座る。


「まぁ流石に可哀想だ、こんなに簡単に口が軽くなるデバフをクソ野郎と一回寝ただけで背負わされるなんて。俺のところのメイド達はそんな口は軽くないし、はしたない事もしてないし、第一――」

「貴方に何がわかるのよ!? 私は、私はかつて酷い奴隷商人から、あの方に……」

「失礼します閣下。コーヒーが入りました」


室内にナディアが「これはまた不機嫌そうな顔をして」人数分のマグカップをトレイに乗せて持参しやって来た。彼女には珍しくワイシャツの第一ボタンまでキッチリ締めて普段の緩めの服装を正している。


「ありがとう。飲むかい?」

「閣下。それと、そこの貴女も」

「……ありがとう、ございます」

「そのコーヒーへ自白剤や毒は入ってないよ。我々は法に則る正規軍故に捕虜虐待はしない主義だ」

「私もこんな所でエルフの無惨な死体を見て喜ぶ悪趣味な志向は無いのでご安心を」


ナディアは不機嫌な仏頂面のまま、そして君塚は優雅そうにコーヒーを飲み始めるがリフィーネは毒を警戒してかまだ手を付けていない。


「……ああ、妊婦はカフェインのコーヒーが悪影響とかどうこうを気にしているのか? 今更あんな激しいCQCや銃撃戦を繰り広げたような奴がそれを気にするとは……奴の『女性支配』により低下した知力は凄いな。全く矛盾している」

「ええ。ニケ様からいただいた事前の資料が正しければ、深刻な精神と知能の低下の影響下に置かれているものかと。私がそういう巡り合わせにならなかったのは運命とはいえ閣下が私を真っ当な人間として拾っていただいたからなのでしょう」


ナディアは漸くいつもの柔らかな微笑みを取り戻し君塚は少しだけ安心してからリフィーネの尋問を継続する。その宝石の如き美しい琥珀色の瞳は主である君塚のみを真っ直ぐ見定めていた。


「で俺については何か、その『ご主人様』とやらは言っていたか? 後さっきの言いかけていた奴隷の境遇についても聞きたい」

「……黙秘……です」

「エルフは強引で頑固な所が有るんですよ閣下。ついでに自然と傲慢になるし会話もしたくないなら口を割るよりすぐ黙るものです」

「エルフってそんなものなのか。人間とは違うな。勉強になるよ」

「いえいえ閣下。私は以前戦狼の国で『庶皇女(アセナ)』だった際に初陣がその『エルフの反乱鎮圧』だったのですから……ああ。初陣だったのに散々に負けましてね……はは、はぁ」


死んだ目のナディアはつい思い返していた。腹立たしい程に厄介なエルフの市街地戦能力を見縊った結果大敗した悪夢の戦役を。

巨大な樹木を拠点に生活するエルフ達が反乱を起こしてスルタンが鎮圧軍を差し向けた。それが彼女の初陣であった。だが樹木は強固な要塞都市と化していて軽騎兵と重装歩兵主体の戦狼の国の正規軍は泥と木の根に足を取られたり建物の中から正確な魔法の狙撃をされてアッサリと崩壊した。


目の前に居た屈強な軍人達が呆気なく討ち取られる様を脳裏に蘇らせる。それ以来ナディアにとってエルフは苦手になり極力触れ合いたくない存在として考えていた。


「! 貴女、あの場所にあの虐殺の戦場に居たの!?」

「ええ、当時11歳でしたが……まさか貴女も?」

「よくも、よくも私の氏族の住処を!!」

「凄い偶然だな。それでオチも言い当ててやろうか? 『最後は森を焼いて何とか鎮圧しましたー』ってオチだろう? 面倒になったから、って」

「はい。私が森に撒いた燃料に魔法で引火させて、そのまま森ごと焼き払いましたよ。面倒だったというか、最初からこうしたら良かったのにと指揮官としてずっと考えていて……」

「貴女の、貴女たちのせいで、私達の生き残った氏族は皆、人間の奴隷にされて、それで、それで……私はご主人様に助けられるまで、人ではなかったのよ!!」

「戦争に負けたのですからやむを得ないかと。大体、非武装の徴税吏を先に殺すのは何時の時代のどんな国の法律でも論外ですよ?丸腰の役人の暗殺なんて普通はしませんから」


憎しみの籠もった視線と殺伐とした空気が尋問室の内部に籠もり、中々に出ていく気配が無く今にも殺し合いが発生しかねないので君塚はため息をついて介入する。


「はぁ。よし、血生臭い同窓会は終了だ! リフィーネの過去は大体想像がついた。天道は奴隷だったお前たちをで助け、恩を売る形で依存させたわけだ。ではリフィーネ、俺については何か奴から情報とか聞かされていたか?」

「……ご主人様が仰っていたのは君塚悠里は悪逆無道の独裁の悪党とか、性奴隷を手元に多数置いているとか、そんな事ですかね。後は、多数の王国の姫君を拐かして王位に据えて、国を裏から操ってるとか」


ドンッ!!

耐えられなく成ったナディアが机を強く叩き、憤慨して赤らんだ顔が僅かに存在するリフィーネのメイド服の肩紐を握りしめ強引に引き寄せる。


「おい、エルフ耳。私の大切な人に対しふざけた戯言を繰り返すならそろそろその首から上を燃やしても構わないのですよ?」

「違うのかしら? 貴女だって元はスルタンの所有物で、今は君塚悠里の――」

「いい加減にしろ、貴様ら」


君塚はホルスターから巨大なRSh-12を抜き放ち銃口を天井に向けて2人を着席させる。


「一応だ、ここから先は『尋問』から『拷問』に切り替える。こうして無駄に時間が過ぎ去る事は指揮官として耐え難いからな」

「……! やっぱり、ご主人様のおっしゃる通りだったのね野蛮人の君塚悠里!!」

「野蛮人でも『法と文明』は守れるんだよ、お嬢さん。悪党でも『正義の味方』は出来るしそして略奪者も『誰かの親』になれる。そして、君にこれ以上聞くべきことはなくなった」


君塚は銃から弾を1発だけ残して弾倉を1回勢いよく回して、それから机の上に無造作に投げ渡す。ロシアン・ルーレットだ。


「取り敢えずそれで1回自分の頭を撃て。それから君の平原の国での処分を決める」

「……!」

「聞かねばならない事は吐かせた、だが君は権威主義国家の正規軍が捕らえた『非正規のテロリスト部隊』、つまり便衣兵のようなものだ、なら処刑処分する為のシナリオは無数に有る。だから……多分これは、君のような奴隷に対して行うべきささやかな余興さ。君の『ご主人様候補』が暇つぶしにしていたかもしれない単純な運試しのゲームを模している」


喉が引き攣るがリフィーネはぐっと堪えて握る、銃口を覗こうとするが暗くて良く見えない。そして震える手で重い銃をこめかみに当てて、引き金を引こうとする。


だが力を込めてもトリガーは引けず、手は激しく揺れて心臓が跳ね上がるように鼓動が鳴り叫ぶ。涙が止まらずそして息は荒げて、無性にこの銃を今すぐ下げたくなる。


(もし実弾が込められていて、当たったら? 私は良い、だけどお腹の赤ちゃんはどうなる? 折角、折角ご主人様からいただいた未来の、金色のチケット。今はただの肉塊だけど、いずれは人になり、ご主人様との間の輝かしい未来を描く為の、為、の……。)


ごとり。


それが答えだった。銃が手から滑り落ち、机に音を立てる。


「……成る程な。それが答えか」

「流石エルフ耳。自分が死ぬのが耐えられませんでしたか、意地汚い」

「う、うぅ……無理、です……赤ちゃん……が居るのに……出来ません……よ……」

「それがお前達が今回の戦役で傷付けようとした『鷲の国の民の未来』だよ。今から更なる戦地に変えようとしたこの大地と海にはそれらがまだ何百万、何千万も居るんだ。彼らのこれからを理不尽に奪うならそれが全部『怨嗟の声』としてお前達が背負うべき責任だったのだ。……ちなみに、その弾はただのダミー弾だ」

「ひっぐ……う、うわぁぁぁ……ああ、ふ、ぐっ……ううう……!」

「泣くなリフィーネ!新倉と核兵器が奪われて、アナスタシア殿下が攫われ、奴の手籠めにされていたらこの国は天道との戦争で『赤ん坊さえ生まれない核の焦土』になる所だったんだ。そして、『これから』という言葉は無くなり、『これまで』が支配する悲しい未来がな。お前は、それを手伝おうとしたんだ」


ナディアはぽろぽろと泣きじゃくるリフィーネを見て、少しだけ毒気を抜かれて呆れていた。


「ではこの情けないエルフ耳はいかがされますか、閣下? 取り敢えず略式の有罪で処刑、ですか?」

「そうだな。それも良いが取り敢えず本国へ連れて帰るぞ。まだ若くて労働力として使えるだろうし、何より」

「何より?」

「正しい文明とメイドの在り方をこの子に見せてやりたくなった。実年齢はともかく、見た目が10代半ばの少女が奴隷から『メイドという名の娼婦兼捨て駒部隊の隊員』だ。それに……」

「まさかですが閣下……また手をお出しに……」

「風評被害をお前も受け取るな!メイドという格式高い職業を彼女は全く理解していないかもしれんから、うちの屋敷の有能なメイド達に『本物の教養と気品』を徹底的に教育させて正しい認識を持たせたい」


ただそれは君塚が思う「家を守る一員としてのメイド」が何たるかを知り、そしてその天道と言う「ロマンもメイド服の趣味も分からない性欲まみれのつまらん男」に真の格式とロマンで優越感に浸り、マウントを取りたいだけの「男としての意地」である。


「……やっぱり、閣下は『無類の女好き』なのは否定出来ないのでは?」

「悪いが俺にとって花は花瓶に美しく飾り立て、或いは鉢に生けて育てるものだ。手を出して蜜を吸うのは趣味に合わん……。いつもそうだっただろう? ナディア」

「そうですか。ならいつ私の花の蜜を集めに来られるのですか、閣下?」

「枯れる前には、と行きたいもんだが……その前に俺に飽きるだろう?」

「飽きるなら、とっくに何処かの男とくっついてますよ。全く……それに貴方様と一緒なら火の海もまた一興ですし…ふふ」


呆れ顔のナディアの瞳にはすっかり君塚の扱いに慣れている『女としての顔』がチラリと表に出てきている。


「あ、あの、私は……」

「ああ、捕虜として本国へと連れ帰る。そこでメイドとしての再教育だ。そこから先のお前の人生の全部の予定は決める」

「だ、そうですよ。閣下のお気に召したようでしたから私は何も言いませんが。良かったですね、少しだけでも地獄から息抜き出来そうで」

「え、えぇ……」



一方でJTFが拠点にしている軍港ポート・ゼネラルではクズネツォフ提督はとある『信じられない軍艦』が当然のように堂々と我が物顔で入港してくるのを見て、開いた口が塞がらなかった。


「あんな、あんな超巨大軍艦がJTFに配備されているとか、我々の資料でも記載されていないぞ! 何だあの巨艦は!? 私達はあんなのと一緒にやり合っていたのか!??」

「提督……アレは……一体……。天道の艦隊が、降伏してきたのでは……」

「向こうの護衛のアーレイバーク級も、何か数が異常に増えてないか……?」

「そうだな…スプルーアンス提督を探さなければ…こんな艦隊が来るとは一言も…!」



「どうやらご覧いただけたようで何よりですわ」

「あの人間の部下はいつもこう、状況の変化にギャーギャーうるさいやつばっかりなのかしら」


「誰だ!?」

護衛の幕僚達が突如艦橋に現れた声にすかさず拳銃を抜く。

「あらあら、怖いわねベロボーグ。やっぱりこのサプライズの説明の機会は君塚経由でもう少し早くしたほうが良かったんじゃない?」

「そうかもしれませんが驚く顔が見れたのでこれはこれで良かったではありませんかチェルノボーグ」


空中に浮遊するシステム管理者の双子の少女が提督と対面している。


「始めましてクズネツォフ提督。私はベロボーグ」

「私はチェルノボーグ。空間のポイント指定移動は少ししんどいけど……まあ、あなたに直接会えたしいっか」

「……閣下の新しい担当官殿か。今回のこのデカい空母の件は貴殿らの仕業かね?」

「ええ、勿論。天道のチートに勝つにはこれくらいのアドバンテージがないとね、それに─」

「貴方方への支援のために君塚のポイントを使って、少し『お買い得になった艦艇』を購入しただけですよ、ねぇチェルノボーグ」

「……私が話してる時に割り込まないで欲しいわ、ベロボーグぅ……?」


眼下の港にはJTFの旗を掲げた『ジェラルド・R・フォード級原子力空母』とその護衛の多数のアーレイバーク級フライトIIIが入港し、JTF艦隊はより一層天道すら凌駕する狂気の超兵器として強化されたのであった。

貴方には権利がある


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