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【祝10000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第9章

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薄暮の海戦

悪意が襲いかかる

スプルーアンス提督は最新の暗号通信による偵察報告を聞いて愕然とした。


まさか自分達の全く知らない大規模な『アメリカ軍の空母打撃群』が沖合に展開していて、それが自軍に対して明確に敵対的な存在である事がたった今判明したのだ。


「今日は我々JTF海軍にとって創設以来最も絶望的な戦いに成りそうだな……こっちの部隊は君塚閣下が創設してからそう時間は経ってないが」

「そうですね提督。はっきり申し上げるなら劣勢極まりない絶望的な状況です。空母の数が違います。これで正面から挑むのは…ダンボール紙で出来た剣とハリボテの馬で完全武装の重装騎士に戦いを挑むようなものかと」

「それは言い過ぎだが、実際、空母から発艦した80機以上のF-35C、F/A-18E/Fなどの第5・第4.5世代航空機の飽和攻撃に襲われたらいくらイージス艦でもひとたまりもない。急いで逃げるか」

「それでソビエトの『ポチョムキン艦隊』は? どうされますか。多分、奴らの最大の狙いはまさにあれにまつわる潜水艦隊への核の補給阻止、もしくは核の強奪だと思われますが」

「……仕方ない。なら少しだけオープンチャンネルで奴らに呼び掛けろ。こんなトチ狂ったソビエト軍が理解してくれるか知らんが敵の敵は味方だ、頭数になるなら欲しい」


ポチョムキン艦隊・旗艦『アドミラル・ナヒーモフ』にて。


「……何だと?! アメリカの艦艇どもが我々へ公用無線で呼び掛けている? 一体何の情報か分かるか!?」

「コルニコフ中佐! お気を確かに!! 相手は我々の不倶戴天の敵なのですよ!? 我らを罠にハメて、利用しように決まっています! あんな資本主義者の情報は、真に受けるべきでは――」

「だが、もしそれが真実なら!? あの出処不明の怪しい機密文書(秘密指令)の矛盾も全て納得がいくかもしれん! 早く私にその内容を聞かせるんだ!!」


コルニコフ中佐は敵であるはずのJTFから直接連絡が来たことに驚きを隠せず、しかし漠然とした「この航海への致命的な謎」に終止符を打てる可能性が有るなら藁にもすがる思いだった。


(これで破滅的な核戦争が避けられるならそれに越したことはない!)


『こちらJTF艦隊旗艦、強襲揚陸艦アメリカ。今すぐソビエト艦艇に通達する。これは一方通信である。貴艦隊は我々以外の何者かの罠にはめられたのだ。目的は不明だが我々以外の強大な所属不明の空母打撃群が貴艦隊のすぐ北北東30海里先に展開している。今すぐ南西へ逃げられたし。さもなくば奴らは貴艦隊撃滅の為、艦載機を既に対艦爆装させて発進させた事は確認済みだ。繰り返す――』

「……だそうですが、いかがなさいますか中佐?」

「成る程。なら、このふざけた『潜水艦へ核を補給せよ』という秘密指令書に記載された、ふざけた意図が理解出来たぞ、くそったれ(Сука блядь)!!」

「ですが、敵の欺瞞かもしれませんから――」

「欺瞞なら?! 欺瞞だとしても我らはよりによって、ソビエトの最後の切り札である『潜水艦隊の正確な存在座標』をノコノコと出向いて全方位に暴露した大馬鹿者の恥さらしではないか!! はぁ、はぁ、クソがっ!!!」


近くのゴミ箱を蹴り飛ばして艦橋で怒りが爆発したコルニコフは懐からスキットルを取り出し、中に入っていた度数の高いウォッカを一気に飲み干す。

そして悪夢のような状況にソビエトの士官として最低最悪の、しかし『この世界に今生きている人類として最も正しい決断』を下す。


「今すぐ、今すぐアメリカ野郎どもと回線を繋げろ。話が有る」

「はっ! 直ちに通信を開きます!!」

「今に見てろ、資本主義勢力め……だがそれより先にわけの分からんテロリストだ!! 潜水艦隊と暗号通信は繋がったか?」

「今、つながって居ます!」

「……潜水艦隊へ通達! 今すぐ最大戦速で南西にひたすら逃げろ! 今すぐだ!! 核を渡させるな、誰にもな!! 特にタイフーン型は絶対に沈ませてやるもんか!!!」

「了解しました!」


明らかな越権行為だったが知ったことでは無い。謎のテロリストによる『ソビエトの核兵器の奪取』なぞ前代未聞でありそれだけは絶対に避けねばならない。ならば核兵器をこれでもかと満載しているタイフーン型は絶対に沈ませないし渡さない。そして万が一敵の手に落ちそうになるなら、自爆させてでもこの艦隊で沈めてやる。

最後の大仕事になるとコルニコフ中佐は予感した。それは憎き敵と手を結んででも、成し遂げなくてはならない大仕事だった。


『こちらポチョムキン艦隊旗艦アドミラル・ナヒーモフ。艦隊司令のコルニコフ中佐だ! アメリカ人よ、敵の忠告感謝する。貴艦隊もご存じだろうが今、我が国最後の秘密兵器を我々は護送せねばならない……だがそちらが警告をわざわざしてくれた以上、それを何としても今すぐ命がけで逃がさなくてはならなくなってしまったんだ。頼むが少しばかり我々に手を貸してくれ。これだけは成し遂げなくては、世界を滅ぼしかねない重要な責務だ』


泣きそうな声で震えを堪えながら必死な思いでコルニコフ中佐は頼み込んでいた。彼は別に世界に滅んでほしいわけではない。焼け野原が広がる世界が革命の正しい姿だとも思わなかっただけだ。


そして良からぬ者にソビエトの核を乱射されるのは更なる悪夢だったのだ。


『こちらJTF艦隊司令、スプルーアンス。了解した。我々も奴らと一戦交える予定だったから問題無い。速やかにこちらと合流・共闘されたし、コルニコフ司令』

『……了解した。貴官の好意に感謝する、スプルーアンス提督。大急ぎで向かわせてもらうさ。それまで今いる潜水艦隊は撃沈しないでくれ。もし沈められたら、搭載された核弾頭が吹き飛ぶか、奴らの物にされるだろう』

『了解だ』


通信を切り、スプルーアンスは傍らの副官に指示を出す。


「では上空のP-8A哨戒機は一旦敵潜水艦を撃沈しないで、監視する方向で行くという事でよろしいでしょうか?」

「ああ、そうなるな」

「了解です」

「……敵のジェラルド・R・フォード級空母とそれを中心とした艦隊から逃げつつ、あのソビエトの旧式艦隊とも合流して戦わされると……中々に厳しい退却戦になりそうです」

「やるしか無いだろう? どうせこっちにも来るさ、もうじきな……私の知る()()()ならもう我々を見つけているだろう」


JTF総司令部・君塚悠里執務室


「……本当か? 何かの間違い、もしくは嘘の報告ではないのだろうか……」

「本当です。たった今届きました。スプルーアンス提督から現在ソビエト艦隊へと監視の任務に就いていた際発生した、所属不明の『超大型空母艦隊』からの攻撃についての報告です」

「……ああ、本当か。これは本当だな。ああ……」


現在スプルーアンス提督はJTF艦隊を纏めて沖合に後退し、ソビエト残存艦隊と共に彼らを庇うよう艦隊防空機動を取り防空戦闘に努めていた。


敵空母から各方面から押し寄せる空襲の波状攻撃にイージスシステムのSM-6とF-35Bで耐え凌いでいたが、敵が数に勝る以上いつかは限界が来るだろう。そして敵の航空戦力はF/A-18E/FやF-35C、MiG-29K等の「固定翼機」が中心でありそれらを凌ぎ切り、逆に敵の護衛であるバーデン・ヴュルテンベルク級フリゲートを3隻沈めているのは流石の伝説的名将スプルーアンスの手腕である。しかし徐々に押され続けミサイルを損耗しているのは確かだった。


JTFのバージニア級潜水艦隊も合流しつつありまとまった戦力で遅滞戦闘がおそらくは出来るだろう。壊滅も早々は無いだろうし一先ず空軍機も援護に回れているので余程でもない限りは艦隊が海の藻屑になる事は無い。


「取り敢えず南西に退いているのは正解だ。そちらの海域には国内軍第1艦隊がいる。クズネツォフ提督がいざと成れば出張って来て防空の傘を提供してくれるさ。だが厄介な事に成った……。一体どんな大馬鹿野郎がいきなり核を狙って喧嘩を売って来たのか皆目見当が付かん」

「私もさっぱり……。ドイツ系装備も混ざって有りますから閣下のご存知な『高地の国』? でしたか、そちらを疑いましたが、違ったようでして……」

「俺が今回だけは黙っておいてやるから、二度とあの国を疑うなよ。万が一知れたら俺が後で向こうの女帝様から死ぬ程恨まれるからな」

「了解しました、サー」


速やかに海軍幕僚が退室すると息を潜めて机の下に隠れていたニケが素早く立ち上がり、君塚の耳元へ駆け寄り耳打ちした。


「多分、そいつの正体アタシ知ってるんだけど。聞きたい?」

「聞きたい」


即答する君塚。


「名前は『天道輝』。取り敢えずアンタと一緒の『軍隊創造使い』で……アンタの完全上位互換なの」

「ふーん……完全上位互換ね……どんな性能なんだ? 世界中の兵器を使えるとか? それとか将軍ガチャは中身が俺みたいなロシア限定じゃなくて、グローバル版だったりとか?」

「まさにそれ。ついでに『核兵器』も最初から使えるし、F-22AとかSu-57とかの第5世代機も使い放題だし、世界中の名将呼び放題で特殊部隊も作り放題」

「……チートか」

「うん。そういう事。今大会では3番人気程度だったわね……確か新倉は600番人気よ」

「おお……おう……。何というか、カスい低人気同士の泥沼の潰し合いに高みの見物してた本命候補様が横から美味しいところ漁師のように全て掻っ攫おうって話か。成る程な」

「そゆこと。多分ね? でも良い度胸してるじゃない悠里。ここで一発、その本命サマの心をバキッとへし折ってやりなさい!」


だがその絶望的な情報を聞いて尚更君塚の表情は更に曇る一方であり、それは彼、ひいては自分達へ状況があまり良くないことを告げるものでもあった。


「いやむしろ俺が心折られそうだが……。大量のアーレイバークとジェラルド・R・フォードなんてどっから持ってきやがった? 大体、俺達のISR網をどうやって掻い潜った……魔法か! 奴も東方世界へ逃げた転生者なら現地人にかけさせた魔法でステルスでも誤魔化せるのか……? 東方世界の資料がこちらには全く無いから何とも言えん……それに核兵器だと……? 俺は持っていないそれをか……! 核なき軍は惰弱……一体、一体どうしたら…今撃たれたらおしまいだ…」


すっかり弱々しく頭を抱えて呻いている君塚へすかさず「不味い」と悟ったニケは発破をかけさせる為に恨まれる覚悟で勢い良く彼の頬を平手打ちした。


パシィッ!!


「しっかりしてよ、悠里! アタシ達の運命はアンタのその頭脳と判断にかかってるんだから! こんな所で『負け確』とか考えないで、もっと何か泥臭く足掻いてよ!! アタシももっとシステムの裏情報とか転生者達の情報を提供するから……!!」

「ニケっ……!」

「アタシの生涯を狂わせた責任、まだ取れてないわよ悠里!! 絶対にこんな所で終わらせるなら!! アタシは君塚悠里を永遠に許さない!!! だからさっさと軍師の頭を回しなさい!!!! 君塚悠里は、もう『一人』じゃないんだから!!!!!」


君塚の軍服の胸ぐらをつかみ、激しく揺さぶりながら叫ぶニケ。


自分は担当官の地位を捨てさせられた。ヤドヴィガは君塚の野心により無理矢理王位に据えられた。ナディアは強引に君塚が母娘共々戦狼の国から奪い去り愛人のようにして側に置いている。龍の国の政権を壊して手に入れたつむぎや美羽、繭。徹底的に尊厳を踏み躙られ、女体化した実弟の透。それだけでは無い。

己が不幸から救った女性達は多数居る。そして今手元にこれから助けなくてはならないニケやアナスタシアが居たではないか!!


悲嘆するには、まだ早すぎたな……。


「……すまなかった、ニケ。お陰で少しだけ頭が冷えたよ。く、くくく、はははは! はぁ……少しだけだがな」


そう思うと君塚は為政者としての冷徹な理性を完全に取り戻した。

今止まるのは愚策だ。どうせ人はいつか死ぬのに何故こんな目の前の打破出来そうな試練に嘆く必要が有る?


もし嘆かなくてはならないなら死後に地獄で全力で嘆こう。今生きている間は不敵に笑ってしまおう。それが悪魔達の望まぬ結末を手繰り寄せる、最初の一手だ。


「……良かったわ。もう、心が折れて駄目かと思ったじゃないの」

「問題無い。正直に聞く。奴は俺のシステムとドクトリンの力…いや俺達平原の国だけで何とか出来る相手か?」

「勿論! 悠里はあんな奴よりもずっと頭が良くて強いわ!! あの側に女を沢山侍らせて夜に鼻の下伸ばしまくってるクソガキよりもよっぽど!!!」


目の前のニケは憤慨していてその天道と言う男に対して強烈な嫌悪感を抱いていた。


「そんなに酷いのか……。なら奴にも油断や隙があるはずだ。勝ち目が生まれてきたな。だが、どうせ高人気ならそういう『強いギフト』を軍隊創造以外にも沢山保持していると言う事なのか?」

「うん。すごくいやらしい胸糞悪いチート能力もりもりなのよね〜。てか取り敢えずあのクズの神堂と割と本質は変わんないかも」

「『女性支配』か……。あの外道スキルは確かにチートだな。アレが有れば何処かの国とか有能な魔法使いとかもアッサリと籠絡出来ちゃうし、拠点作りには最強だろ」


時に神堂が龍の国で行なった思い出すだけで悍ましい簒奪劇を想起し、君塚はつい腰へ下げているM17拳銃のグリップを強く握りかけていた。

もし庇護下にある国民の家庭や平穏な日々を壊したり、彼が守っている少女達や元カノとはいえ守るべき対象のエリカが危険に晒されるなら喜んでそいつの眉間を撃ちに行くだろう。


「ま、そういう事。それ以外も、完全に倫理観捨ててるギフトだし……あー思い出したら吐き気がしてきた……。誰よ、あんな気色悪い能力を提案した馬鹿は」

「無理はして欲しくないが、対策を練るために聞かなくてはならない事だろうから尋ねるぞ。奴はそれら以外どんなギフトを持つ?」


顔を青褪めていて、口を覆っているニケだったが今言わなくては君塚は致命的に不利になるかもしれないので一旦深呼吸をして息を整えてから話す。


「ふぅ……『胎蔵電池』と『性別反転』。そして『担当官交渉』よ」

「……最後のは恐らく文字通りだから何となく察する事は出来る、エリスと対等な交渉権か何かだろうな。胎蔵電池ってのは恐らく……性別反転もだが……まさか」

「性別反転は文字通り対象の性別をしっかり反転させるのよ。男から女とか、女から男みたいに。それと……『胎蔵電池』は、性行為を行なった相手に強制的に胎児を孕ませて『自身の残機』を増やし、さらに相手の異能や才能を強制的に共有して自身のギフトの出力を永続的に強化するのよ。女性支配と最高にシナジー有る、最悪のギフトね……。しかも、その胎児ってのはね悠里……」


ニケの噛み締める唇からは悍ましい内容の言葉が吐き出された。


「名状しがたい、ただの魔力の『肉塊』よ……! あんな物を、あんなおぞましい物を、生命の始まりである胎児と呼ぶなら、アタシは今すぐ脳みそを洗い流したいっ!」

「……!! なんて悪趣味な……!!!」


君塚は新倉の『革命の炎これより燃ゆる』以上の命への最大の冒涜に静かな、しかし確かな激しい殺意を瞳に燃やした。

悪夢の正体



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