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【祝10000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第9章

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幕間─厄介な奴らの乱入

滅びの前夜

ソビエト社会主義共和国の沿岸部に展開する最後のソビエト通常艦隊戦力、『ポチョムキン艦隊』。


それはアメリカ軍式JTFのイージスシステムやF-35Bによる不可視の猛攻から沈没や大破を奇跡的に免れた通常艦隊戦力を何とか寄せ集めて作り上げられた、事実上の『最後の主力艦隊』である。


スヴェルドロフ級巡洋艦や旧式のクリヴァク3型国境警備艦等を主力としたこの部隊は定期的に外洋へ繰り出して敵艦隊(JTF)戦力への牽制を行いながらも、旗艦であるキーロフ級ミサイル巡洋艦『アドミラル・ナヒーモフ』は堅牢なクロンシュタット港から出ずに沈黙を保っていた。


静謐せいひつは万金なり」。


圧倒的な火力を誇る巨大なミサイル巡洋艦が「港に健在である」という事実を強いて敵海洋戦力そのものに迂闊な沿岸への接近をさせない事に終止していたのだ。


幸いな事にクロンシュタットではS-300Vなどの対空ミサイル部隊が辛うじて少数生き残ってる為、JTFの航空部隊が空から何か仕掛けてきても艦隊の防空戦力と共に迎撃して追い払う事は何度か出来ている。


他に続くクリヴァク3型の『ケードロフ』や対潜特化のウダロイ級駆逐艦『アドミラル・ハルラモフ』が係留され、この海域におけるソビエトの最後の存在感を放っている。


陸上では海軍歩兵部隊が僅かながら生存していたので基地司令が呼び寄せて彼らを駐屯させて港湾の警備にあたらせている。

AK-74とRPG-7を装備しただけの軽歩兵部隊だが元々配備されていた警備兵を補強する貴重な戦力であり、同時にソビエト海軍歩兵『最後の陸上兵力』でもあったのだ。


そして、この残存艦隊の臨時司令官であるパヴェル・コルニコフ中佐は自身の階級の低さに歯痒さを感じながらもソビエトの国家崩壊を自らの一挙手一投足が握っている事もよく理解しており、もしここでJTFを野放しにして海を封鎖されるならこの国は完全に終わるだろうとも理解していた。


「……飲め、水兵諸君」


コルニコフ中佐は安物のウォッカを全士官、そして下士官兵士を集めて小さなショットグラスへと注ぎ連日の空襲と沈没の恐怖で張り詰めすぎていた地獄の日々を一瞬だけでも忘れさせようとしている。

彼は今回の航海が自分達の『最後の航海』になる予感がしていた。これから彼らはソビエト海軍の最後の切り札――核報復用の原子力潜水艦隊(タイフーン型など)へ護送船団を組み、沖合での洋上補給任務を強行実施するのだ。


沈黙していたスタフカ(ソ連軍最高司令部)から突如として秘密指令が届き、「可及的速やかに指定座標にて潜水艦隊への物資補給を行なうように」と絶対の指示が出たのだ。


既に壊滅状態のサブリン率いる潜水艦隊にまだそれを受け取るだけの体力が残されているとは、予想外な展開に驚きつつもそれが何を意味するかはコルニコフ中佐もよく知っていた。


ヤゾフ元帥率いるソビエト指導部は首都陥落の前に平原への『核報復』へ前向きな結論、自暴自棄のペリメーター作戦を出したのだ。


「……俺達、とうとうここが年貢の納め時になるなんてな……」

「まあ、今まであんな事をして俺達が都合良く名誉ある戦死なんて出来るわけがねえんだわ」

「悔しいが、これが戦争か。因果応報ってやつだ」

「相手の強い弱い以前にこれが確実な死地だと思って行けば怖くねぇな! がははっ」

「……負けたのか、俺達は。また自分達の国が消えゆく様を見届けなくてはならないのか」


各艦の乗組員は誰一人として指導部への恨み言さえ言えない。自分達の犯したその『業』と理由は狂気から覚めた今、心で痛いほど理解していた。


かつては貴族の邸宅に押し入り物品を略奪し、婦女へ暴行を働いて自分達の妻にしたり、挙句の果てに何の罪もない赤子や市民を「反革命的だ」として続々と手に掛けた狂気の侵略者だったのだから。


それ故にショットグラスの中へ注がれた火の酒を一気に飲み干し、最後の航海に旅立つ準備を彼らなりに済ませて港のロープを解いて出航した。

罪人達は十字架を背負い、処刑されるゴルゴタの丘へと登らん。


「出航せよ! これは我らの贖罪の航海になるぞ!!」


艦隊は次々と帰れぬ見込みの高い夜の海へ出航し、根こそぎ掻き集めた補給物資を満載するボリス・チリキン級補給艦やプロジェクト1833型総合補給艦を伴い港を立つ。その果てに待ち受けるであろう『JTFからのミサイルの雨』という凄惨なる破滅さえ見越した上の狂信と贖罪の航海へと旅立った。


陸では、海軍歩兵が黙って敬礼しながら自分達へ保護を申し出たコルニコフ中佐を静かに見送っていて、彼らもまたこの航海で艦隊が戻らなかったらこの港湾の施設を全て爆破し陸路でパルチザンとして散ることに成っている。

薄暮の中、破滅の船団はソビエトの最後の尊厳を守る為に世界を道連れにする悪行を為さんと進撃する。


「……虚しいな。この世界の終わり(核の冬)を我らが奏でる事になるとは。同志書記長は不在だがヤゾフ元帥か? この様な核補給(狂った事)を命じられたのは」

「だろうな。だが全くこの書類にはそのようなサインが無いし、今までの経緯から考えて少し怪しいような……大体何故今更? 本来は書記長の帰還、または正式な副官から発されるべき命令だぞ」

「だがやるしか無いさ。やれと言われたらやるのがロシアの水兵だろう……何も私だってやりたいとは思わなかったしまさか……第一、通信網は寸断されている。スタフカへどうやって指示の真偽を確認しに行くんだ? それも最高機密の秘密指令を?」

「それもそうか。暗号の解読なら秘密じゃなくなるからな。同乗してる政治将校もゲンナリして遺書を書いていたし、今なら愚痴を好き放題言っていいぞ?」

「もっと西側の処女を抱きたかったし、もっと金持ちになりたかった」

「俺もだ同志。もう少しだけ強い軍隊と強いソビエトの夢に浸りたかった」


そして悠々とポチョムキン艦隊はJTFのソナー網とレーダー網の隙間を掻い潜り港を脱出した後、針路を北西に取り潜水艦隊が潜航して待機しているはずの洋上座標へと向かった。


この様な非常事態に際して「必ず潜水艦隊が浮上して待機しているであろう地点」が記された海図が入っているアタッシュケースを開放し、その指示通りに艦隊は進まされる。


全ては規定通りに。既定路線で。



だが、その少し後方から完全なステルス状態で監視している艦隊があった。アーレイバーク級駆逐艦2隻とレーダー反射断面積が漁船並みのズムウォルト級駆逐艦1隻、そしてアメリカ級強襲揚陸艦で構成されたJTFの追跡部隊だ。

アーレイバーク級同士がデータリンクで交信を開始した。


「こちら『ジョン・ポール・ジョーンズ』。目標を追跡しているが奴らは一体何処に行くつもりだ? 港から出るのは自殺行為だぞ」

「こちら『サム・ナン』。それを突き止めるのが我々の仕事だ。もしかしたら奴らはこちらの包囲網を脱出して何処かの別の秘密拠点か、潜水艦への合流地点に行くつもりかもしれない」

「了解。いつでも攻撃できるようVLSのスタンバイを維持する」


両艦の艦長はゆっくりと着実に目標に近付き後方からいつでもハープーンやトマホーク、あるいはSM-6を撃てるようにじわじわと退路を狭める。


「……でも、だが……もし奴らが上の指示で動いていてそれに乗せられてるなら我々の仕事は簡単だが。もし全く別の『誰か』が作った罠の座標に誘い出されていて、それに我々も嵌ったなら……最悪だぞこりゃ……」

「嘆くな副長。もう沖に出ちまった以上、どうにもならん。レーダーの監視を怠るな」

「了解であります」


しかし、沖合に向かって暫くして想定外な事態が両陣営(ソビエトとJTF)の艦隊を襲った。

ポチョムキン艦隊が合流地点に近付くと不審な巨大な動きをする艦の反応がレーダーに捉えられた。


「司令! 所属不明艦が我々の前方に展開しています。どうされますか?」

「構うな。どうせ低地の国の迷い込んだ漁船か避難する貨客船が通っているかどちらかだ。わざわざこんな夜に無駄打ちしてやる義理はない。我々の目標は潜水艦隊への補給だ」

「はぁ……。しかし、あまりにも反応が巨大すぎます」

「北からそれなりの数が接近してきているとは言え、我が潜水艦隊がこれを無視しているとは思えん。恐らく民間船舶だろうな」



同じ頃のJTF所属艦隊もSPY-1Dレーダーでその『巨大な所属不明艦隊』の存在について正確に把握しており、迎撃任務の体制が急がれた。


「とにかく早くF-35Bを発艦させられるようにしろ! 爆弾? それよりAMRAAM空対空ミサイルだ! 対空戦闘だよ馬鹿野郎!!」

「クソが! 一体何処の大馬鹿野郎がいきなり俺達の獲物に手を掛けようとしてるんだ!? レーダーの反応数が異常だぞ!」

「甲板を片付けてくれ! 発艦も出来んぞ!!」


不意を突かれたアメリカ級強襲揚陸艦『アメリカ』では慌ただしい雰囲気に包まれ、緊急要撃任務が発生して混乱と怒号が飛び交う修羅場に成っていた。


「スプルーアンス提督! 今艦載機の発艦を急いでおりますがこのまま発艦させてよろしいでしょうか?」

「ああ、このまま出せ。先ずは先手必勝だ。もし奴らが君塚閣下や我々に何か企んでいるなら尚更だ。空からの眼で正体を確認しろ」

「了解しました」

「それと深海で警戒しているバージニア級潜水艦から何か連絡は?」

「……それに関しては信じ難い報告が来ています。『アイオワ』より、暗号通信で『貴殿の艦隊は何処なりや?(そちらの海域に味方と同じスクリュー音の艦隊がいるが?)』と」

「! 急げ。母港(ポート・ゼネラル)に、いや総司令部に直通で連絡を!! 我が軍の全ての艦艇の所在と人員の確認を今すぐするんだ!!」

「はっ! 急ぎ暗号無線にて通達し全ての人員と資材の確認をさせます!」


スプルーアンス提督の脳裏には悲鳴のように甲高く響くアラームが鳴り続けていた。


(なんてことだ。我が艦隊と全く同じかそれ以上の装備を持つ『アメリカ艦隊』が近づいているのだ!! 君塚閣下の軍ではない、第三の……いや、『第四の転生者』か!!)


「……万が一に備えて空軍にも連絡を。空からの増援の可能性が捨てきれんぞ、このライトニング空母だけでは対処出来ないかもな」

「はっ!」


最悪の事態以上の悪夢に備えて空軍にもスクランブルの連絡を入れる。

我らだけで対処出来るかは恐らく今から行うF-35Bの航空機偵察にかかっている。もし自軍よりも戦力が圧倒的に多いならプライドを捨ててでも逃げなくてはならないのだ。


もしそれが相手から許されるならだが……。


警戒のため夜の空へ哨戒に上げられたライトニング(F-35B)の部隊は洋上にて対水上捜索モードにレーダーを切り替えて捜索を開始した。


それ故に「何かは引っ掛かる」と考えていたし何処かには『アイオワ』が探知したアメリカ級、もしくはそれに類似する艦艇が浮かんでいるはずである。


そして甲板から飛び立ち2時間程度飛行し漸くその『艦隊』を光学カメラとレーダーで確認した。

そしてJTFにとっての『最悪の悪夢』が現実になる。


《ああ、そんな……神様。見たくない現実だ。誰か夢だと言ってくれ》

《こ、こちらヴァルチャー2からHQ……空母だ……! 強力な空母打撃群が、アーレイバーク級にアメリカ級、それにあれはニミッツ級かジェラルド・R・フォード級に類する超大型原子力空母かと思われる、大規模な艦隊が居る! しかも複数隻の空母だ!! 後いずも型護衛艦と思しき艦やアドミラル・クズネツォフ級、ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク級フリゲートまで混在して居る!!!》

《何だと!? 今すぐそこを離れろ! 離脱するんだ!! そんな所にぼさっと居たら殺られるだけだぞ!!!》

《了解! っ、クソッ、ロックオンのレーダー照射を受けた!! ヴァルチャー1、逃げるぞ!!》

《わかっている、ヴァルチャー隊は帰投する!! ミサイルはガッツリ撃たれているが何とか帰り着いて見せるさ!!!》


2機のF-35Bは一気にダイブして回避機動を取りながら母艦『アメリカ』へと帰還しようと足掻いていた。時にはチャフやフレアを散布して海面を舐めるように逃げ回る。彼らの目から見れば自分たちは巨大な蜘蛛の巣に引っかかった『コバエ』に過ぎなかった。


一方、その頃。

漆黒の海を進む全長330メートルを超える超巨大空母『ジェラルド・R・フォード』の広大な飛行甲板には純白色の軍服を身に纏った一人の青年が立っている。

その容姿は日本人である事は分かるが夜風に吹かれながらも堂々とした佇まいはただ者ではない強者の風格が有る。


「……あれが、あの『君塚悠里』の率いる海軍(JTF)か。たったあれだけの規模で無敵の海軍を名乗るとは……。あれじゃまるで弱って群れているだけの野良犬じゃないか。エリスの言う通り、情けない奴め」


醜いアヒルを見るような侮蔑の眼差しを向けて、ソビエト、そして君塚の居る平原の国の有る方角を冷たく睨みつける。


天道輝(てんどうあきら)総統閣下。お時間です」


彼に寄り添い付き添って居た黒髪が魅力的で出る所は出て絞まる所は絞まっている容姿の女性副官が作戦開始の『Xアワー』を告げた。それは新倉の核を奪うための罠の作戦であり、事実上のソビエト残存艦隊と君塚のJTFに対する『死刑宣告』であった。


「わかったよ『信濃』。俺達の勝利の日が今から始まると思うとワクワクが止まらなくってさ」

「ですがご主人様。我々の真の目標は今は新倉と君塚を共倒れさせ最後の鷲の国皇統のアナスタシア殿下を傀儡として擁立し、西方世界への強固な拠点確保の為の軍事行動でございます。どちらも達成出来なくては私達は骨折り損のくたびれ儲けになりますので必ずや二人ともここで仕留めましょう」

「ああ、当然だろ! 取り敢えず、こちらのハルゼー提督の準備は?」

「既にF-35CおよびF/A-18E/Fの艦載機を発艦させて、ソビエトとJTF両方の艦隊を捕捉しております。沈めるか? と仰せでしたが」

「沈めろ。慈悲も無く、許容もなくな」

「承知しました、ご主人様」


踵を返した彼女、巨大空母の化身のごとき美女『信濃』が立ち去ると天道は指鉄砲を作り、遥か遠くの海にいる新倉の艦隊と君塚の艦隊へ向けて撃つジェスチャーをした。


「バンッ。さよなら、敗北者ども」


――『最強』にして『全てを併せ持つチート』。

ファンタジー世界で最も夢想的な無限の暴力と悪意が迫る。

迫りくる津波


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