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【祝10000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第9章

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一方で進む話

そして戦う前に決着がつく

鷲の国の広大な森の奥深くに築かれた不可視の前線基地『キャンプ・フォード』。


君塚は煌々と照らされた司令部の中で、自身の正気を最初疑っていたが目前の大量のディスプレイと情報端末から叩きつけられる報告書のデータによって残酷にもそれが『物理的な現実』だと思い知らされていた。


事前にこのJTFによる大規模かつ一方的な奇襲攻勢が発生して、少なくとも新倉結菜が率いていたソビエト赤軍の「攻勢能力」はほぼ完全に壊滅しており反撃能力も喪失。後は最後の一押しで首を刎ねるだけでこの腐った狂信の納屋は音を立てて崩壊するのだということを最新の戦果報告書のPDFから知らされた。


それだけでなくキーロフ級ミサイル巡洋艦やアドミラル・クズネツォフ級空母、キエフ級空母といった敵の強力な水上艦隊も度重なるF-35Bの空襲やアーレイバーク級駆逐艦の対艦ミサイル、バージニア級原潜の雷撃により潰走。ソビエト海軍の水上戦力はもう外洋での目撃記録や活動を探知したと言う記録も無いので、彼らの海軍は事実上壊滅したか母港で行動不能に陥ってしまったのは確実に言えるだろう。


空軍機も見かけないのは既にソビエト空軍が完全に壊滅した後だからだ。基地の滑走路には無残に引き裂かれたスクラップの山が築かれ、巨大な燃料タンクは煌めく夜空を燃やし尽くすように炎上しソビエトの軍事インフラは完全な機能不全を起こしているのが上空のトライトンの映像からも明白だった。


新倉は自身の誇るこの無敵のソビエト軍が一晩で文字通り壊滅したという事実はまだ知らない。彼女はその事を通信システムが破壊されたせいで全く知る由もないのだからある意味で哀れだった。


だがこの狂気に満ちた『共産革命ごっこ』の着陸地点として、そして数え切れない無辜の民を虐殺してきた彼女にとって相応しい自業自得の結末であったのは相違ない。


目の前の司令官たち――オマール・ブラッドレー大将らを一瞥し、戦果報告書を読み終えて君塚はついため息をついた後口を開いた。


「成る程。つまりは我々はもうやるべき事は全て終えていて、後は深海に隠れた敵の潜水艦隊と森の奥の移動式ミサイル砲兵を探り当てるだけであると」

「その通りです、総司令官」

「哀しいくらいに奴らはもう戦意を喪失したと言うことなら良いんだが……多分、そうでは無いな。奴らはまだ狂信故に戦いを諦めていないだろう。でなければ局地的なこんな小競り合いも不要だからな」

「それと、レンジャー連隊やデルタフォースの特殊部隊についてですがいかがしましょうか? もっと敵の後方に浸透して攻撃をさせましょうか、それとも歩兵部隊と共に防衛に張り付かせましょうか?」

「もっと投入しろ。敵の士官を攫ったり暗殺して指揮系統を麻痺させ、補給の車列をスポットさせて空爆の案内をし、通信局を完全に壊してやれ。そうすればいずれ合流する我が平原の国の『本隊(国内軍)』が動きやすくなる」

「かしこまりました」


まだソビエト軍部隊の中には泥濘の塹壕から打って出て部分的な反攻作戦を実施する部隊も居て、時には残存する司令官の指示なのか僅かながら旧式の航空機も伴う反撃も確認されていた。


JTFの海軍艦隊も彼らの秘密軍港である『ポート・ゼネラル』に近付いて来る小型艦艇――ナヌチュカ型コルベットやマトカ型ミサイル艇が決死の覚悟で果敢に攻めてきていた。が、しかしこれについてはフリーダム級沿海域戦闘艦が高速で迎撃して主力艦隊が対艦ミサイルの発射等により無駄な損耗を受けない様に専念している。


ソビエト海軍の艦長、艇長にも文字通りの特攻のような無謀な攻撃を行う者がまだ残っているようであるが、しかし彼らの捨て身の攻撃も主力艦隊の意識を牽制するという任だけは達成している。


「スプルーアンス提督。どうやら、奴らはこの洋上の小競り合いで手一杯のようだな」

「はい。その通りのようでした。追撃をされますか、閣下? 既に海軍機(F-35B)は出撃準備を済ませ、沖合でうろつく敵の残存艦隊を全て沈める用意が有ります」

「よし。なら沈めて新しい魚の寝床にしてやれ。何ならやつらの軍港を丸ごと巨大な漁礁にしてやるのも許す。今なら絶対的指導者である新倉は此方で身柄を抑えた以上奴らは大規模には動けないし、やつらの残存艦隊は佐官クラスが司令官らしいから今なら圧倒出来るだろうな。ついでだからもう一度徹底的に叩き潰して轢き潰して砕き散らせてやれ。この世界に転生してきた事を後悔する程にな」

「了解しました、総司令官」


スプルーアンス提督は君塚の冷徹で強力な意志を感じる命令に即座に了承した旨を述べ、次の航空打撃作戦について検討を開始した。

海軍は制海権を掌握したまま優位に進められるだろうが、まだドックに逃げ込んだスラヴァ級や港湾内の大型艦艇からの対艦ミサイルへの備えは忘れない。


「次に空軍だが、どうやらこちらはあまり言うべき事はないようだ。まず航空優勢は完全に確保出来ていて、敵は空に上がることさえ出来ていない。対空ミサイル部隊もMANPADS以外はそこまで活発では無いし、低空でのヘリの作戦行動には常に注意する様にしろ。空軍戦力はこれからは無駄な損耗を避け温存させながら平原の国本隊との合流を目指すんだ」

「つまりこれからは面制圧による撃滅ではなく、持久戦に移行しろと言う事ですね総司令官閣下」

「その通りだ。高価なドローン部隊も極力惜しめ。資源は潤沢とはいえまだ有限だし、いつ『あの狂信者ども』との戦争が完全に終えられるか明確な目処は立っていないんだからな」

「かしこまりました。ですが、敵軍の士気を砕くための重要施設への戦術爆撃はある程度は継続いたします。よろしいですね?」

「構わない。だが無駄撃ちはやめてくれよ」

「ご安心を。常に宇宙にはGPS用の衛星が展開しており、誘導も無駄なく行えます」

「……アレは確かに打ち上げられているしいつでも使えるように成っている。だが気を付けろ、奴らはそう簡単にくたばってくれる優しい連中じゃない。何か『非科学的な理不尽』で対空手段を講じてくる可能性もある」

「心得ております」

「後、C-17(輸送機)を1機飛ばしてくれ。行き先は平原の国のワスクァ空軍基地だ。あそこなら直ぐにズラトポルの部下達へ俺の生存証明と作戦の書類が真っ直ぐ届くし、俺が心から信用出来る部隊(国内軍)が駐屯している」


空軍戦力は確かに制空戦闘は完全に勝利しており、空にはソビエトの戦闘機は一切上がってきていない。なので、飛来するA-10CやAC-130Jによる一方的に行う空爆や地上部隊への火力支援を阻止しようとも、ソ連軍の防空コンプレックスも既に崩壊して、精々時々歩兵のMANPADSが飛んでくるか、基地内の対空機関砲(ZSU-23-4)に狙われる程度でそれも大した影響を戦況へ与えられていなかった。


「海兵隊は……まぁ、本国の国内軍と連絡が取れ次第だな。水陸両用作戦に動くとして、戦力としては申し分ないが、一方で奴らも沿岸部は防備(地雷原や沿岸砲)を固めている。強攻策は無用な出血を伴う自滅行為で、海から直接クラスノグラードを落とすのは不可能だろう。陸軍と協調は見込めん」

「海兵隊は今のまま沿岸部での陽動や戦線の補助要員でよろしいでしょうか?」

「そうだ。ソビエトのバカどもが万が一陸から大軍で突進してくるのは避けたいがな……海兵隊は戦略的予備だ。温存しろ」

「中々につまらないですな。我々海兵隊は『一番槍』が基本でしょうに」

「スミス将軍、本当の戦争はこれからだ。それまで本格的な正面戦闘は控えるように……だがそれはすぐ先だから心配するな。もうじきに精神的にも物理的にも耐えられなくなったソビエトから自暴自棄になって仕掛けられて開戦だろうからな」

「であれば、その時はどうかお願いいたしますよ閣下。我らの名誉の為にも」



一方で新倉は野外の大型コンテナの中に押し込められていて、不愉快そうな表情を浮かべながら警備の海兵隊員に雑に蹴り飛ばされた。


「んがっ!」

「おい、ここが貴様の独房だ。精々ここで終戦まで大人しく震えてるんだな」

「くっ……姑息な資本主義勢力め……! 覚えていろ。我ら赤軍兵士達が貴様らを全員血祭りに上げ、世界中にソビエトの赤い旗が翻る大陸が――」

「盛り上がり中すまないが、それは絶対に無いな。お前の自慢の軍隊は既に壊滅した」

「総司令官閣下!」

「君塚悠里……!!」


君塚は新倉専用のコンテナに入って彼女と直接話をするためにここに来たが、新倉は彼を狂気に満ちた厳しく鋭い眼光で睨みつける。


「新倉。こんな窓もない真っ暗な空間で大変申し訳無いと思っている。今、この基地含めてJTFには捕虜収容所という気の利いた施設は無い。だから捕らえたソビエト兵たちには臨時でテント暮らしやコンテナの中で雨風を凌いでもらっているよ……報告によれば、食事の配給の際に『女を寄越せ』と看守に叫んでいるそうだがこれが気高き『革命の戦士』に相応しい態度なのかね」

「捕虜虐待とは流石資本主義の犬。非人道的な処遇を行なって相手を辱めるとはな! こうして冷たいコンテナの中に後ろ手に縛り上げて食事も満足に食べさせず飢えで苦しませ――」

「ごちゃごちゃとうるさいぞ、『テロリスト(なら)』。お前いつから、一丁前に『正規軍の親玉』気取りしてるんだ? お前の率いるソビエト社会主義共和国は、いつ平原の国と正式な国交を結んだんだ? 聞かせてくれよ。いつお前達が俺達相手に国交を結ぶ協定や条約を結んだ? 大使は? 何処に居る。誰がこっちに派遣され、そちらに誰が行った? なぁ……聞かせろ、新倉」

「……っ! 貴様……っ!! 我らがただの、野盗の軍閥だとでも言うのか!」

「そうだ。そうじゃなきゃ何だよ、ただの人殺しの群れが。真の解放でもなく正当な反逆でもないこの軍閥は、一体何を『革命』したんだ?」


君塚の冷徹で厳しい正論の言葉に回答を窮する新倉ではあったがここで君塚はついでに彼女の精神を完全にへし折る追い詰めるひと言を足した。


「お前の兵隊さん達はお前が誘拐作戦で王都を留守にしている間に今このJTFに徹底的に空爆されて潰されてしまったし、もうお前を助けに来れるようなまともな戦力を保持している部隊はもうソビエトには無いようだぞ」

「……は? 今なんと?」

「革命の砲声以外何も聞こえないような都合の良さだ、耳が悪いようだが一度しか言わん。お前の軍隊は終わった。だからこれ以上の無駄な血を流す前に、さっさと降伏しろ新倉。生き残った部下は悪いようにはしないさ。軍事法廷にはかけるがな」

「……なら地獄まで、奴らを伴わさせよう! 貴様の軍門に降るくらいならば、喜んで自死して『死の手(ペリメーター)』を作動させてやる!!」

「……そうか」


狂気に浮かされて反論し、まだ核を盾に抗戦する新倉へと君塚は困惑と侮蔑の入り混じった表情を浮かべた。未だに絶望的な状況が理解出来ず、打破しうると信じる自称革命家に君塚だけでなく彼女を連行していた海兵隊の兵士も哀れみさえ感じていた。


「所でその核の『死の手』だが……意味が無いようなもんだぞ。撃つ前に俺の空軍が空爆して地下サイロごと潰す。お前の自慢の空軍は地べたで全部消し飛んだし対空ミサイル部隊もSEADで完全に沈黙した。上空からは狩り放題だ」

「ああ、だろうな。だが、深海に潜む潜水艦部隊が居る! 私はまだ海からの核報復の準備が存在していて――」

「撃てば……いや、深海でハッチを少しでも動かせばそれらは撃つ前に消えるのにか? 少しでもスクリューを動かせばお前たちの領海内に既に展開している無数のソノブイが音を拾って上空のP-8A対潜哨戒機か、海中のバージニア級、もしくはアーレイバーク級駆逐艦のアスロックが対潜ミサイルか魚雷を撃つだろう。それに港が破壊された以上、いつまでも潜水出来るほど物資は無いはずだ。浮上した瞬間が彼らの最期だ」

「……っ!」

「だから、もうおしまいだ。新倉菜月の血塗られた革命譚はここで終わり。終着駅がこの暗いコンテナさ……。わかったか? このままここで世界の行く末を指をくわえて見ていろ」


こうして、ソビエト社会主義共和国の最高指導者は完全に拘束・無力化され、戦争の盤面は、君塚率いる平原の国の圧倒的優位のまま進んでいく。



そして平原の国、王都近郊のワスクァ空軍基地。

着陸した見慣れぬ国籍マークを付けた巨大なC-17 グローブマスターIIIが直ちに国内軍の装甲車と陸上部隊に包囲され、中から何が出てくるのかを女王たるヤドヴィガと総司教の君塚透が厳しい表情で立ち会っていた。


「君塚様に関する事であの方達はいらっしゃったようですが一体……。もし君塚様が人質として捕らえられているなら、私は……」

「兄さんが率いてる国内軍とは全く異なる西側の部隊らしいし……一体彼奴等は何者……? また別の転生者?」


後部の巨大なカーゴハッチがゆっくりと開かれ、一斉にAK-12などの銃火器を国内軍兵士達が構えて何が出てくるか警戒して身構える中機内から大量の物資の入ったパレットと数名の米軍装備の兵士が出てきた。


「降ろすぞ! 少し退いてくれ!! 後、銃を下ろしてくれ! おちおち運搬作業も出来ん!!」

「下がれ、全員下がるんだ!!」


「……君塚様、ではない。何かの支援物資の箱……」

「荷物のようだけど兄さん本人じゃなかったならあれは……」

「透総司教取り敢えず責任者のところへ行きましょう。もしかしたら、君塚様の足取りや安否などが分かるかもしれませんから」

「かしこまりました、殿下」


早速二人は急ぎ輸送機へと向かい指揮を執っている米軍の士官を捕まえて話を聞いた。


「失礼します」

「ん? どうしたんだ、そこのお嬢さん……いやまて……これは失礼しました、ヤドヴィガ殿下。いかがされましたか? それとお隣にいらっしゃるのは我が総司令官閣下の、えー、えーと……その」

「言いにくいなら言わなくても良いよ……。全く、確かに私を説明したら凄く面倒なんだけどさ……兄さんは、私についてどういう紹介してるのかな?」


ため息をついた透であるが、もしそれでアメリカ人的に理解しにくいカオスな経歴であるので仕方ないと思いつつ、兄の杜撰な対応に内心呆れていた。だが同時に、彼らの態度から兄の無事を知り、深く安堵もしている。


「総司令官閣下でしたら、現在鷲の国にてアナスタシア殿下をお支えして『帝政復古』の準備を行なっておりまして……」

「……」


ピキッ、と。


「……あの方は、自分が誰の臣下であり何処の国の摂政かお忘れなのでしょうか?」


ヤドヴィガの美しい顔にドス黒い怒りが沸々と湧き出し、瞳から光が完全に失われていく。流石に兄への異常な想いを抱くヤンデレ気味の透でも一瞬、背筋が凍りついて喉が引きつるような悲鳴が出た。


「ひっ、で、殿下。顔が少し……いえ、かなり危ない様子ですが。お水をお持ちしましょうか?」

「結構です! 全く、どうしていつもこう私の大切な『家族』である自覚の薄い方なのか……! やはり、本当に私をあの方の身体へ物理的に縛り付けて貰う方がいいのでしょうか?」

「……そ、それで兄さんは? 今どうしてるんですか。ご覧の通り、平原の国では、沢山の人が兄の帰りを待っています」

「それについては、先程お渡しした箱の中に有る『作戦書類』に記載が有り、もう間もなく本国ここへ向けて出立するものかと思います」


JTFの兵士は、目の前の女王のドロドロとした怨念に気付かず、事も無げに言うと腕時計を見た。そしてヤドヴィガへと向き直り、完璧な敬礼をする。


「それでは、小官はこれにて失礼します。きっと君塚総司令官はもうじきお戻りになられますし、今回のソビエトとの戦役ももうそろそろ完全にケリがつくでしょう。吉報をお待ちください」

「分かりました。……では基地にお戻りに成られたら君塚様へ必ずお伝えくださいませ。『貴方が居ない間、貴方を知る女は皆涙で枕を濡らしておりました。覚悟しておいてください』と」

「……か、かしこまりました、殿下」


兵士は背筋に冷たいものを感じながら、そそくさと輸送機へと戻っていった。

君塚悠里が帰還した時、彼を待っているのは『勝利の歓喜』かそれとも『女たちの修羅場』か。

どちらにせよ彼にとって平穏な日々はまだ少し先のようである。

そして外堀も内堀も埋まった


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