第二話
『時よ止まれ、おまえは美しい』——ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ——
横浜の老舗楽器店に興味深いフレンチボウがあるらしい、とカイン・ロウェルが聞いたのは、『FALKENBERG GALA 2026 JAPAN TOUR』の終盤、東京公演を一週間後に控えたころのことである。ぺカットのオリジナルということだが、癖が強く、奏者を選ぶ弓だという。
五月十五日、朝から写真撮影や雑誌取材などの細々とした仕事をこなし、カイン・ロウェルはついに自由の身となった。午後のみ、束の間のオフである。部屋に戻ってシャワーを浴び、遅めの昼食をとって、食後の紅茶を飲みながら、さてどう過ごそうかと考えたとき、件のボウの話を思い出した。時計の針は、午後三時前を指している。
白いTシャツに洗いざらしの黒を羽織り、キャップを目深にかぶれば、多少目立ちこそするものの、いらぬ騒ぎになることはないだろう。着替えたカインは、コンシェルジュにタクシーを寄越してもらい、そのまま『松田楽器店』まで向かうことにした。
東京は、建物が途切れない。いや、ベルリンも大都市だが――と、カインはぼんやりと思いながら、窓の外を眺めた。タクシーの運転手は『松田楽器店』を知らず、当然のことながら英語も話せなかったが、コンシェルジュが事前に運転手に行き先を伝えてくれている。日本語など話せそうにもない、上背のある金髪の外国人を乗せて少々気まずいのか、運転手は小さな音でラジオを流し、運転に集中しているふうだった。車は、所々で渋滞に引っかかりながら、高速道路を走っていく。羽田空港から飛び立つ飛行機が、眩しかった。
『松田楽器店』は、外国人居留地として発展した横浜・山手で、明治期に創業した老舗なのだという。そういえば、昨日まで滞在していた神戸も、同じような歴史を持つ土地であった。高速道路を下りると、まもなく車の速度が落ち、坂道が目立つようになってくる。道路の両脇に植えられた街路樹は、イギリスともドイツとも違う緑の濃さだが、点在する古い洋館を見ていると、何となく懐かしいような気もする。タクシーはそれからすぐに、一軒の古い洋館の前に停車した。
(……もう四時過ぎか)
意外と時間がかかるものだな、とカインは思った。
まるで楽器店とは思えない外観だった。古めかしくはあるが、乾いた清潔感があり、丁寧に手入れされているのが分かる、イギリス人好みの建物である。窓から窺える店内は薄暗いが、重たげな木の扉にはOPENの札が下げられている。
扉を押し開けると、そこはどうやらメインルームのようだった。売り物なのだかそうでないのだか判然としない楽譜の数々が、木製の楽譜棚にぎっしり詰められている。そして、おそらく初心者、中級者向けの弦楽器が壁面のラックに掛けられ、ガラス戸のキャビネットには弦や松脂、肩当てなどが並べてあるようだ。メインルーム奥のレジに視線を移したところで、ちょうどその裏の階段から、一人の男が降りてきた。
「あ、いらっしゃい」
五十代ほどと思われる白髪混じりのその男は、そこでカインが外国人であることに気づき、
『何かお探し?』
流暢な英語でそう訊いた。こういった老舗楽器店では、英語やイタリア語が通じることも少なくない。土地柄もあるのだろう。
『突然申し訳ありません。こちらにぺカットがあると聞いて』
キャップを脱ぎ、軽く頭を下げた。
『ああ、ぺカット。ありますよ。あれを?』
『ええ、一度試してみたくて』
視線が合う。そこで店主の表情がわずかに変わったから、おそらくカインロウェルであると気づいたのだろうが、彼は何も言わなかった。
『出してきましょう。しばらくお待ちいただけますか』
『もちろんです』
待っている間に楽譜でも見ようかと、一歩踏み出したときである。ピアノの音が聴こえた。メインルームの隣に、小さな試奏室があるのだ。
おそらく古いアップライト、だがいい音だ。弾き手は無節操に、あれの数小節、これの数小節、と思いついたままに鍵盤を鳴らしている――いい響きだ。しばらくそんなふうにして遊んで、数拍の静寂の後、
――『黒鍵のエチュード』。
鍵盤の上を、光をまとった真珠の粒がころがっていく。
(明るくきらめく――)
まさにbrillante、今までに聴いたことのない透明感だ。そう、おそらく古いだけではない、良いピアノに違いない。が、
(……この音色は弾き手のものだ)
こんな音色を奏でるピアニストを、俺は知らない。カインは、指先が熱く痺れるような感覚を覚えた。
『お待たせしました』
店主が黒革のケースを持って、メインルームに戻ってきた。
『ちょっと』
待って、と店主を軽く制する。カインの視線の先に試奏室があることを知った店主は、何かに納得したかのように頷いた。
カインは、壁面のヴァイオリンを見た。
『どれか、弾いてもかまいませんか』
『どうぞ』
店主の表情には、躊躇も困惑も見られなかった。ヴァイオリンならどれでもよかった。自分からいちばん近いところにあったヴァイオリンを手にとり、弓を構えて一音、二音。悪くない練習用ヴァイオリンだ。
誰がピアノを弾いているんだろう、試奏室を覗きに行ってもよかった。このピアノを弾いているのは誰ですか、店主に訊ねてもよかった。だがこのとき、カイン・ロウェルは言葉にできない衝動に身をまかせずにはいられなかった。『黒鍵のエチュード』が終わる。余韻が消えるぎりぎりのところで、カインはヴァイオリンを構え、弓を走らせた。
――『ラ・カンパネラ』。
小さな鐘のきらめく音色、寄せては返す銀の旋律。数小節の後、試奏室からピアノの音色が聴こえてきたとき、カイン・ロウェルは人生で経験したことのないような恍惚感を覚えた。全身に鳥肌が立っている。
カインが弾きはじめたパガニーニの『ラ・カンパネラ』に、試奏室のピアニストは、リストの『ラ・カンパネラ』で応えてきたのだ。店主の存在も、ぺカットも、すべてが消えた。ピアノの音色が、カインの旋律に絡みついては、かろやかに逃れていく。追いかける、逃げる、つかまえる――きらきらとした鐘の調べの奥で、二人の弾き手が濃密に絡みあっている。
どちらからともなく演奏を終えたとき、快感に酔ったようになっていたカインは、なぜかただぼんやりと立ち尽くしていただけだった。そこに駆けこんできたのは、ひとりの少女である。紺色のセーラー服を着た、まだほんの子ども。そう、子どもだ。彼女が、あのピアノを? 完璧な技巧でリストを弾く少女なら、いないこともない。だが、あの音色は――。
「カイン・ロウェル」
駆けこんできたはいいものの、そこからどうすべきか分からなかったのだろう。少女はただこちらの顔を見つめて、カインの名を呟いた。
『俺のことを?』
「あ……」
クラシック界隈にいる人間なら、カイン・ロウェルの存在は知っていてもおかしくない。
『音が……』
英語だ。
『音が?』
『音が、カイン・ロウェルだった』
『音を聴いただけで、それで、俺だと?』
首がもげるのではないかと心配になるほど、少女は激しくうなずいた。カインの心臓も、今、どくどくと音を立てている。手放してはならない。この少女との出会いを、このひとときで終わらせてはならないと思う。
『こんなところにカイン・ロウェルが来るなんて……』
こんなところとは失礼な、と店主が一言呟いたが、少女はただカインのことだけを見つめている。
『明後日、東京で公演があるんだ』
『知っています』
少女はまた、何度もうなずいた。彼女はほとんど涙目になっていた。
『行きたかったんです、でも、やっぱりチケット取れませんでした』
カインは思わず微笑んだ。この小さなピアニストが、自分のヴァイオリンを聴きたいと願い、チケットを取ろうとしてくれたことが、無性に嬉しく誇らしかったのだった。
『きみはいったい……』
きみはいったい誰なんだ。どこの誰に師事している子なんだ。将来どうするつもりなんだ。訊きたいことが山ほどある。そして何より、この子ともっと何か――何でもいい、何か一緒に弾きたい。
なのに、こういうときに限って、邪魔をする人間がいる。オリヴァー・グラント。
(なぜこんなタイミングで電話をかけてくるんだ!)
とはいえ、オフの時間に必要のない電話をかけてくるような男ではない。有能マネージャーがこんなタイミングでかけてくる電話、間違いなく仕事絡みだ。
『……失礼』
舌打ちをしたい気分で、カインは電話に出た。
*
見慣れた『松田楽器店』のメインルームで、あのカイン・ロウェルが電話をしている。
「こんな……なんで……」
いまだに現実を受けとめられない流麗に、「俺がいることを思い出せ」と言わんばかりの表情をした松田が、黒革のケースをこれ見よがしに持ち上げた。
「いい弓が入ったって聞いて、見に来たんだって」
弓。
「一億円部屋の」
流麗の気持ちを落ち着けようとしてくれているのだろうか。松田の声に緊張感がない。
「おじさん、どうしたらいい、どうしよう」
「何が」
「弓を見に来たなら、試奏するかな?」
「そりゃあ……」
聴きたい。カイン・ロウェルのヴァイオリンをもっと、もっと聴きたい。そして許されるなら、さっきのように何か――何でもいい、何か一緒に弾きたい。
『申し訳ない、仕事が……このあと急な会食が入ってしまって』
『……あ……』
流麗の希望は、十秒もせずに潰えた。よほど悲しげな顔をしていたのだろう、カイン・ロウェルもまた、何ともいえない表情でこちらを見つめている。
『きみ、名前は』
『な、名前?』
『きみの、名前』
『……ルリ、ルリ・ホウジョウ』
『Ruri……』
カイン・ロウェルが、私の名前を呼んだ。よろめいた流麗の体を、松田が慌てて支えた。
『Ruri、きみ、明後日の公演に来てくれないか』
夢なら醒めないでほしい――彼は今いったい何と言ったのだろう!
『さっき、チケットを取れなかったと言ったね。大丈夫、チケットならこちらで準備する。だから……』
もはや流麗は、息をするだけで精一杯だ。
『受付で名前を言ってもらえば、席につけるように話を通しておく』
嘘だ。行けるの?
ずるいことをしているみたいな感じがするけど、でも……。
私、悲しい顔をしすぎてた?
言いたいことは、何ひとつ言葉にはならなかった。
『聴きに来てほしい』
もう行かないと、と呟いたカイン・ロウェルは、どこかもどかしげに見えた。当然だ。さっきから彼ばかりがしゃべっていて、流麗はだんまりなのだから。
『申し訳ありません、ぺカットを見に来たつもりだったのですが……』
彼は松田のほうに向きなおり、頭を下げた。
『いずれまた、必ずお伺いします』
よほど時間に余裕がないらしい。カイン・ロウェルは流麗の反応を気にしながら、それでもドアに手をかけた。
『Mr. Lowell』
弓ケースを抱えた松田が、穏やかな声でカイン・ロウェルに言った。
『行かせますから』
一瞬、カインと松田の視線が強くぶつかり、そしてカインは会釈して店を出て行った。
カイン・ロウェル。欧州一の名門ファルケンベルク音楽院に在籍する若き名ヴァイオリニストだ。流麗は三年前、動画サイト上で初めて彼の演奏と出会った。響を忘れられない流麗が、ファルケンベルク音楽院の公式チャンネルをしっかりフォローしていたからである。あのときの感動を、衝撃を、流麗は今でも鮮明に覚えている。この世に存在し得るすべての感情、文字にも何にも代えることのできない感情が、あの小さなヴァイオリンから迸っていた。
――『ラ・カンパネラ』。
ひらひらと音色の蝶が舞っていた。かろやかで、そのくせ底知れない深みがあった。小さな鐘の音はきらきら楽しげに輝いているのに、なぜか涙がこぼれるような悲哀が滲んでいた。聴いたことのない音色だった。
傲慢だろうか。だが流麗は、カイン・ロウェルの音色を聴いた瞬間に、こう感じたのだ――「わたしと、おなじ音楽」。
流麗は、カイン・ロウェルのヴァイオリンに溺れた。息もできないほど、彼のヴァイオリンに夢中になった。彼のヴァイオリンを聴き、彼の弾くヴァイオリンソナタにあわせてピアノを弾き、そして最後に自分だけのピアノに帰ってくる――流麗はずっとそういう日々を過ごしてきたのだった。
今日もまた、同じ一日になるはずだった。学校帰りに『松田楽器店』に寄り、試奏室で好きな曲を好きなだけ弾き、夕飯の時間が近づいてきたら家に帰る、平凡な一日に。何となくショパンの気分だったから、『黒鍵のエチュード』を弾いた。曲の終わり、あの余韻をそのまま包みこむように流れこんできたヴァイオリンの旋律。あの瞬間、流麗の息はたぶん本当に止まっていた。息ができなかった。流麗の耳が、流麗の心が、そのヴァイオリンの弾き手を知っていた。
本当は試奏室を飛び出して、すぐにでも弾き手を確かめたかった。だが、ヴァイオリンが奏でる『ラ・カンパネラ』のたった数小節が、流麗を誘っていた。流麗はその誘惑に負けたのだ。今、応えたい。今、応えなければならない。そう思ったのだった。ヴァイオリンの音色が、流麗の旋律に絡みついては、かろやかに流れていく。追いかける、逃げる、つかまえる――何と濃密で、何と幸福な時間だっただろうか。
ピアノスクールをやめてから、別に不幸せだったわけではない。心のどこかにいつも響がいて、確かにほんの少し鬱屈したものはあったかもしれないけれど、流麗は人に恵まれ、経済的にも恵まれ、何の不自由もない暮らしを送ってきた。ピアノスクールこそやめはしたものの、ピアノを弾くことを誰に禁じられたわけでもない。自宅ではなく『松田楽器店』でピアノを弾くのも、流麗自身の気持ちの問題なだけで、自宅でピアノを弾いたとしても、家族は喜びこそすれ、止めはしなかっただろう。けれどカイン・ロウェルと『ラ・カンパネラ』をともに弾いたあの瞬間、流麗は今までに感じたことのない恍惚の波にさらわれたのだった。あの幸福感を、忘れることなどできるだろうか。
「ねえ、聞いてた?」
「うん」
「明後日のコンサートに来てくれって言ってたよ」
「うん」
「言ってたよね?」
「言ってた」
「カイン・ロウェルだったよね?」
「うん」
だが、もうメインルームのどこにもカイン・ロウェルがいたという痕跡はない。流麗はすでに不安になっている。
「……嘘でしょ?」
「…………」
流麗はもう、カイン・ロウェルの顔をはっきりと思い出すことができない。音ばかりを聴いてきたからだ。ただ、『ラ・カンパネラ』が共鳴したときの痺れ、恍惚感の余韻だけが体の深いところに残っている。
「サントリーホール……」
流麗が呟くと、松田は笑ってはいけないところで笑うのを我慢しているような、酸っぱいものを食べたときのような、妙な顔をした。
「……行き方は分かるだろ」
「でもさ」
「何だよ、行くでしょ?」
「でもさ、あんな簡単に招待って出来るものなの? 招待って言ったよね?」
「……そういうものなんだよ、関係者用の席を、ちゃんと確保してるものなの」
チケットを取ることができなかった、『FALKENBERG GALA 2026 JAPAN TOUR』。客席に行くことができたなら、あのカイン・ロウェルのヴァイオリンを、生で聴けるということ? あんな、夢にまで見るような憧れのヴァイオリンの音色を?
「サントリーホールに行って、どうしたらいいの、どうしよう、おじさん」
「サントリーホールに行って、受付に行って、北条流麗なんですけどって言うんだよ」
「……そんなの知りませんって言われたら」
「カイン・ロウェルさんの招待枠です、確認していただけませんか、って言うんだよ」
「そんなのありませんって言われたら」
「気のせいでした、すみません、って言って、美味いものでも食って、帰って来ればいいんだよ」
「ふ、不審者じゃん」
「いいんだよ、不審なファンなんか山ほどいるんだから向こうも慣れてるよ、そんなの」
「そっか……そうだよね」
そうだよね、と自分に言い聞かせるようにもう一度呟いて、
「ねえ、おじさん、何着ていこうかな?」
松田の袖を引くと、彼はまたあの何ともいえない表情で「何でもいいよ」と言った。
*
一人招待したい人がいる、と言うと、案の定オリヴァー・グラントは驚いた。
『そんな急に、どうしたんだ、いったい?』
『見つけたんだ』
『何を』
『とにかく、一席用意してくれ。受付に名前を言うように伝えてある。RURI HOJOという女の子だ』
『女の子だって? おまえが? 招待するのか? 女の子を?』
『とにかく終演後、連れてきて。俺のところに』
『Good God……!』
何てこった、とオリヴァーは本気で驚いたようである。
『絶対に帰らせないでくれ。もう一度会わなければならないんだ、俺は、彼女と』
『…………』
『控室に入れて、俺が戻るまで待たせておいてくれ。何とかして』
『冗談か?』
『冗談に聞こえるか?』
オリヴァーは首を横に振り、深いためいきをついた。
なぜ別れ際に連絡先を聞かなかったのだろう、とカインは後悔していた。もし明後日、来なかったらどうしよう。もう一度、あの楽器店に行けば会えるだろうか。いや、彼女なら必ず俺のヴァイオリンを聴きに来るはずだ……。
(必ず)
「俺と、おなじ音楽だ」――あのとき、そう感じたのだった。確かに二人は、あの瞬間、強く惹かれあっていた。愛と幸福がそこにはあった。そう、彼女はやって来る。
『それでおまえ、ぺカットはどうしたんだ』
『は?』
『ぺカットを試しに行っていたんだろ? だから僕はピンポイントでおまえのいるところに車を寄越せたんじゃないか』
『ああ……ぺカット』
いよいよオリヴァーが不審そうな顔をした。当然だ。ペカットの面白い弓が入っているらしいから見に行ってみる、そういって横浜に向かったはずのヴァイオリニストが、弓の存在を忘れて戻ってきて、突然公演に女を招待したいなどと言い出したのだから。
違うんだオリヴァー、女の子とは言ったが、女の子じゃないんだ。ピアニストなんだ。見つけたんだよ、俺は、とんでもないピアニストを。絶対に手放してはいけないんだ。手放したら生涯、後悔しつづけるだろう。だから俺は、もう一度、何としてでも彼女と会わなければならないんだ――。
そう説明したかったが、同時に何も言いたくはなかった。あの少女についてのあれこれを事細かに説明することで、あの瞬間が色褪せてしまうような気さえした。
『オリヴァー、ただ今は俺の頼みを聞いてくれ。いずれ分かるから』
『…………』
オリヴァーはもう一度深いためいきをつき、疲れたように頷いた。
『夢の世界にでも行っていたような顔をしている。頼むから、会食が始まる前には正気に戻ってくれよ』
思わずカインは微笑んだ。夢の世界。そうだな、確かに夢のような世界に行っていたのかもしれないな、と思ったのだった。




