涙と告白
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涙が一向に止まらないまま、私は家族と共に応接室を出た。
両親に隠してもらいながら、廊下を進む。
(うう……こんな泣きじゃくったまま帰ることになるなんて……誰かに見られたらどうしよう……)
出口まであと僅かなところで、目の前に思わぬ人物が現れた。
「ベイリー子爵、夫人、失礼いたします」
(ええ……!? な、なんでクラウス様がここに!?)
「これはこれは、クラウス様。まさか王宮にいらっしゃるとは……」
挨拶をしながら、私に気づいたのか、クラウス様は確かめるように少しずつ身体をずらす。
見えないように懸命に隠れようとするけれど、クラウス様の身長が高いせいもあり、上から覗き込まれた途端、一瞬目が合ってしまう。
すると、クラウス様は一歩踏み込み、お父様に申し出た。
「率直にお伺いします。カトリーナ嬢を少しの間お借りしても……?」
公爵令息にお願いされてしまっては、お父様に断る術などない。
大泣きの私をチラ見して一瞬考えた後、私を前に差し出した。
(お父様の裏切り者〜〜〜!!!!)
「構いません。今少し情緒不安定ですが、それでもよろしければ、どうぞ」
「情緒不安定……?」
言われて初めて気づいたのか、不思議そうにクラウス様が私の顔を覗き込む。
「カトリーナ嬢にいったい何が!?」
「その辺りは、本人から聞いてください。それでは、私たちはこれで……」
(え!? ちょっと、お父様!?)
叫んで引き留めたいのに、そうすると余計に涙が出てしまいそうで、声を出せない。
しかも目の前には、諦めなければと思っていたその相手がいる。
泣きながら戸惑う私を、クラウス様はなぜか切なげに見つめると、そのまま私の手を引き、そこそこのスピードで歩き始めた。
そして気づいた時には、庭園の中にある四阿に来ていた。
案内されるまま椅子に腰掛けると、少し間を空けて座ったクラウス様は、どこから手配したのか、お茶の入ったカップを私に手渡した。
少しぬるめのお茶を飲み干すと、ようやく少し涙がおさまった。
「落ち着かれたようで、良かったです」
「……ありがとう、ございます。お恥ずかしいところを、お見せしてしまい、申し訳ございません……」
(ああもう、穴があったら入りたい……)
「ところで、クラウス様も、王宮に何かの御用で……?」
そう聞いた途端、クラウス様がじっと私を見つめる。
サファイアの瞳に、いつもとは違う熱を感じる。
「いえ、王宮に来たのは、今日あなたが召喚されていると聞いたからです。先日あなたは、光属性魔法に目覚められ、私や殿下を救ってくださいました……」
言葉を切ったクラウス様は、私から視線を外すと、思い詰めたように前を見据える。
「……けれど、光属性魔法の発現者は、王族と婚姻を結ぶか、神殿に仕えるか、どちらかになることがほとんどです。殿下はすでにエリザベスがいるので、王族との婚姻は難しい。となると、あなたは神殿に行ってしまう! けれど……それが運命なのだとしても、私はあなたに神殿には入ってほしくないのです!!」
「……え?」
(今、クラウス様は何ておっしゃったの……? 私に神殿に入ってほしくないって……。私は期待しても、いいの…………?)
目を見開く私に、クラウス様がなぜか悲壮な顔で息を呑む。
「…………あなたには私のそばに、……いえ、私とともに居てほしいのです」
「……どう……して?」
思わず漏れた本音に、クラウス様は立ち上がり、ゆっくりとその場に跪く。
それから恭しく私の手を取り、そっと目を合わせ微笑んだ。
「私が……あなたのことをお慕いしているからです。カトリーナ嬢」
その瞬間、引いたはずの涙が再び溢れ出る。
あまりのことに、嬉しくて胸がいっぱいで言葉が出てこない。
そんな私を見たクラウス様は、愕然とした様子でその場に項垂れてしまい、違うのだと言いたいのに、言葉にならず……。
私はただただ、泣きながら彼の袖を掴むのが精一杯だった。
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