王宮②
王宮の後半です。
楽しんでいただけますと幸いです。
私の質問に、なぜか国王陛下は不思議そうに首を傾げた。
「神殿? なんだ、カトリーナ嬢は神殿に入りたいのか?」
「え……いえ、光属性に目覚めたものは神殿に入らなければならないと聞いていたので……」
陛下は意外そうな顔をしたけれど、きっと学園を卒業するまで伏せておこうとなさっているに違いない。
でも、私は今知っておきたい。
「そうか。希望するならば入れるが、特に入る必要はないぞ? まあ、協力は要請するかもしれんが、強制するものではない」
(「強制するものではない」……陛下は今そう言ったの? 私、神殿に入らなくても良いの!?)
「え? そうなのですか!? でも……」
「これまで神官やシスターに光属性に目覚めるものが多かったせいで、そういうふうに思い込む者が多いだけだ。元々光属性の性質が由来しているんだが、他者のために尽くす奉仕の精神と関係があるそうでな、そなたも領民のために自身の知識はもちろん、魔法を多く使っていたと聞いている。そこが関係しているのかもしれんな。だから、別に今のままで構わんよ」
「では、私は子爵家にいられるのですね!?」
「ああ。まあ、神殿以外に王族に嫁ぐというのもよくあるのだが……年頃の合いそうな王太子にはすでに婚約者がおるし、婚約破棄などしたら、王太子やこやつに恨まれそうだしなあ」
言いながら陛下は後ろをチラッと見た。
ドス黒いオーラを纏った宰相閣下から、鋭い視線が陛下に向けられている。
慌てて陛下は咳ばらいをして、話を元に戻した。
「……それに、他の王子も皆婚約者がいる。そなたのように光属性以外にも国に利益をもたらす人間を国としては手放したくないのが本音だが、そなたの自由を奪う気はない。まあ、できれば国のためにこれからも子爵家で励んでもらえると嬉しいがな。楽しみにしているぞ」
「ありがとうございます……」
全身の力が一気に抜けていくのを感じる。
いろんなことを説明されたけれど、私の思いは一つだった。
(私、クラウス様と離れなくて済む……! それでもまだ遠いことに変わりはないけれど……)
離れないで済むと思うだけで、心の中が晴れていくのがわかる。
複雑な思いを抱いていると、先ほど陛下を睨んでいた宰相もとい、シェラード公爵が陛下のそばへと歩み出た。
「陛下、大事なことを言い忘れておられます」
「大事なこと……? ああ、そうだった、そうだった!」
(大事なことっていったい……? というか、さすがクラウス様のお父様ね……やっぱりイケオジだわ!! 陛下も雄々しくてワイルド系のイケオジだけど、シェラード公爵はインテリ系ね! クラウス様に似ているし、将来あんな感じになられるのかしら……)
脱線する私の脳内に、思わぬ言葉が降り注がれた。
「ベイリー子爵家の陞爵についてだが、このまま伯爵位への陞爵を決定とする!」
「えええええ!?」
家族全員無作法だとわかりつつも、思わず一斉に立ち上がって声を上げる。
(えええ!? どういうこと!? 陞爵? 今、陛下は陞爵って言った!? 伯爵位になるって言った!? いったいなんで? ソフィアのこともあったのに、なんで陞爵が認められるの!? ええ!?)
頭の中にハテナがいっぱい浮かんで、何を言えば良いのかが思いつかない。
そんな中、さっきまで呆けていたお父様が、すっと前に跪いた。
「陛下、ご厚情を賜り、感謝申し上げます。ですが、失礼を承知で申し上げます。我が家は罪人を出した家門でございます。陞爵は他の家門に示しがつかないのではありませんか?」
「それについては、私からご説明いたします」
かけている眼鏡をクイと上げ、書類を開きながらシェラード公爵が前に出た。
「罪人となったのは、孤児院より引き取った元平民であり、子爵家と血の繋がりはありません。加えて、先日の事件は秘匿することが決定しておりますので、表に出ることもない。当日の護衛たちには元々秘匿する旨の契約魔法を交わしておりますし、護衛の判断により生徒会以外の生徒は侵入できないようにしておりましたので、問題ありません」
「ですが……」
「さらに、あの事件で王太子殿下を救ったのは子爵の御息女であるカトリーナ嬢です。光属性の発現も鑑定でしっかり確認いたしましたし、むしろ光属性魔法を発現した生家が子爵家では、困ります」
「そ、それは確かに……」
「ベイリー子爵家は、カトリーナ嬢のこれまでの功績で陞爵の話が元々出ておりましたし、ここで伯爵位を賜り、高位貴族の仲間入りをしていただく必要があるのです。おわかりいただけましたでしょうか?」
「は、はい……」
次々に捲し立てる公爵に完全に圧負けしてしまったお父様は、頷くしかなかった。
(この圧のかけ方、クラウス様にそっくりだわ……え? あれ? 待って、ということは……)
「ベイリー子爵、次の叙爵式を終え次第、そなたは、ベイリー伯爵となる。今後も国のため、励むように」
「……承知いたしました」
陛下からのだめ押しに、お父様はその場に跪いたまま、首を垂れた。
その後、陛下方は退室され、残された家族は呆然となる。
(え……じゃあ、私、もう神殿にも行かなくていいし、伯爵令嬢になるの……? クラウス様と一緒にいられるかもしれないの……?)
すると、胸の中いっぱいに何かが込み上げてきて、気づけば頬を熱いものが伝っていた。
そして、自覚した途端、とめどなく溢れてくる。
「ど、どうしたんだい? カトリーナ!? 大丈夫かい!?」
心配する両親を尻目に、私の涙は止まることがなかった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。




