王宮①
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召喚状が届いてから二日後、朝早くに王宮から迎えの馬車が来た。
大きく煌びやかな馬車に、お父様もお母様も、口をあんぐり開いたまま惚けている。
かくいう私も、クラウス様に誘われて公爵家に招待されていなかったら、きっと同じ顔をしていただろう。
今日は久しぶりに赤い髪を下ろし、直毛ではない少しウェーブがかった髪を耳元だけ編んでもらった。
お母様と揃いの、新しいドレスを纏っているけれど、気持ち的には全然晴れやかではなく、むしろ緊張で逃げ出したい気持ちが頭をもたげる。
馬車にしばらく揺られ、王宮に到着すると、謁見室ではなく、私用の応接室に通された。
てっきりあの仰々しい雰囲気の中で、跪いたままいろいろ伝えられると思っていたので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
通された応接室もこれまた煌びやかで、ふかふかなソファのせいで、背筋を正したいのに正すのが難しいというなかなか経験できない状況に直面しつつ、陛下や王妃殿下のいらっしゃるのを待った。
もっと待たされるかと思っていたのに、座って数分で、陛下方がお出ましになった。
その後ろには宰相や文官たちもいて、結構な人数だ。
「待たせてすまない。ベイリー子爵。それに、子爵夫人に、カトリーナ嬢」
「いえ。陛下方におかれましては、ご機嫌麗しく。ところで、本日はいったいどのような……」
すぐに立ち上がって礼をするお父様に合わせ、私とお母様も立ち上がって礼を取る。
「まあ、ひとまず座ってゆっくりお茶でも飲むといい。カトリーナ嬢がシェラード子息とやっている事業のメント茶を手に入れてな。私も王妃も大変気に入っているのだ。身体にも良いらしいな。良いものを生産してくれた」
向かいにどっしりと座った陛下が、使用人たちに命じてお茶を用意させる。
王妃殿下も私に向かってにっこり微笑み、お茶が注がれるのを嬉しそうに見つめている。
(な、なんで陛下がメント茶を!? しかも、お父様との事業じゃなくて、私との事業って……バレてる!? さては、クラウス様ね。公爵様は宰相だし、当然かもしれないけど……どうして教えてくれないの!? でも、気に入ってくださってるなら良かった……)
「もったいないお言葉です、陛下」
「カトリーナ嬢は、子爵領にて様々な改革を行ってきたと聞いている。この希少なメントの量産や加工もそなたの手腕によるものだそうだな」
(え……? どういうこと? こっちも国には、お父様の功績として届けてあるはずなのに……)
驚きを隠せない私たちに陛下はにっこり微笑んだ。
「あまりにも次々と改革が行われるので、気になってな。領地ではどんどん改革が行われるのに、社交界では浮いた話も聞かないどころか、子爵に聞いても詳しいことは答えられないという。秘密にしている体ではなく、明らかに知らない感じでな。それで調べさせておったのだ。そしたらどうだ。まさか幼い令嬢が次から次に施策を打ち出すではないか。面白くなって、ずっと見守っていたというわけだ」
「……ずっとご存じだったのですか?」
「そうだ。品種改良に成功したと聞いた時は目を剥いたぞ。幼い令嬢がそこまで……!?とな。だからこそ、フォーレルが王宮を辞したいと申し出た時も、そなたを導けるのであればと許したのだ」
「まさかそんなことが……」
「だから、今回の事件は、正直王家にとっても痛手でなあ……それで秘匿とすることにしたのだ。まあもちろん、そなたが発現したとする属性も関係していないわけではない」
(ですよね……)
「まずは、属性の鑑定を行うとしよう。神官をここへ」
「はっ!」
「神官たちが来るまでゆっくりお茶でも飲んで待つといい」
緊張しながらも勧められるままにメント茶を飲む。
(味なんか全然しないよぉ〜〜〜!!)
両親などは、ソフィアの件を怒られないとわかったからか、それとも自分たちに全然質問を振られないからか、なぜか若干寛ぎ始めているのは気のせいか。
(変なとこ図太すぎじゃないの!?)
笑顔を貼り付けながらお茶を啜り続けること数分。
ようやく神官が鑑定に必要な魔石板を持って現れた。
その魔石板の盤面には何やら魔法陣のようなものが描かれていて、少し窪んでいる魔法陣の上には薄っすら水のようなものが張られている。
「この魔石板に手をつけてください。水に浸るような感じでお願いします」
神官に言われ、その通りに手をつける。
「では、そのままこの板に魔力を流して」
「はい」
魔力を流した途端、魔石板が白く一気に光り輝く。
発光が収まると同時に、キラキラと小さな光の粒が舞っているのが見えた。
「こ、これは……!」
神官や陛下方、それに陛下の後ろに控えていた宰相や文官たちも一斉に声を上げた。
魔石板の盤面を見ると、魔法陣が浮かび上がり、光属性と水属性、土属性の部分がそれぞれ光っていた。
「……光属性」
隣にいたお父様が信じられないものを見たように、声を震わせる。
お母様は目を見開いたまま固まってしまった。
「やはりか……報告と相違ない。光属性で間違いないようだな」
「光属性……」
ソフィアにも言われ、実際に自分でもその魔法を行使したけれど、実感が伴っていなかった。
今になってこの鑑定結果を見てようやく、本当なのだと実感した。
けれど、それはつまり……
「陛下、あの、やはり私は、神殿に入ることになるのでしょうか?」
聞きたくない、聞きたくないけれど……
私は意を決して、陛下に問いかけた。
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