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揺れる想い

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 ソフィアを拘束した後、私は目覚めたクラウス様を抱き起こし、光属性の治癒魔法をかけた。

 魔法のある世界に転生したことがあまりに嬉しくて、魔法の本を読み漁り、自分の属性以外の魔法も深く学んできたことがこんな時に役立つなんて、誰が思うだろうか。


(まあでも、『悪笑み』でソフィアが光属性魔法を使うシーンは冒頭にしかなかったし、あんなに光るとは思わなかった……ちょっとビックリしたわ)


 そんなことを考えていると、治癒魔法を受けたクラウス様がゆっくりと自力で身体を起こす。


「……もう大丈夫です。ありがとうございます、カトリーナ嬢」


 いつもの笑顔を向けたクラウス様は、まだふらつく身体にもかかわらず、お礼を告げるとすぐに王太子殿下へと駆け寄っていく。

 私もクラウス様のあとに続いた。


「殿下、大丈夫ですか!?」

「んん……」


 クラウス様の声に、殿下の瞼がわずかに動く。


「カトリーナ嬢、魔法を!」

「は、はい!」


 返事をしたものの、治癒魔法をかけるべきか、浄化魔法をかけるべきかわからない。

 ひとまず、念のため両方かけることにした。


【クリア・キュア】


 殿下の周りに光が降り注ぎ、キラキラと殿下の身体が光り始める。

 そして、光が落ち着くと殿下はゆっくりと目を開けた。


「……クラウス………カトリーナ、じょう?」


「オスカー!!」

「殿下!!」


「目を覚まされて良かったです……!」


 殿下の手を握り締め、クラウス様は瞳を潤ませる。

 その状況を見ながら、私はほっと息をついた。


 その後、ソフィアは、目覚めた護衛たちによって魔力封じの手錠をはめられ、連行されていった。

 そして、私の光属性魔法については、一旦、王家預かりとなり、口外禁止を言い渡された。



 翌日、ベイリー子爵家には近衛騎士団がやってきて、ソフィアの私物はすべて押収されていった。

 その押収されたものの中に、ソフィアが孤児院から持ち出した絵本があり、どうやらそれが古い魔術具だったらしい。

 持ち主の能力を引き出す魔術具で、潜在能力を高める術が仕込まれていたそうだ。

 もしかしたら、乙女ゲームの主人公はこの魔術具で光属性に覚醒したのかもしれない。

 けれど、光と闇は表裏一体。

 心の持ち方次第でどちらにでもなり得る。

 元々平民で魔力がそこまで多くなかったソフィアがあそこまで強くなったのは、それだけ嫉妬や憎しみの感情が大きかったのだろう。


 そして、王家は今回の事件を秘匿とする旨が通達された。

 その理由は、私が光属性魔法に目覚めたこと。


 現在、ホーグナー王国には、光属性魔法を使える人間が一人しかいない。

 それも、神殿に仕えている高齢の神官で、私は希少な二人目となったわけだ。

 王家はそんな私が罪人の姉になってしまうことを問題視したのだろう。

 ソフィアが元平民で、孤児院から迎えた養女だったことも大きい。

 その上、私自身が王太子を救い、事件を解決したことも鑑み、王家はこの事件を秘匿することにしたのだ。



 事件から三日後、ようやく学園への登校が許された。

 いつも通り馬車に乗って、学園へと向かう。

 色々あったこともあり、馬車を乗る際には、お父様とお母様が心配そうに見送ってくれた。


 私はというと……馬車の中、一人のたうち回っていた。


「秘匿してくださったから、特に問題はないと思うのだけど……クラウス様にどんな顔をして会えばいいのぉ〜〜! 絶対会った途端に顔が赤くなるに決まってるじゃない!! 無理よ無理〜〜!! 恋愛免疫なんて私にはないのよおおおお! それに……」


(いくら秘匿されたとはいえ、私は罪人の姉……それに、光属性魔法の使い手は神殿に入るらしいし……学園を卒業すれば、もう会うこともないかもしれない……)


 何より我が家の陞爵の話は、もう消えてしまったのだから……。


 殿下のおっしゃっていたことが本当だったとしても、もはや無理な話なのだ。

 考えただけで胸が張り裂けてしまいそうだけれど、それが現実。

 この胸の苦しみを少しでも抑えるために、心が落ち着くまでは、クラウス様に接触しないようにしよう。

 そう心に誓った。



 そう決意して、馬車を降りたはずなのに、馬車降り場に着いた途端、なぜかクラウス様が待ち構えていた。


(ちょ、ちょっと、いきなりどういうこと!? こ、心の準備があああ〜〜〜!!!)


「おはようございます、カトリーナ嬢」

「お、おお、おはようございます、クラウス様。なぜこちらに!?」

「もちろん、カトリーナ嬢が来るのをお待ちしておりました」


(そんな朝から満面の笑顔を向けないで〜〜〜他の生徒たちがすっごい目で見てるから!!)


「あの、ええと、それは……いったいなぜでしょうか?」

「あの日のお礼をお伝えしたくて……」


「あの時もお礼の言葉をいただきましたし、大丈夫ですわ! あの、私、これから職員室に用事がありますので、失礼いたします! また、教室で」


 失礼だとは理解しつつも、クラウス様の言葉を遮った上、話を終わらせようと嘘の用事を伝える。


「え、あ、はい……わかりました。また後ほど教室で」


 少し寂しそうな笑顔を向け、クラウス様は職員室へと向かう私を見送った。


 そんなこんなで、この日からクラウス様を避けるように移動したり、話しかけられても話が長引かないようになるべく簡潔に答え、その場を去るという生活を始めた。

 加えて、しばらくの間、生徒会を欠席する届けを出した。

 ソフィアが居なくなった今、私が生徒会に在籍する理由がなくなったからだ。

 最初は辞めようと考えたのだけれど、あまりにも無責任な気がしてしまい、気持ちが落ち着くまでお休みさせてもらうことにしたのだ。

 クラウス様を避け、なんとか王太子殿下に相談に行くと、なぜか殿下は、理由を深く聞くことなく了承してくれた。

 もしかしたら、神殿に行くことになるかもしれないことを知っているからかもしれない。


(殿下のおっしゃっていたクラウス様の気持ちが本当なら、クラウス様にとっても会わないほうが良いと思われたかもしれないわ……)


 こうしてクラウス様を避ける日が三日ほど続いたある日、王宮から召喚状が届いた。

 事件からちょうど一週間後に当たる明後日に王宮に来るように、とのことだった。

 王宮からの呼び出しにベイリー子爵家は大騒ぎになった。


 ソフィアのことがあったのだから、当然といえば当然だが、事情聴取はすでに済んでいる。

 つまり今回は、私の光属性魔法とベイリー子爵家の今後についての話し合いであることは明らかだ。


「か、カトリーナ……私はどうしたらいいんだ!? いったい何を聞かれるのだ!? 召喚状などこれまで一度もいただいたことがないのだ。もうどうしたらいいのだぁ〜」


 大人げなく泣きそうな顔で縋り付くお父様に、私が泣きたくなってくる。


「私も何を聞かれるかなんて知りませんわよ。大方、陞爵の取り消しの話ではないのですか? あとは……私の魔法のことくらいでしょうか……」


 両親にはあの日発現した光属性魔法について、王家から家族への説明許可を貰っていたにもかかわらず、詳しくは話していない。

 自分としても、正直信じられないところがあるので、事情聴取の際に、王宮なり神殿なりの鑑定を行ってから正式にと思っていたのに、なぜか聴取で鑑定されなかったせいで、ここまで詳しいことは言えずに来てしまったのだ。


 両親には「なんだか珍しい魔法を使ってしまったみたい」としか伝えていない。

 けれど、きっと王宮ではこちらの話がメインになるのだろう。


「やはり陞爵は取り消しになるか……仕方がないとはいえ、カトリーナには本当に申し訳ない」


 珍しくお父様が真面目な表情で頭を下げる。


「謝らないでください! お父様が悪いわけではないのですから」

「だがしかし……」

「それに、完全に潰えたわけではありませんわ。これからもっと功績を上げて、次のチャンスを狙えばいいのです!」


 きっと光属性と認められて、私が神殿に入れば、生家であるベイリー子爵家は陞爵されるに違いない。


(だから、きっと大丈夫よ、お父様。でもそうなったら……私はこの子爵家を継げなくなるのね……それだけがちょっと心残りだわ。神殿かぁ……)


 神殿のことを考えた途端、なぜかクラウス様の寂しげな笑顔が頭を過った。

お読みいただきありがとうございます。

事件は解決したものの、前途多難な状態です。


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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