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ソフィアの覚醒

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 公爵家での話し合いの夜、早速お父様と話し合い、共同事業に対する了承の返事を公爵家へと送った。

 あまりの出来事に、お父様は通話魔石の先でかなりテンパっていたようだけど、今後実際に公爵閣下と会うこともあるかと思うと、今から先が思いやられる。

 でもこれで、子爵家はさらに発展していくのは確実だと思うと、今までの苦労が報われていく気がして、たまらなく嬉しい。


「あとは、メント茶が王都で受け入れてもらえるかどうかね。こればっかりは流通してみないとわからないし、しばらくは様子見ね」


(まあでも、前世でも市民権を持っていたし、今世でもきっと大丈夫なはず……! むしろ、量産の心配をしなきゃいけないかもね)



 それから一週間ほどして、ついにメント茶が王都のスプライド商会の店頭に並び始めた。

 売り上げは順調らしい。

 その裏では、シェラード公爵夫人の協力があったそうだけれど、きっとクラウス様とエリザベス様が夫人に勧めてくださったのだろう。

 一日も早く量産体制を整えられるよう、クラウス様と尽力している。

 今日も学校でクラウス様と量産について話をする予定だ。


 メントの資料を整え、朝食へ向かうと、そこにはソフィアの姿があった。

 あの晩餐の日以降、食事時間には出てくるようになったものの、一向に口をきかず、相変わらず引きこもりを続けていた。


(いったいいつになったら学園に復帰するのかしら……)


 隣の席につき、いつものように声をかけた。


「おはよう、ソフィア。今日は登校するのかしら?」

「…………」


 無言。


 それはいつものことなのだけれど、今日は急にキッと私を睨むとすぐに席を立ち、そのまま部屋を出て行ってしまった。


「あ、ちょっと、ソフィア!」

「放っておきなさい」

「お母様……おはようございます。何があったのです?」


 私の問いかけに、お母様が大きなため息をつく。


「おはよう。……どうも、あなたがシェラード公爵家と事業を始めたことを使用人たちから聞いたらしいのよ。朝からその使用人を問い詰めたりして大荒れだったらしいわ」


「そうですか……」


 使用人に口止めをしたりもしていないし、別に秘密にしていたわけでもない。

 けれど、無性に嫌な予感がした私は、急いで食事を終え、馬車乗り場へと向かった。


「やっぱり……!?」


 そこにはいつも乗っている馬車はなく、ソフィアが一人で乗って行ったことを知らされる。


「も、申し訳ありません! カトリーナお嬢様をお待ちするようお伝えしたのですが、いつも以上に癇癪を起こされ、押し切られてしまいまして……」


 馭者の様子から、ソフィアが大暴れしたことが窺えた。


「大丈夫よ。今お父様は領地にいらっしゃるから、そちらの馬車で学園へ向かうわ」

「ありがとうございます! かしこまりました!」


 準備を待って、私はお父様の馬車に乗り込み、学園へと向かった。





 学園に到着すると、ソフィアはかなり前に到着していたようで、乗っていた馬車にはすでにいなかった。

 馭者によると、ソフィアはとても急いでいたそうだ。


(嫌な予感しかしないわね……)


 私はすぐに一年生の校舎へと向かった。

 けれど、特に何か騒動が起きているわけでもなく、騒がしい様子もない。

 ソフィアのクラスを覗いてみても、彼女の姿はなかった。

 殿下が目的かもしれないと、Aクラスも覗いてみたけれど、かなり早い時間なせいか誰もいない。


「おかしい……どこに行ったのかしら?」


 ソフィアはまだ入学してから、講堂と教室しか行っていないはず。

 他に行きそうな場所に見当がつかない。


 すると突然、生徒会室のある中央棟の辺りから大きな音が響いてきた。


(まさか……!? ソフィア!!!!)


 私は急ぎ中央棟へと走った。



 中央棟の中に入り、二階にある生徒会室に向かう。

 階段を上っていくと、ソフィアが捲し立てる大きな声が聞こえてきた。


「わたしがオスカー様を浄化してあげるって言ってるじゃない!! あなたじゃどうにもできないでしょ!!」

「私は殿下の側近です。あなたのような人間を、殿下に近づけるわけにはいきません」


 ソフィアに淡々と答える声に、思わず私の心臓が跳ねる。


(え……この声は、クラウス様!?)


「この前と言い、なんでわたしの邪魔ばっかりするのよ!! わたしのような人間? ……何を言ってるの? わたしは光属性魔法を使う聖女なのよ。わたしに浄化できないものなんかないの!! だからわたしに任せればいいのよ!! いい加減わかりなさいよ!!」


(この前……いったいどういうこと? 私が知らない間に、ソフィアはクラウス様に会っていた……?)


「殿下はあなたが触れた途端、黒いモヤに包まれ倒れました。あなたが原因以外、考えられません!」


「うるさい、うるさい!! これじゃあ、オスカー様が攻略できないじゃない!! 邪魔すんな、クラウス!!」


 どんどんヒートアップして、クラウス様を呼び捨てるソフィアの声に、思わず我に返る。


(今はそんなことを考えている場合ではないわ。早くソフィアを止めないと!)


 ようやく階段を上りきり、対峙するソフィアとクラウス様の姿が見えるところに出た。

 何やらクラウス様の腕には、黒い痣のようなものが浮かんでいて、彼の周りには黒いモヤが渦巻いている。


(あの痣は何!? それにあのモヤは……)


 見ただけで、明らかにおぞましいものだとわかる。

 しかも、クラウス様の後ろには、彼よりもさらに濃いモヤに包まれ、意識のない王太子殿下が倒れているのが見えた。

 私は、思わずクラウス様の側まで駆け寄った。


「クラウス様!!」

「カトリーナ嬢!? 来てはいけない!!」


 振り向いたクラウス様は、驚いた表情で、殿下を守りながら手で制止してくる。

 よくよく周りを見ると、私が来た廊下の反対側には、殿下の護衛たちがうずくまっていた。

 その異常な状況に、恐怖よりもソフィアへの怒りが湧いてくる。


 私はクラウス様たちの前に一歩踏み出し、ソフィアに向かって声を上げた。


「ソフィア!! これはいったいどういうことなの!!」


 その途端、ソフィアはものすごい形相で私を睨みつけた。


「なんだ、お姉様も来たの。ちょうどいいわ。あんたばっかりいい目をみて、ヒロインはわたしなのよ!! ふざけんじゃないわよ!!!!」


「あなたまだそんなことを言っているの!? いい加減にしなさい!!」


「うるさい、うるさい!! この世界はわたしのためにあるの!! その証拠にやっと魔法だって使えるようになったんだから!」


「……魔法? 使えるようになったって、何を言っているの? あなたには魔力属性は何もなかったはずでしょ!?」


「いいえ。使えるようになったのよ! わたしはヒロインなんだから、ヒロインが使える魔法と言えば、光属性に決まっているじゃない! 何を言ってるの?」


 ソフィアは私を小馬鹿にするような、見下すような視線を向け、さも当然であるかのようにそう告げる。

 そして、私に向かって魔法を放とうと何やら詠唱を始めた。

 つぶやかれた詠唱は確かに光属性の魔法のはずなのに、彼女の手には黒々としたモヤが現れる。


(あれは……もしかして闇属性の魔法!?)


 闇と光は表裏一体だということを以前本で読んだことがある。

 つまり闇属性魔法と光属性魔法の詠唱は似ている可能性が高い。


「ソフィア、やめなさい!!!!!!」


 そう叫びながらも、私は迫りくるモヤに反射的に目を閉じてしまった。

お読みいただきありがとうございます。

ついにソフィアが覚醒しました。次回、姉妹対決です!


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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