↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/38

クラウスの気持ち

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 ベイリー子爵領から王都の屋敷に戻った翌日、私は学園に向かう馬車に一人揺られていた。

 入学してわずか数日でソフィアは不登校が定着してしまったようだ。


(登校してもしなくても困るって、ほんとどうしたらいいのよ〜〜〜!?)


 陞爵がかかった大事な時期なのに、このままでは「孤児一人まともに育てられない子爵家」とか言われて、話が立ち消えてしまうかもしれない。


「はあ……せっかく絶滅種の希少な薬草が見つかったのに、プラスどころかプラマイゼロになっちゃいそうだわ……」


 馬車の中で一人ジタバタとひとしきりもがいてから、大きなため息を吐く。


「ソフィアのことだけでも憂鬱なのに、生徒会かあ……頭が痛いわ。でもその前に教室で謝らないと。クラウス様、怒ってないと良いなあ……」


 謝るシミュレーションを頭の中で繰り返しているうちに、あっという間に学園に到着してしまった。



 ところが、シミュレーションをしてまで気合いを入れて挑んだにもかかわらず、扉を開けた瞬間、クラウス様が駆け寄ってきた。


「カトリーナ嬢!! もうお屋敷のほうは大丈夫なのですか!?」

「は、はい……」


「急にお帰りになったので、何か緊急事態が起きたのではありませんか!? まさかあの妹君が何か!? 私に何か手伝えることがあればなんでも言ってくださいね!!」

「あ、ありがとうございます……」


 必死に捲し立てるクラウス様の勢いに、お礼を言うのが精一杯で謝罪などできる状態ではない。


(え? クラウス様、怒っていらっしゃるのでは……? え? どういうこと!? もしかしてこれは……)


「いえいえ。クラスメイトで同じ生徒会なのですから、心配するのは当然ではありませんか」


(心配……? 今心配とおっしゃった??)


「そ、そんな、心配していただくようなことでは……」


「何をおっしゃっているのですか! 先日の妹君の暴走を見て、心配しないはずがありませんよ」

「は、はあ……」


 クラウス様の形相に、本気で心配してくださっていることがわかる。

 けれど、ソフィアの件では脅されていることを考えると、クラウス様の真意が読み取れず、どう受け取ったらいいのかわからない。


(いったい何を考えていらっしゃるのかしら……?)


「ご心配いただき、ありがとうございます。ソフィアはあの日以来、部屋に閉じこもってしまって、出てきませんの。なので、特に問題ありませんわ」

「そうでしたか。大人しくされているようでしたら、何よりです。では……」


 ソフィアの状況を聞いたクラウス様は、心底ホッとしたような表情を見せてから、小首を傾げる。

 その表情がまたきょとんとしていて……。


(イケメンの不意打ちな表情ってどうしてこうも可愛いのかしら……!! 狡い!!)


 なんでも答えてしまいそうで怖くなる。


「今回は領地のことで父に呼ばれ、子爵領に行っていたのです」

「子爵領に……それにしてはお戻りが早いのでは?」


「急を要しましたので、神殿の転移陣を使用しましたので、早く戻ってくることができました」

「そうだったのですね。では、まだお疲れでしょう。どうしましょうかね……」


 クラウス様は私を気遣ってくださっているのか、急に言葉を濁す。

 そんなふうにされてしまうと気になってしまう。


「え? 何かあるのですか?」

「……ええ。カトリーナ嬢が戻られて、ようやく生徒会が揃ったので、今日の放課後に生徒会の歓迎会を催そうかと思っていたのですが……」


(そういえば、入学式直後で一年生が入ったばかりだものね……というか、私のせいで一年生の歓迎会ができてないってこと!? 大問題じゃない!!)


「大丈夫です! それでなくても無断で生徒会をお休みしてしまいましたし、皆様にも早くお会いしたいですから、問題ありません」

「そうですか。ありがとうございます。では、今日の放課後、生徒会室に来てください」


 今日で問題ない旨を伝えると、クラウス様は爽やかに微笑んで、私の手を取った。

 クラスメイトたちの声と視線が非常に煩いのに、クラウス様には全く気にならないようだ。


(ちょ、ちょっと、て、手……!!!!)


「しょ、承知、いたしました」


 バーバラ嬢の視線が痛くて、教室の後方を見る勇気がない。

 そうして、私はクラウス様にエスコートされるまま、自分の席に着席して授業の開始を待った。





 そして、放課後。

 あの後、バーバラ様たちからの視線はなぜか生温かいものに変わり、特に前のように詰め寄られることはなかった。

 きっと私が可哀想な子だという設定を思い出したのだろう。


(クラウス様の優しさ……か。あんなに本気で心配されたら勘違いしそうになっちゃう。けど……ありえないわよね。だって、脅されたりもしたし……)


 私は一人でとぼとぼと生徒会室に向かいながら、これまでのクラウス様の言動で、頭の中がとっ散らかっていた。


「ああもう、深く考えちゃいけない気がしてきたわ……」

「何を考えちゃいけないんだ?」

「ひゃっ!」


 不意に後ろから、声を掛けられ、思わず声と体が跳ねる。


「……ああ、驚かせてしまったようだな。すまない」


 振り向くとそこには王太子殿下の姿があった。


「お、王太子殿下!? し、失礼しました。王太子殿下にご挨拶申し上げます」

「いや、堅苦しいのは無しね。で、何を深く考えちゃいけないんだ?」

「あ、いえ……」


「何? 言いにくいことなのか?」

「殿下のお耳に入れるようなことでは……」


「ええ〜気になるじゃん! ほらほら!」


 相変わらずの人懐っこさと強引さで、何も言わないわけにはいかない空気に持っていかれる。


「……いえ、その……クラウス様がよくわからないのです」

「クラウス? あんなわかりやすいのに!?」

「ええ!? わかりやすいですか!?」


 殿下の反応に思わず驚きを隠せなくなってしまう。


「うん。あ、でも、カトリーナ嬢の前ではいろいろ取り繕ってるか……」


(やっぱり私の前だと殿下から見てもおかしいのね……まあ、理由が理由だし仕方ないんでしょうけど)


「やはりそうですよね。身分も違いますし……」

「ん? 何か勘違いしてないか?」

「勘違い? どういうことですか?」

「クラウスはカトリーナ嬢、君のことが好きだぞ?」


「……え? まさか、そんなわけないじゃないですか! 私みたいな地味でなんの取り柄もない身分の低いモブ女に、クラウス様がそんな想いを抱くわけがありませんわ」

「あ、いや、だが……」


「それに、クラウス様のこれまでの言動からそんなふうには思えませんし、私を好きだなんて……いくら殿下でもクラウス様に失礼ですわ」

「え!? そんなふうには思えないって……クラウス、今まで君にどんな言動をしてたんだ!?」

「そ、それは……詳しくは言えませんが、普通、好きな女性にはしないことをされていますわ」

「あいつはいったい君に何を……」


 殿下は何を想像しているのか、愕然とした様子で私を見た。


(ダメだわ。このまま話し続けたら話しちゃいけないことまで話してしまいそう。なんとか話題を変えないと!)


「と、とにかく! クラウス様が私を好きだなんてあり得ないのです! それに身分的にも筆頭公爵家の嫡男と子爵家の令嬢などあり得ませんわ。それより、殿下も生徒会に入られたんですよね?」


「本当なのになあ……。そうだ。君もようやく生徒会入りに頷いてくれたのだろう?」


 殿下は拗ねたようにつぶやきつつも、話題を変えるのに乗ってくれた。


「ようやくってほどでもありませんが……はい」

「エリーもとても喜んでいた。今日もいそいそと準備に励んでいたよ」

「エリザベス様が! エリザベス様も迎えられる側ですのに……申し訳ありませんわ」


 歓迎会なのだから、基本的には一年生を迎えるための会なのは当然で、二年生から入る私のために、一年生で尚且つ筆頭公爵家のご令嬢な上、王太子殿下の婚約者でもあるエリザベス様に用意していただくなんて、畏れ多いにもほどがある。


(ああ、なんで気づかなかったんだろう……穴があったら入りたい!)


「いやいや、気にしなくて良い。エリーがやりたくてやっているのだから。まあ、あまり待たせても悪いな。急ごうか」

「はい」


 こうして私は殿下とともに生徒会室へと急いだ。


お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。