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◇想いの丈(クラウス視点)②

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。


今回はクラウス視点過去回想の続きからです。

 王宮の茶会から少しした頃、ベイリー子爵領で暑さや悪天候に強い穀物の栽培に成功したという話が、宰相である父の元に持ち込まれた。

 なんでも穀物の品種改良を王宮付き植物学者のフォーレル博士と行ったという。

 その上、領地の統治改革まで始めたらしい。

 品種改良の詳細と共に持ち込まれた統治改革案に、父上は青い瞳を嬉しそうに輝かせていた。


 元々ベイリー子爵家は、浪費家の前当主夫妻とさらにその前当主にそっくりな現当主夫妻によって、没落の一途を辿っていた。

 にもかかわらず、品種改良に統治改革……私の中で、茶会の日の馬車降り場のやり取りが思い出される。


(きっとあの少女が関わっているに違いない……!)


 気になった私は、ベイリー子爵家に公爵家の諜報部隊を送り込み、定期的に調査させることにした。

 父上も興味を持っていたらしく、調査内容を共有するという条件のみで、思ったより簡単に許可が下りた。


 調査でわかったことは、カトリーナ嬢が非常に優秀な令嬢で、どこから得たのか両親すらわからない幅広い知識を持っていること。

 カトリーナ嬢の知識に惹かれ、フォーレル博士は王宮を辞して、ベイリー子爵領に移り住んでしまうほど、その知識が魅力的だということ。

 その上、カトリーナ嬢は優秀なだけでなく、身分を振り翳したりせず、常に領民に寄り添い、彼らに慕われているということだった。


 調べていくほどに、驚かされ、そして次は何をするのかと、楽しみになっていた。

 どうやらこの頃には私自身が、直接話したこともない彼女に、すっかり惹かれていたのだ。


『いつか彼女に会って、いろんなことを話してみたい……!』


 気がつけばそんな想いを抱いていた。

 そうしていつの間にやら彼女のことを『理想の君』と憧れを込めて呼ぶようになり、妹のエリザベスにもこれからの令嬢はこうあるべきと、熱く教えるようになった。

 エリザベスまでもがカトリーナ嬢を慕うようになったのは想定外だったけれど、そのおかげでエリザベスは知的な淑女に育ち、王太子妃に内定した。



 それからまた数年の時が経ち、満を持して学園で出会いを果たしたわけなのだが……一年次は全くと言っていいほど何もなかった。

 筆頭公爵家嫡男と子爵令嬢では当然と言えば当然だ。

 その上、カトリーナ嬢はなぜか頭角を表さないよう、なるべく目立たないように過ごしていたように思う。

 身分差を噛み締めた一年だった。


 そして、進級試験のあの日。

 入試順に座ったあの席で、二位だったラザルア侯爵令息が魔法学院へ転校してくれたおかげで、カトリーナ嬢と隣の席になった。

 初めてまともに話したカトリーナ嬢は、なぜか困ったように微笑んでいたけれど、その微笑みさえも嬉しくてドキドキして……。

 試験中、山が当たったのか突然嬉しそうに小声を上げて恥ずかしそうにする彼女もとても可愛くて、調査資料では見えなかった素のカトリーナ嬢をようやく見れたようで、胸がいっぱいになってしまった。


 その二週間後の試験結果の発表日。

 別にカトリーナ嬢が隣で舞い上がったせいで成績を落としたわけではないけれど、満点近い点数を叩き出した彼女に私は及ばなかった。

 首位になった彼女を祝おうとオスカーと待っていたら、あの妹とでくわしたのだ。


 どうやらカトリーナ嬢がこれまで目立たないように生活してきた理由は、妹にあるのではないか。

 そんなふうに思えて仕方がなかった。

 あの妹がオスカーを狙うことにも関係しているのかもしれない。


「なんとかして、カトリーナ嬢とベイリー子爵家に影響が及ばないようにしなくては……陞爵の話が流れてしまう!」


 高位貴族と下位貴族の身分差が、陞爵によって同じ高位貴族になれるのだ。

 公爵家と伯爵家であれば、話が大きく変わってくる。

 父上からベイリー子爵家に陞爵の話が出ていると聞き、幼い頃から諦めなければと思い続けた気持ちに、一筋の光が差した瞬間だった。


 それをあの妹は、不意にしようとしている。


「そんなこと、許せるはずがないでしょう! 何よりカトリーナ嬢のこれまでの苦労を水泡に帰そうなどと……絶対に許しません」


 カトリーナ嬢には申し訳ないと思いつつも、彼女を脅し、監視下に置くことで、なんらかの危機に面した際に、私が手助けできるように手配することができた。


 先日の生徒会室への侵入未遂はまさにこれが功を奏したわけで……

 あれでおとなしくなってくれると良いのですが。


 その一方で、カトリーナ嬢は家から呼び出しを受け、子爵領での絶滅種の希少な薬草の発見に、光属性魔法の発動。


「本当にカトリーナ嬢には驚かされてばかりですね……」


 けれど、光属性魔法と聞いてしまうと、悠長になどしていられない。

 身分などもはや関係なく、国や神殿に取り込まれてしまう可能性が出てくるからだ。


 一刻も早くカトリーナ嬢を囲い込んでしまわなければ、手の届かないところに行ってしまう!


 なんとか彼女に怖がられないよう、嫌われないよう、細心の注意を払って、これから進めていかなければならない。


「はあ……想い人が有能すぎるのも困りものです」


 大きなため息をつきながらも、どこか気持ちが昂っている。

 身分など関係なく、彼女に手を伸ばせることに喜びを噛み締めながら、私はいつ戻るかわからない彼女のために、これからの作戦を練り直し始めた。

お読みいただきありがとうございます。

クラウスがこれまで動いていた理由でした。

執着イケメンが好きなので、こんな感じになってしまいました。

彼側から見た恋愛も楽しんでいただけますと幸いです。


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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