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◇想いの丈(クラウス視点)①

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 カトリーナ嬢がベイリー子爵家からの緊急呼び出しを受け、生徒会を初日から欠席した。

 彼女がくると伝えていたせいで、エリザベスは大騒ぎだったが……。


 しかも、彼女が帰った後、問題児であるあの妹が学園に姿を現した。

 学園は欠席していたと聞いていたのに、どうやらカトリーナ嬢がいなくなった隙を狙ってやってきたらしい。

 そして予想通り、オスカーを狙って生徒会室へとやってきた。


 ちょうどカトリーナ嬢との約束もあり、学園内にシェラード公爵家の諜報部隊を放っていたので、事前に察知することができた。


「まさか服従の魔道具を持ち出してくるとは思わなかったが……」


 あの魔道具は、一令嬢が簡単に買える金額ではない上、あまり治安の良い場所には売っているものではない。

 ベイリー子爵夫人は宝石好きと聞いたことがある。

 もしかしたら、安価で宝石を手に入れるために裏路地の商店を利用していて、あの妹が付き添ったのかもしれない。

 まあでも、ひとまず大事になる前に処理できたことに安堵した。


 実際は、私にあの魔道具を使用した時点で重罪だが、従属除けのおかげで特に実害はありませんでしたし、何よりここであの妹が罪人になってしまったら、ベイリー子爵家に影響が出てしまう。

 それは私が望むところではない。


 懸命に頑張るカトリーナ嬢の足を引っ張るつもりなどさらさらないのだから。


「それに……領地でいったい何があったんでしょうね……?」


 あの妹の魔道具を取り上げ尋問したところ、どうやらカトリーナ嬢は領地に戻っていることがわかった。

 けれど、あの妹はその理由さえ知らなかった。


「カトリーナ嬢の身に危険がないと良いのですが……」


 気になった私は、いつものように公爵家の諜報部隊を動かすことにした。



 そしてその夜、私は諜報部隊から思わぬ話を聞くこととなった。


「ベイリー子爵領で絶滅種の大発生だと!? しかも、カトリーナ嬢が魔法で鎮めたと……?」

「はい。そのように見受けられました。ただ……」

「どうした?」

「私はあまり魔法に詳しくないのですが、あの光り方は土属性ではないように思われまして……光属性の輝きに似ておりました」


 部下の言葉に思わず息を呑む。


(出会った頃から稀有な才能をいくつも持っていると思っていたが、もし光属性までとなると……)


「これはうかうかしていられませんね……」


 うっかり漏れた言葉にも、部下は微動だにしない。

 指示を待つようにこちらを見上げている。


「報告ご苦労様です。引き続き調査をお願いします」

「承知いたしました」





 彼女に出会ったのは、今から十年ほど前……王宮での茶会の日だった。

 高位貴族である私は、すでに何度も王宮の茶会に招かれていて、身分に釣られた令嬢たちに囲まれ、当時すでにうんざりしていた。


 馬車から降り、ため息を吐きながら会場に向かうことを躊躇っていると、反対側の馬車降り場から、声高に騒ぐ令嬢の声が聞こえてきた。

 またどこかの令嬢が我儘を言って騒いでいるのかと、その場を離れようとした時、面白いやり取りが始まった。


「お父様! どうしてこんな豪華なドレスを仕立てたのです!? ここまで華美にする必要がどこにありますの!?」

「え!? いや、カトリーナ? お前の王宮デビューなんだから、豪華なものを仕立てるのは当たり前じゃないか」


 赤い髪の小さな令嬢がふくよかな父親にすごい剣幕で捲し立てていた。

 娘の王宮デビューを華々しくしてやりたい親心だろうに……と思う反面、娘のほうが華美に着飾りたいと我儘を言うのが普通なのに、この令嬢がなぜこんなに怒っているのか、その理由が知りたくなった。


 さらに様子を伺うと、令嬢らしからぬ言葉が飛び出した。


「お父様、このドレスを仕立てるお金はどこから出ていると思っているのです?」

「そ、それは、我が領の領民の……」


「血税ですわ!」

「け、血税って……カトリーナ、意味がわかっているのかい?」


「ええ、もちろんです。領民たちが毎日農地を耕したり商いをしたりして得たお金から、徴収された税金ですわ」


 カトリーナと呼ばれた令嬢は、意志の強そうな緑の瞳で、父親をまっすぐ見据え、言い切った。


 私が見たことがないということは、下位貴族のはずで、さらに自分とあまり歳の変わらない令嬢。

 そんな令嬢の口から出た言葉に衝撃を受けたと同時に、このカトリーナと呼ばれた少女に、強い興味を抱いた。

 

 結局茶会で直接話をすることはなかったけれど、帰りの馬車で、彼女がベイリー子爵家の令嬢であることを知ると同時に、子爵令嬢では我が家に釣り合わないと聞かされた。


 それまで家格の釣り合う者と付き合うことが当たり前だと思っていたのに、なぜか妙に胸が騒いだ……。

お読みいただきありがとうございます。

過去回想の途中なのですが、長いので分けさせていただきました。


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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