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植物博士

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 翌朝、早速、鉢植えとプランターの製造を依頼するため、領内の工房を訪れた。

 初対面にもかかわらず、他の領民から私の話を聞いていたという工房長は快く招き入れ、詳しい内容も聞かずに二つ返事で引き受けてくれた。


(もう、みんなどんな話をしているのよ〜〜!!)


 面映い気持ちになりながらも、なんだかちょっと嬉しい。


 紙にそれぞれの形と構造を書き出したものを見せながら説明をしていくと、工房長は熱心に聞き入ってくれて、最後には「任せときな!」と胸を叩いた。

 なんとも心強い。

 植木鉢は既に近いものがあるとのことで、少し加工して昼過ぎにはいくつか届けてもらえることになった。


「さすがお嬢様ですね!」


 一緒についてきてくれたニナが満足げに口を開く。


「みんなが柔軟に受け入れてくれたおかげよ。感謝しなくちゃ」


 実際、前世の記憶を生かそうとした当初は私が幼いこともあり、お父様をはじめ、領民たちも半信半疑だった。

 中には反対してお父様に抗議した領民もいたくらいだった。

 けれど、お父様が私を信じ、そんなお父様を領民たちが信じてくれたから今がある。

 それはいつの間にか、私への直接の信頼につながっているのだ。

 そう思うと、もっともっと領地を、領民たちの生活を豊かにしたくなる。


「さあ、領主館に戻ったら、次はメントの研究よ。薬以外の利用方法について、詳しく調べるわ。研究用のサンプルの手配は終わっているかしら?」

「はい。昨日お嬢様が依頼したとおり、ハンスが人を集めて回収したものの中から、欠損のないものをいくつか館に運ばせてあります」


 さすがハンスとニナね。

 二人とも細かく指示しなくても、先を読んで私が何を欲しがるか理解している。


「そう。なら大丈夫そうね。あと博士も呼んである?」

「すでに領主館でお待ちです」


「……え!? では、急がないと!」

「え!? あの、お嬢様!?」

「目上の人を待たせるなんて、失礼だわ! さぁ、ニナ、急ぐわよ!」

「は、はい!」


 私とニナは駆け足気味に馬車に戻り、急ぎ領主館へと戻った。





「フォーレル博士、お待たせして申し訳ありません」


 応接室へ入るなり頭を下げると、老人の穏やかな笑い声が響き渡った。


「ふぉっふぉっふぉ。別に構わんよ。お前さんとこのお茶は美味しいからのぉ。いくらでも待てるぞ」

「まあ、博士ったら」


 うちで扱っている茶葉は、数年前から庭で栽培しているものだ。

 魔法を使うので、領地で栽培するのは難しいけれど、庭で作る分には問題ない。

 前世で好きだった日本茶がどうしても飲みたくて、博士に協力してもらって庭の一区画でひっそり栽培している。


 博士は元は王宮に仕える有名な植物学者だったのだけれど、穀物の品種改良のヒントを求め手紙を送ったのを機に、仲良くなった。

 以来、ベイリー子爵領に移り住み、穀物の品種改良をはじめ、様々な植物の研究を行っている。


「それでは博士、早速なのですが、鑑定いただきたい植物がありまして……」

「メントじゃろ?」

「え?」


「お前さんを待ってる間にひと通り調べさせてもらったんじゃ。なんせあの『メント』じゃからのぉ! 着いてすぐ庭に案内してもらって、鑑定と最低限の分析は終わっておるぞ。やはり実に素晴らしい植物じゃ!! 薬草としてはもちろん、これは食用にもできそうじゃし、抗菌効果に殺菌効果、人体に至ってはリラックス効果なんかもあってのぉ! まさに万能植物じゃ!」


 捲し立てる博士のすごいテンションに、押されてしまう。


「……ま、まさか、すでに鑑定や分析を終えてくださっていたなんて……ありがとうございます!」


「いやいや、礼を言うのはわしのほうじゃ。まさか実物をこの目で見られるとは思っとらんかったからのぉ。興奮してしまって、待ちきれなんだわ。今ようやく落ち着いてお茶をしとったところじゃ」


 実に満足そうにお茶を啜る博士が机にある書類を引き寄せ、私に渡してくれた。

 そこに書かれた鑑定、解析結果に思わず頬が緩む。


(これは、まさにミント! あ、いえ、この刺激の強さはハッカ!?)


 それなら確かに防虫どころか殺菌効果も見込めるのも頷ける。


「博士! ご相談なのですが……このメントを栽培できる環境が整えば、まず薬草として販売・流通を考えているのですが、次に広めるとしたら何が適当でしょうか?」

「そうじゃな……」


 博士はメントの資料をめくりながら、唸り始める。


(これだけ用途が多いとなかなか難しいわよね……日本だとまずは飴とかかしら? それても香料?)


 一緒になって悩んでいると、唐突に博士が顔を上げた。


「まずは茶とか菓子かのぉ……」

「……食用ですか?」


「そうじゃ。薬草としての流通から始めるのであれば、その安全性も含めて、まずは『食べ物』として認識させるのが良かろう」

「なるほど。確かにそのほうが薬の安全性も広められて良いですね!」


「まあ、茶だけじゃと薬の印象が強いからのぉ、甘くしたりしてこの爽快感だけ残すようにできたら人気が出そうじゃと思わんか?」

「この爽快感……? 博士、まさか食べたんですか!?」

「ふぉっふぉっふぉ。苦味や刺激はあったが、口や鼻がスッキリして実に良い葉っぱじゃった!」


 博士は悪戯っ子のようになんとも嬉しそうな笑顔を向けた。


「博士……。ちゃんと栽培したものじゃないんですから、何かあったらどうするんですか」

「これくらい大丈夫じゃ。それよりメント茶を作るなら、わしも喜んで協力するぞ!」

「ありがとうございます!! では、早速試作に取り掛かりましょう!」


 それから研究室へと移動した私たちは、庭のメントを持って来させ、メント茶作りに没頭した。



 ちなみにその間、お父様は……

 一生懸命土属性魔法を駆使して、メントを抜いた土地の形状を元に戻していたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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