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生徒会の利点

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

「え、な、なんでしょう……?」


 笑顔なのに目が笑っていない上に、なぜか冷気まで出ていて、何を考えているのかわからない。


(それにしてもなぜこの状態に!? え!? しかも、その上、怒っていらっしゃるのはなぜ!?)


 イケメンの顔が近いとか、距離感がおかしいとか言ってる場合じゃない。

 その張り詰めた空気に、笑顔で尋問されているような気持ちになる。


(生徒会のこと以外で私に聞きたいこと……ソフィアが迷惑をかけたこと!? それとも私が知らない間にソフィアが殿下やエリザベス様に何かやらかした!?)


 可能であれば、今すぐここから逃げ出してしまいたい衝動に駆られる。

 けれど、目の前のサファイアの瞳がそれを許してくれない。


「あなたの妹君のことなのですが……」


(ああ、やっぱりーー!!)


 思えば最初の合格発表の時からソフィアの不敬は始まっていたのだ。

 王太子殿下を名前で呼んだり、講堂でソフィアから呼びかけたり、さらに昨日は殿下の居るAクラスに突撃しようとした。

 やらかしていないというほうがおかしい。

 どのことについて言われるのか、それとも全体を通してなのか、ハラハラしながらクラウス様の言葉の続きを待った。


「率直にお伺いします。あなたの妹君は殿下を狙っているのですか?」


(ええ!? なんでソフィアが殿下を狙っていることがバレてるの!? もしかしてクラウス様も転生者で乙女ゲームか『悪笑み』を知ってたりする!?)


 考えていたことではあるものの、意表を突く形で聞かれ、脳内がパニックになる。

 落ち着いて回答しなければ……。

 もしクラウス様が転生者じゃない場合、取り返しのつかないことになってしまう。


「あ、あの、クラウス様、狙っているというのは……」

「隠し立てしても良いことはありませんよ。……狙っている、つまり殿下を害そうとしているのでしょう? それであなたは必死に彼女を止めている、違いますか?」

「ええ!?」


(ちょっと、まさかの方向に勘違いさせちゃってるーーー!?)


 確かに殿下の側近であるクラウス様からすると、殿下の側に行こうとあれだけ騒ぎを起こしていたら、そう思うのも仕方ない。

 きっとクラウス様のことだから、ソフィアが渡り廊下に行こうとしていた真意にも気づいているでしょうし。


 昨日ソフィアは廊下で大声で「殿下を攻略できない」と叫んでいた。

 誰かからその話がクラウス様や殿下の耳に入っていてもおかしくない。

 これまでの行動とあの発言で、「殿下を害そうと狙っている」と思われてしまったのだろう。


(でもこれ、覆せなかったら、王太子殺害未遂とかで、ソフィアが逮捕されるのでは!? 下手したら、我が家も全員同罪とみなされて、ベイリー子爵家はお取り潰し!? そんなの絶対に嫌よ~~~~~!!!! なんとかしなくちゃ!!)


 焦って黙り込んでいる私の様子に、クラウス様は確信めいた表情でこちらをじっと見つめている。

 次にどう責めるか、考えているのだろう。

 もうこうなったら正直に全て話してしまったほうが良いのではないかと思い始めたところで、クラウス様が再び口を開いた。


「別に、責めているわけではありませんよ。あなたは殿下を害そうとする彼女を止めているようですから、事情を伺えればと思っただけです」

「事情、ですか……」


(やっぱり正直に話すべきかなあ……だけど、「ここが乙女ゲームの世界だと勘違いして、殿下と結ばれるために狙っているんです!」なんて話したところで、明らかにヤバイ奴よね……)


 その上、王太子殿下の婚約者は筆頭公爵家のご令嬢で、クラウス様の妹君。

 つまり彼にとって私は、大切な妹の未来を邪魔しようとするおかしな女。

 正直に言ったところで、信用してもらえるのか、我が家は守られるのか、かなり微妙なところだ。


(何かもっともらしい理由ってないかなあ……)


 答えが出ないまま、顔を上げると、クラウス様の口角が少し上がった。


「では、取引をしましょうか。あなたの妹が殿下を狙っていたことを黙っている代わりに、カトリーナ嬢、あなたには生徒会に加入してもらいます」

「ええ!? そんな!」


「別に拒否しても構いませんよ? ただ、その場合、あなたの妹の身柄は近衛騎士団に拘束され、もちろん、ベイリー子爵家もその責を負うことになるでしょうね。たとえ疑いであっても相手は王太子ですから、当然ですね」

「そ、それは……」


(こんなの私に選択肢なんてないじゃない!! というか、思った以上にヤバイ状況よね、これ……)


 不敵な笑みを浮かべるクラウス様の表情からは何を考えているのか読み取ることができない。

 さすが王太子殿下の側近……所詮は学生だと思って侮っていたら、まさかこんなことになるなんて。

 これはもう、おとなしく生徒会に入る他ないかもしれない。


(というか、むしろ生徒会に入るだけでそれを黙認してもらえるなら、チャンスなのでは!?)


「……わかりました。生徒会に加入します」


「ありがとうございます。無理に吐かせなくて済みそうで良かったです。ただ、相手が相手ですので、事情はある程度お伺いしたいところですが……」


「……」


 クラウス様の探るような視線に怯みそうになるけれど、事情を話してしまっては、条件を飲んだ意味がない。

 思わずクラウス様を睨むように見てしまう。

 すると、これまでとは異なり、まるで悪戯っ子のような声である提案をしてきた。


「まあとにかく、生徒会に入ってくださるのであれば、妹君の監視や制止にもご協力できますし、あなた自身も監視をし易くなると思いますよ」


「それはどういう意味ですか……?」


「入学されたばかりではありますが、今年度から殿下にも生徒会に入ってもらうことになりました。ですので、放課後、殿下はだいたい生徒会室にいることになります。ちなみに、エリザベスも生徒会に入ることが決まっています」


(え? 『悪笑み』の中のエリザベスは生徒会に入っていなかった。代わりにヒロインであるソフィアが入って、殿下と常に一緒にいたのに……やっぱり物語から大きく変わってきている? それとも乙女ゲームにはそういうルートがあるのかしら……?)


 殿下がいるのであれば、ソフィアは確実に生徒会に入ろうと狙ってくるはず。

 むしろ「なんで私が生徒会役員に選ばれないのよ! そんなのありえないわ!」とかまた叫び出しそうな予感しかしない。


「あの……そんなこと、私に教えてしまって良いのですか? というか、殿下を狙っているかもしれない怪しい身内がいる私を、生徒会に入れてしまって大丈夫なのですか……?」


 普通に考えたら明らかにおかしい。

 けれど、なぜか目の前のクラウス様は、首を傾げながら美しい顔で笑っている。


「それはもちろん、怪しいからこそ手元に置いて、私が監視していたほうがいいと判断したからに決まっているではないですか。昨日のように、妹君が暴走した場合は、共に制止することもできますし。事情がわからないのですから、仕方ありませんよね?」


 美しくも冷ややかな笑顔を向けられて、思わずその場にひれ伏して全部話したくなってしまうのはなぜだろう。

 いつか話せる時が来るかもしれないけれど、それはきっと今ではない。

 彼が本当に信頼できると思えるまでは、生徒会で頑張るしかない。


「……と、とにかく、生徒会に入ったのですから、できれば詮索しないでいただけると有り難いです。それと、一つだけはっきり言えることは、妹は殿下の命を狙っているわけではないということです。そこだけは信じてください……!」


(ソフィアのことだから本当に殿下の命は狙っていないと思うんだけど……あの性格だし、ぶっちゃけエリザベス様の命のほうが危ない気がする。でも、正直にそれを伝えたら、それこそ我が家の危機よね!?)


 エリザベス様の件は伏せつつも、とにかく今はできる限り誠実に話せることを話していくしかない。


「殿下の命は狙っていないのですね……それを聞けただけでも少し安心しました。ありがとうございます。とはいえ、あの妹君は別の意味でも危険そうなので、今後は生徒会としても制止するのに協力させていただこうと思います」


「!? ……ありがとうございます!」


 まさかの『生徒会の協力』を取り付けた後、今後の生徒会のスケジュールを聞き、私とクラウス様は教室へと戻った。


お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思っていただけましたなら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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