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モブの葛藤②

評価やブックマーク、ありがとうございます!

楽しんでいただけますと幸いです。

 私はソフィアの腕を両手でしっかりと掴み、渾身の力を込めて引きずり始めた。

 そう、つまりは力づくだ。


(体格差的には私のほうが少し大きいし、力もあるのよ。伊達に領地で領民たちに農業を教えてないわ!)


 普段は淑女らしくあるために、できるだけ女性らしく非力に振る舞っているけど、今はそんなことを言っている場合ではない。

 私の全力に、ソフィアは抵抗しようにも完全に力負けしてしまっている。


(なんだかんだでソフィアってヒロイン仕様だから、華奢で軽いのよね〜)


 そうして抵抗しまくるソフィアを一年生棟の裏まで連れてきた。

 呆気に取られたソフィアの表情に、じわじわと悔しさが滲み出す。


「なんで……なんでわたしの邪魔ばっかりするのよ……! お姉様に関係ないじゃない!!」


「関係あるに決まっているじゃないの! ソフィア、あなたの行動には必ずベイリー子爵家の名前が付いてまわるのよ。あなたが何かやれば、ベイリー子爵家が責任を取ることになるわ。それでも関係がないと言うの?」


「関係ないわよ! わたしはこの物語のヒロインなんだもの! この物語、いえ、この世界は、わたしが王子様と結ばれて幸せになるためにあるのよ!! そんな、子爵家が責任を取るような何かが起きるわけないじゃない! それに起きたとしても、わたしが王妃になれば、全て問題無くなるわ!!」


 あまりの言い分に、頭が痛くなってくる。

 いくらなんでもお花畑がすぎる。


「…………あなたが何を言っているのか、私にはよくわからないけれど、ベイリー子爵家の名に泥を塗るようなことは絶対にやめてちょうだい。王太子殿下や高位貴族の方々に迷惑をかけることも絶対にダメよ」


「迷惑なんかかけるわけないじゃない。わたしはヒロインで、オスカー様の運命の乙女なんだから」


 思った通り、全然話が通じない。


(運命の乙女ねぇ。乙女ゲームのほうの設定だとそんな感じなのね……)


 とはいえ、そんな設定は、今の私には関係のないものだ。


「いい加減、物語のヒロインごっこをするのはおやめなさい。学校に通うようになれば少しはまともになるかと思っていましたが……」

「な、なによ……!」


 私はため息を一気に吐いてから、ソフィアの顔をじっと見つめると、真顔だったからか、急にたじろいだ。


「いいこと? 今うちはとても大事な時期なの。こんなことが続くようなら、学園を退学させることも視野に入れることになるわ。お父様にもそのように伝えておきます」 

「そ、そんなの横暴すぎるわ!!」


 私が必死に育ててきた子爵家を、こんな話のわからないバカな義妹に、無茶苦茶にされてはたまったものではない。

 ここまではなんとか陞爵のためにと堪えて来たけれど、子爵位自体が危うくなるのでは元も子もない。


「横暴でもなんでもないわ。あなたはそれだけのことをしようとしているのよ。王太子殿下に近づくことも、高位貴族である公爵令嬢にこちらから話しかけることも、ましてや突撃しようとするなんてあり得ないわ! 我が家は子爵家、下位貴族なの。無闇矢鱈、誰にでも話しかけられる身分ではないのよ!」


「そんな身分の差なんて、それこそヒロインであるわたしには関係ないわ! わたしは主人公で、すべてにおいて許される身なんだから!」


「すべてにおいて許される……? 何を言ってるの。あなたさっき教室の結界魔法に弾かれていたじゃないの」

「そ、そうよ、あれはいったいなんなのよ!? あんなの知らないわよ!!」


「ソフィア……あなたガイダンスで何を聞いていたの? 説明されているはずよ? この学園は関係者以外が他の教室に入れないよう、それぞれの教室に結界魔法がかけられているのよ。あなたはAクラスじゃないから弾かれたのね」


「なっ! そんな設定あるなんて知らないわ!!」


(私も学園に入って驚いたのよね。小説にも書かれていなかったし、乙女ゲームでもヒロインがAクラスだから説明の必要がなかったんだろうな……)


 弾かれたのはヒロインだからではなく、知らない設定が増えているからだと言いたげなソフィアの必死な形相に、またため息が出る。


「……王族や貴族の子女が通うのだから、当然じゃないの。入試の時に魔力測定があったでしょ? あの時の魔力で各クラスに登録されているから、本人と先生以外は弾かれるのよ」


「そ、そんな……! それじゃあ、教室のイベントが全部できないってこと……? ……オスカールートのイベント、ほぼ教室だし、全滅じゃ……そんな、嘘でしょ……」


 愕然とした様子でソフィアが項垂れる。

 おとなしくなったので、私はそのままソフィアの腕を引き、馬車乗り場まで連れて行くことにした。


 ソフィアの帰り時間を計算して待機させていた使用人に彼女を引き渡し、屋敷まで連れ帰ってもらう。

 荷物については、先生に伝えておけば、後で私の迎えの使用人に渡してくれるだろう。

 ひとまずなんとか今日を乗り越えた。


(明日以降、どうしたものか……)


 こめかみを抑えながら、私はソフィアを乗せた馬車が校舎を出るのを見送った。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思っていただけましたなら、ブックマーク登録や下の☆☆☆☆☆にて評価していただけると嬉しいです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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