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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:93

 数日経って、熱も下がって久しぶりに出勤すると、いつものように店長がPCを前に席でコーヒーを飲んでいた。

のだが、いつにも増して頬はゲッソリとしていて、目の下の隈も酷い。

私が休んでしまったせいで、ずいぶん負担を掛けてしまったのだろう。

「店長、ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。今日からまた、しっかり働きますので。」

謝りながら、ちょっとした菓子折りを差し出すと、店長は手のひらを見せて拒否してきた。

「いやいや、そんなに気にしなくっても良いって。元々、人数足りない中回してたのが悪いんだし、本部の応援やタイミーさんにも来てもらってたから。」

そう言いながら店長は笑って断るのだが、やはり顔色は悪く、疲れているように見える。

責任感が強いし、気配りも出来る良い上司なのだが、背負い込み過ぎるのは端から見てると心配で。

「でも、顔色も悪いし、休んでなかったんじゃないですか?無理させてしまってすみません...。」

私がまた謝っていると、店長は慌てて両手を左右に振り出す。

「ここのところ、遅くまで映画見てたりして寝不足なだけだから大丈夫だよ。昨日はシフト通り休みだったし、これは自己責任だから気にしないで。」

人騒がせな店長だった。

熱で寝込んでいた時の私よりも、よっぽど具合が悪そうな顔してるのに。


 久しぶりのバイトは少し身体が重いような気もしたが、忙しくなってくるとだんだん身体も軽くなってくる。

ピークの時間帯はお客さんもけっこう入っていて、次々にオーダーが飛んで忙しなくホールを駆け回った。

今日のキッチンは店長と田辺さんがいたので、先輩と二人でホールを回していたのだが、満席になるとさすがに厳しい。

合間合間で店長もホールに出てきて、会計を代わってくれたりしれくれて、なんとか一日の営業が終わっていく。

店を閉め、最後のテーブルも片付け終わると、キッチンの奥で田辺さんは魂が抜けたように動かなくなっていた。

「田辺さんも体調悪いんですか?」

私が声を掛けると、ふにゃふにゃと身体を揺らしながら返事を返してきた。

「いやー、体調というか収支は良かったんだけどねぇ。調子に乗ってキャバクラ行ったら、高いボトル入れちゃって月末まであと1500円で生活しないと...。」

まだ、給料日までは十日ある。

いつもと違って、四桁あるだけマシな方な気はするが、こっちはこっちで不摂生の塊だった。

そうして、閉店後の片付けも手伝おうとすると、病み上がりだからと店長に追い出されるように帰される。

私なんかより、社員二人の方が重病人のような有様だったのだが。


 家に帰り着いて、冷蔵庫を開けるとぎっしりと食べ物が詰まっていた。

冷食やレトルトは保存が効くしと、夏帆が作ってきてくれたものを優先して食べていっていたのだが、絵里が追加で買ってきたものもまだまだ残っている。

葵が持ってきてくれた果物も、さっと洗って食べられるブドウは食べてしまったのだが、皮を剥くのが面倒で柿と梨はそのまんま。

田辺さんには悪いけど、しばらくはこれを頑張って食べていかないといけないなぁと思っていると、遥が話しかけてくる。

「今日はどれを食べます?梨はまだ持ちそうですけど、柿はそろそろ食べた方がいいんじゃないですか?」

いまいち、ぱっと見た感じだとわからないのだが、遥が言うのならそうなんだろう。

バイトでは頻繁に使っているが、家では滅多に使わないペティナイフを取り出して皮を剥いて切り分けると、蜜が詰まってゴマの浮かんだ橙色の実が光っていた。

「ばっちり完熟ですね!色も綺麗ですし、良いものをいただきましたね。」

違いはよくわからないのだが、素人目に見ても美味しそうだった。


 ねっとりと甘みが広がる柿を摘まんでいると、遥がまた話しかけてきた。

「そろそろ紅葉や銀杏もしっかり色づいているでしょうし、お出かけするには良い季節ですね。」

ここのところ、美咲の会社に行ったりはしていたが、風邪を引いていたこともあったりで、しばらくお出かけらしいお出かけは出来ていなかった。

その気になれば、別に遥一人でも行けなくはないのだろうけど、それも寂しいだろうし次の休みにでも山へ行ってみようか。

そんな話をしながら、柿を食べていたのだが、ふとある事を思い出した。

「そう言えば、水菓子って用意してあったのかな?美咲さんは何か言ってた?」

私が聞いてみると、遥の顔はみるみる曇っていく。

「えぇ...。季節が少し遅かったので、長野で作られている晩成の品種を用意したそうで。かなり大型ながらも糖度が高くて香りも良いものだったのだとか。それを使ったゼリーと、コンポートも用意していたようなのですが、時間が押して出せなかったそうで...。」

遥の口ぶりから、何が起きていたのかはだいたい想像がついた。

きっと、桃の紹介やら料理して用意したことを、延々と長文で送りつけられていたんだろう。

悪いことではないのだが、それもそれで災難だなと思いながら、別の事も聞いてみると。

「あと、風邪引いたこととかは...。」

「断りました。」

言い終わる前に返事が返ってきた。

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