うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:92
そんな話をしたりしながらも、熱もあるし、外にも出れないしで特にすることもなく、ベッドでゴロゴロとしていた。
とは言っても、意外と来客があって暇はしなかったのだが。
まずは絵里。
バイトの前後や、休みの日も甲斐甲斐しく世話してくれていた。
結局ネットスーパーを利用したのも一度切りで、後は絵里が買ってきてくれるもので間にあっていた。
もちろん買い物代は払っていたけれども。
ついでにあちこちに隠されていた荷物も持って帰ったり、ゴミに出したりしてもらっていたのだが、代わりに食器やらタオルや日用品が増えていって、かえって前よりも増えてしまったような。
次に葵。
絵里とは違って一回だけだったが、見舞いの品を持ってきてくれた。
梨や柿、ぶどうなどの季節のフルーツの詰め合わせで、化粧箱にも入った高価そうな物だった。
そして、それとは別でもう一つ。
「エナジードリンク?こっちは栄養ドリンクと、サプリ?」
さっきのちゃんとラッピングされた贈答用の品とは違って、こっちは無造作にドラッグストアの袋に詰められている。
味違いで何本かのエナジードリンクと、少しお高い栄養ドリンクに、元気が出るとは言っても少し方向性が違うようなサプリが何種類か。
「体調が悪い時はこれが効くんです。締め切り前なのに風邪引いたときなどは、この組み合わせで飲んでまして。最初に栄養ドリンクとサプリを採って、そこからエナジードリンクを飲みながら、二時間経ったらこちらの錠剤を...。」
いや、さすがにそれはカフェイン取り過ぎな気が、と思いながら聞いていると葵はさらに続ける。
「しばらく経って、喉が渇いたりお腹が空いてきたらそこで果物をキメるんです。出来れば、スイカやパイナップルがあれば良かったのですが、今の時期なら梨やぶどうも良いですね。」
そう説明されると、さっきまで高級に見えていた果物が急にジャンクフードのように見えてくる。
きっと作ってくださった農家の方も、経口補水液のような扱いを受けているだなんて想像もしていないだろう。
最後に夏帆。
これは意外だった。
昼過ぎに玄関のチャイムが鳴り、玄関を開くとそこには夏帆がいくつか袋を下げて立っていた。
「陽介くん、聞いたよぉ。インフルだって?」
連絡も無かったし、まさか来るとは思っていなかったので、びっくりしながらも招き入れると、夏帆はニコニコとしながら話していた。
「葵ちゃんと絵里ちゃんから聞いたよ。あの子たちだと心配だから、見に来ちゃった。」
まぁ、絵里は良いけど、葵は看病に向いてる感じではないし、私というよりそっちが気になってしまうのもわかる。
パタパタと、夏帆は洗面所や台所、冷蔵庫の中などをチェックしていっていた。
「けっこう大丈夫そうね。絵里ちゃんがしてくれてたのかな?僕は来なくてもよかったかも。」
そんなことを言いながら夏帆はケラケラと笑う。
案外、こういうところは絵里はしっかりしていて、2~3日なら放っておこうかと思っていたのだが、来るたびにきっちり片付けてくれていた。
「まぁまぁ、僕も土産は持ってきたから適当に食べてね。おかゆは冷凍してあるからレンジでチンして、煮物とかのおかずは冷たいままでも食べられるけど、温めた方が美味しいよ。」
そうして、いくつかのタッパーや、小分けにラップで包まれた料理を袋から取り出していく。
袋の一つは保冷バッグで、冷凍のものは保冷剤も添えられていて手慣れた感じだった。
「すごいですね。ありがとうございます。うちの母も風邪を引いた時は、生姜入りのおかゆとか作ってくれて...。」
私がそう話していると、夏帆は爆笑していた。
「そりゃそうだよ。僕だってお母さんなんだよ?子供二人に旦那を抱えてるんだから、このくらい当たり前だって。この料理もうちで食べるのを少し多めに作って、分けて持ってきただけだし。」
それでも手間や迷惑を掛けてしまったので、何かお礼をと申し出てみたのだが。
「いやいや、何か買ってきたわけでもないし、気にしなくても良いって。タッパーもうちで使ってるお古だから、返さなくても大丈夫だよ。」
夏帆が断ろうとするのだが、何か礼はしないとと引き下がっていると、それじゃあと夏帆が言う。
「娘たちも遥ちゃんの配信見てるから、何かファンサしてくれたら嬉しいかな?コメ返でも、メッセージでもなんでもいいんだけど。」
ここまで横で聞いてるだけだった遥は、話が回ってきて元気いっぱいに返事をしていた。
「もちろんです夏帆さん!微力ですが、喜んでいただけるなら私が出来ることはなんでも。」
そんな遥の様子もニコニコと眺めながら、夏帆は料理を冷蔵庫へ仕舞い、しばらく雑談すると小さな手を振って帰っていった。




