うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:94
インフルエンザも治ってからしばらく経って。
案件に関しての返事はしていたのだが、その後の進展は特になかった。
たまに遥経由で美咲の話は聞いていたが、結局どうなるのだろうかと思っていると。
「あっ、メール。」
メールを開くと、打ち合わせの日程とPDFで契約書と企画書が付いていた。
早速、企画書を見ていくと、詳細に動画の内容や撮影の段取りが書かれていて、最初に聞いていた通りに動画が出来たら声だけ入れれば良いらしい。
動画を作るにあたって、いくつか素材を提供する必要があるそうだが、これも以前に葵と夏帆に作ってもらったものをそのまま渡すだけで良さそうだ。
しかし、この企画書だけで十分内容はわかったし、こちらは大してすることも無いのでわざわざ打ち合わせをする必要はあるのだろうか。
シフト表を開いて、日程を確認していると遥もその様子を覗いてきて。
「これ佐山さんの名前で送られてきていますが、内容は姉さんが書いたようですね。」
私は言われないと気付かなかったが、そうなのだろうか?
確かに言われてみれば、今までのやり取りに比べると表現や文章の組み立てが違うような気がしなくもないような。
「それに、場所が姉さんの会社でも、制作会社の方でもなくて貸会議室になっています。おそらく、打ち合わせそのものか、その後に何か用意されているんでしょう。」
その遥の予想を聞いていると、なんだか嫌な予感がしてくる。
別に悪意や悪気があってではないのだろうが、面倒なことになりそうな。
さらにそこから数日経って、順調にチャンネル登録者も増えつつ、収益化も通って記念配信をすることになった。
元々、納品予定として作ってもらっていたのだが、新衣装や素材の差分なんかもフルに使って盛り上げようと、配信を始めていくと異常事態が起こる。
"黄泉乃ヒカリ大好き \50,000 収益化おめでとうございます!いつも応援してます!"
"黄泉乃ヒカリ大好き \50,000 秋も深まって、果物も美味しい季節ですよね。"
"黄泉乃ヒカリ大好き \50,000 そういうのも良いですよね。私も大好きです!"
"黄泉乃ヒカリ大好き \50,000 新衣装すごくかわいいです!表情も素敵ですね!"
"黄泉乃ヒカリ大好き2 \50,000 歌の練習もされてるんですか?すごく楽しみです!"
他にもスパチャは飛んではいたのだが、おそらく同一人物だろうと思われる人が次々と上限額の赤スパを爆撃してくる。
もう、どうでも良いような単文でも、全部上限額の赤スパで飛んできた。
もちろん、コメントがくるたびにちゃんと拾って返事はするのだが、遥の表情もだんだん引き攣ってきているような気がする。
配信の半分を過ぎたころには、名前の末尾に付いた数字はどんどん増えていっていて、お金はもちろんなのだがアカウントをどうやって用意しているのか。
異常な赤スパが飛び交っているのを一目見ようと来ているのか、同時接続数も今までになくどんどん伸びていっていた。
それを誰がやっているのかは、知らない人が見れば石油王でも来たのかと思うかもしれないが、その正体が誰だかはほぼ確信になっていた。
そうして、配信が終わろうとすると。
"黄泉乃ヒカリ大好き14 \50,000 お疲れさまでした!次の配信も楽しみに待っています!"
最後の最後まで赤いコメントが途切れることはなかった。
配信が終わって、画面を閉じ終わると私は遥に言った。
「言っておいた方がいいんじゃない?」
遥は珍しく眉を寄せ、険しい表情で答える。
「そうですね。さすがにいくらなんでもこれはやりすぎです。」
普段は温厚な遥も、これには怒りが収まらなかったのだろう。
そこからしばらくSiri経由で妹から姉への説教が始まり、秋深くの夜は更けていった。




