うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:90
「ごめん、陽介...。」
絵里は今にも泣き出しそうな顔で謝っていた。
「前に鍵を借りたことがあったじゃない?作って良いか聞けばよかったんだけど、こっそり作っちゃって...。」
何故、鍵が掛かってるはずなのに入れたのかと思っていたがそういうことか。
頻繁にうちに来るわけだし、言ってくれれば別に断らなかったのに。
「今まで勝手に入ったりはしてないから。遥もいるから、そんなことしたらすぐにバレるし。」
遥の方に振り向くと、遥は静かに頷いていた。
「私も絵里が合鍵を持ってることを知らなくて。部屋のチャイムが鳴るのを開けられなくて困っていると、鍵を開けて入ってくれました。でも、そういうのは今回が初めてです。」
遥が嘘を吐く必要もないし、本当なんだろう。
知らない空き巣だったらまだしも、遥がいることを絵里は知っているわけで。
絵里は頭を下げながら、持っていた合鍵を差し出してきた。
「ごめんなさい。これだけで、他には作ったりしてないから。本当に。」
私は一度それを受け取って、そのまま絵里に差し出した。
「じゃあ、ちゃんと渡しておくね。でも、今後は隠し事はしないように。言ってくれれば、別に断ることはないんだから。」
私がそう言うと、絵里は叱られた子供のように小さくなっていた。
「他に何か隠してることとかない?もしあるんだったら、今のうちに教えておいてほしいんだけど。」
追求すると、絵里は言いづらそうにしていたのだが、しばらくして白状し始めた。
「いろいろ置く場所が足りなくて、あちこちに隠してて...。」
そう言って部屋の中を回りながら、日頃開けていないキッチンの戸棚や、ベッドの下、洗面所の収納の奥。
化粧品やアクセサリーや雑貨にお菓子、あれこれ雑多なものが次々に出てくる。
見えるところにあるものもどんどん増えてきてはいることを感じていたのだが、こんなに増えていたなんて。
元々、男の一人暮らしということもあって、最低限のものしかなかったのだが、今や絵里が持ち込んだものの方が多い。
「衣装ケースに入りきらなかったり、持って帰るのが面倒くさかったから、開いてるところに入れ出したんだけど、どんどん増えちゃって...。」
どうせ元々使っていなかったスペースなので別に良いのだが、何に使うのかわからない工具だったり、マッサージ器やゲームのキャラクターのグッズだったり、見た事もないものが出てきたのは驚いた。
「うちも広くないから、入らなくなったものとかも持ってきちゃってたんだよね。これとか、飾らなくなったんだけど捨てられなくて。」
絵里はそう言いながら、少し前に流行っていたキャラクターのアクリルスタンドを手に取った。
これも秘密というか、半分は見えてたから良いのだが思ったよりも規模が大きかった。
「衣装ケースとか収納が足りなかったら追加で買うし、開いてる棚とかに入れてくれてもいいんだけど、ちゃんと整理して要らないものは捨てようね。」
そうして話していたのだが、熱が上がってきたのか寒気で身震いをする。
そんな様子に、絵里はおろおろとしながらまた謝っていた。
「ごめん陽介。具合悪いのに変な話にしちゃって。届いてたのでご飯作るから、ベッドで寝て待ってて。」
その言葉に甘えて布団を被っていると、すぐに食器の音が鳴り、レンジが回る音が聞こえてくる。
大した調理器具もないので、冷食やレトルトばかりなのだが用意してくれているんだろう。
しばらくすると、机に運ばれてきて声を掛けられた。
「とりあえず、食べやすそうなの温めといたから。食べきれなかったら、ラップ掛けて冷蔵庫に入れといて。」
そうして、さっき宅配で買っていた鍋焼きうどんと、ほうれん草のお浸しとひと口大に切られたリンゴが出てきた。
しかし、うどんは買った覚えがあったが、お浸しやリンゴは買っていなかったような。
「これは絵里が買ってきてくれたの?」
私が聞くと、絵里は少し恥ずかしそうにしながら答えた。
「うん。風邪引いたって聞いたから、身体に良さそうなものを食べてもらおうと思って。陽介が自分で選んだらカップ麺とかばっかりでしょ?」
数時間前に遥と同じやり取りをしていたような。
絵里から見ても、そんなに日頃の食生活が良くないと思われているのか...。
私がありがとうと返事をすると、絵里は時計を見て、慌てて出支度を始める。
「帰りにも寄るから、洗い物は置いておいて。遥もいるから大丈夫だと思うけど、何かあったらすぐ連絡してね。」
そう言い残すと、絵里はバタバタとバイトへ出かけていった。




