うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:89
「インフルエンザですね。熱が下がっても2日は仕事に行かないように。」
ただの風邪ではないような感じはしていたが、そう言われると急に身体が重くなったような気がする。
うつすわけにもいかないので、しばらく休むしかないのだがまた店長が痩せそうだ。
身体だけではなく、気も重いなと思いつつ、検査結果や薬の説明を聞いて診察室を出ると。
「はい、マスク。買い物も宅配とか使って、出来るだけ外にも出ないようにね。」
ゾンビメイクの看護婦にマスクを手渡される。
また金魚を眺めながら待合室で待っていると、ほどなく呼ばれて処方箋を貰い、寂れた病院を後にした。
薬局で薬も貰い、コンビニにでも寄ろうかと思ったが、先ほど言われたことを思い出してタクシーを呼んで家に帰った。
「ただいま遥。インフルエンザだったよ。しばらくバイトも休まないと...。」
私がふらふらとしながら報告すると、遥は心配そうにしていた。
「最近、忙しかったですし、疲れも出たのでしょうか?無理せずに出来るだけ安静にしてください。」
とりあえず荷物を下ろして、薬を飲むためにも何か食べないとと冷蔵庫を開けてみたが、いつものように大したものは入っていなかった。
固形物は酒のつまみに買っていたチーズの残りくらいで、飲み物も紙パックのお茶が半分ほど残っているだけ。
今まで使った事はなかったが、ネットスーパーで注文してみようかと思い、冷蔵庫を閉じるとPCの前へと移動した。
幸いにも近所の店はすぐに配達してくれるようで、30分ほどで届くらしい。
歩いて行って帰ってで考えると、買いに行くより家で待っていた方が早い。
何を買おうかと、ポチポチと探していると遥も横から覗いて来る。
「いつもカップラーメンとかばっかりですし、ちゃんと栄養があるものにしてくださいね。」
日頃の不摂生は遥の言う通りで。
とはいえ、うちには大した調理器具もないので、冷凍食品やレトルトをカートに入れようとしていると。
「またラーメンじゃないですか。お野菜も取れますし、こっちのちゃんぽんにしましょう。」
また、お菓子でも買おうかと他の商品も見ていると。
「油分が多いものは胃腸に負担がかかるからダメです。食欲がないならゼリーの方がいいですよ。」
そうして、遥に栄養指導をされながらカートに商品を追加していく。
もっとも、大半は遥が選んだものだったが。
選び終わって、注文ボタンを押下すると到着予定時間が表示された。
謳い文句の30分ではなかったが、それでも40分前後で届くのはずいぶん早い。
まだもう少し届くまで時間がかかるしと、ベッドに身体を横たえたのだが、目を閉じるとすっかり寝落ちてしまった。
熱があるからか、ふわふわと宙を漂うような、海の波に揺られるような夢を見て、気が付くと窓の外は真っ赤に染まっている。
もうこんな時間か。
重い頭で時計を見ると、配達の予定時刻はずいぶん過ぎてしまっていた。
慌てて飛び起きると、何故だか部屋の中には絵里の姿が。
それに、いつの間にか額にひんやりとするものも貼られている。
「目が覚めた?なんか宅配来てたから、冷蔵庫に入れといたよ。」
どうやら寝ている間に絵里が世話をしてくれたらしい。
だが、呼んだわけでもないのに何故だろうと思っていると、遥が言った。
「私が絵里に連絡してたんです。そうしたら、バイト前に様子を見に寄ってくれるって。それで。」
そういうのは前にもあったような気がする。
そのパターンかと納得は出来たものの、別の疑問が湧いてきた。
「そういえば鍵かけ忘れてた?玄関開けっぱなしだったかな?」
熱もあるし、うっかり鍵を掛け忘れたのかと思ったのだが、私が問いかけても何故か絵里は黙ったままで返事をしない。
てっきり、"鍵開いてたよ"とすぐに返ってくると思っていたが、なにやら様子がおかしい。
「絵里?」
私が促すと、目を伏せてその重い口を開いた。




