うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:83
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広いエントランスホールを受付へと進み、訪問先の会社名を告げると近くのソファーで待つように言われる。
しばらく待っていると、恰幅の良い中年の男性が近づいてきた。
「小柳さま、ご足労いただきありがとうございます。先日よりメールにてやり取りをさせていただいていた、広報の佐山と申します。」
私は立ち上がって挨拶を返すと、促されビルの奥へと進んでいった。
ズラリと並んだエレベーターの一つに乗ると、どんどんと上へ昇っていき耳に違和感を感じてくる。
何階まで昇るのかと思っていると、階数の表示は38階を指してドアが開いた。
他の会社も入っているフロアのようで、いくつかの企業のロゴが並んでいる中をさらに奥に進むとようやく目的地へと辿り着いた。
すぐに応接室へと通され、またしばらく待っていると先ほどの佐山さんが女性と応接室へと戻ってきた。
これは...。
写真で見たり、遥の話は聞いていたが、実際に目にすると存在感がものすごい。
派手なメイクや服装をしているわけではないのに、見惚れて目が離せない。
顔立ちは遥に似ているし、背格好も普通の女性より少し背が高い程度なのだが、芸能人のようなオーラというか違う世界の存在のように感じる。
「はじめまして、代表の菅です。本日はお越しいただきありがとうございます。」
そう言われて手を指し伸ばされたのだが、手を握るのも気後れする。
勝手もわからず、おずおずと出された手を握ったのだが。
「よろしくお願いしますね。小柳さん。」
にっこり微笑まれながら手を握り返されたのだが、これは破壊力が抜群だった。
初めて会ったはずなのに、一撃で心が持っていかれそうになる。
遥の話で人望や求心力も桁外れだとは聞いていたが、実際に会ってみるとそれを身をもって実感する。
手を離してソファーに座り直したが、手にまだ感触が残っているようで落ち着かなかった。
そんな感じで、平静を装いながらもふわふわとした気持ちで待っていると、佐山さんが切り出してくる。
「早速ですが、まずは弊社の事業とプロモーションをご依頼したい商品についてご説明させていただきます。」
何枚かの資料とウェアラブル機器を見せられ、丁寧に紹介していただいたのだがあまり頭に入ってこない。
事前にホームページや記事を見たりして、事前に知っていたということもあるのだが、話している佐山さんより遥の姉の方が気になってしまう。
話半分に聞いていると、説明は終わったようで。
「ということで、こちらの商品についてのプロモーション動画を掲載していただきたいのです。作成については制作会社に協力していただきますので、出来る限りご負担をお掛けしないよう考えております。」
そこからまた、動画制作についての説明が始まったのだが、要約すると遥は声優代わりみたいなもので、台本から撮影編集まで制作会社がやってくれて、遥はアフレコで声を当てるだけだと。
部分的な依頼になるのでそこまで報酬は出せないが、その分負担は少なく責任も求めないと。
まぁ、動画作成から全てと言われたら、また葵や夏帆に頭を下げて一からお願いしないといけないので、そういう条件なのは私としても気が楽で良い。
別の書類も何枚か机に置かれ、眺めていると佐山さんがニコニコしながら続けて言う。
「個人勢で活動していらっしゃることは存じておりますので、多少問題があったとしても今後に影響するような賠償を求めたりはいたしません。もちろん、今までの活動などを見させていただいて、そんなことは無いと思いますが一応契約として、条項がいくつかございますのでご確認いただければと思います。」
気を遣っていただいているんだろうなと思いつつも、A4用紙何枚か組の虫眼鏡が要りそうな書類を見てもどこがそれなのかがぜんぜんわからない。
捲ったり、裏返したりしながら読んでいると、また佐山さんが声を掛けてくる。
「お持ち帰りいただき、ゆっくりとご検討いただければと思います。最終的に受けていただけるかどうかは、制作会社から上がってきた台本を見ていただいて、その後で大丈夫ですから。」
別にここですぐに決めなくてもいいのか。
そう言われると、急に肩の荷が下りたような気がする。書類は後でAIに読んで貰って、いろいろ教えてもらおう。
そんなことを思っていると、さらに佐山さんが続けてくる。
「業務的な事はここまでなのですが、実は私が配信を見たのがきっかけでして...。」
ここまで少し固い感じだったのだが、表情を崩して頭を掻きながら佐山さんは笑っていた。
そこから、遥の配信のここが良かっただとか、最近のVtuberの中で一番勢いがあるだとか、配信内容も落ち着いていて好感度が高いだとか、フォロワーなどのセグメントもプロモーションのターゲットと合っているだとか、個人の好みなのか仕事の話なのか混ざっているような、佐山さんの推しトークがしばらく続いていって。
「なので、偶然ではあるのですが、弊社の方針と合致していて、そちらの活動へのお力添えにもなるかと思いまして、お互い良い関係を築けることを期待しております。」
ビジネス的に言えばそうなのだろうが、実際は佐山さんが遥のファンなんだろうな。
業務を盾にした合法的な推し活が、たまたま姉妹を引き合わせてしまったと。
逆に言えば、個人としても企業としても好意的に接してくれることがわかって、想像していた怖いことはないのかなぁなんて思っていると美咲が口を開く。
「説明は終わりましたか、佐山?」
口調は柔らかいし、表情も穏やかなのだが背筋が凍るような圧力を感じる。
私が思わず背筋を伸ばしてしまうと、佐山さんがその問いかけに答える。
「はい、代表。」
佐山さんが短く答えると、美咲は手をドアの方へ向け。
「ありがとう佐山。席を外してくれるかしら?」
美咲がそう言うと、佐山さんはまだ何か言いたそうにしていたが、失礼しますと一礼するとドアを開け出ていった。
そして、応接室から私と美咲以外がいなくなると、美咲は姿勢を少し崩して言った。
「単刀直入に聞きます。遥とはどういう関係ですか?」




