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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:79

 翌日、目を覚ますと絵里の姿はなく、日は少し傾き始めていた。

もう少し早めに起きるつもりだったのにな、と顔を洗ったり身支度をしていると、遥が話しかけてくる。

「絵里から連絡が来てましたよ。早めに工事の手配が出来たそうで、今日、明日まで泊めてほしいと。」

てっきり一週間くらいは泊まり続けることになるのかと思っていたので、二日で終わるのは不幸中の幸いだろう。

かなり前の話だが、子供のころに家の給湯器が壊れた時は、ゴールデンウィークを挟んでかなり待たされることになり、しばらくの間家族で銭湯に通ったのを思い出す。

あれはあれで、日常とは違って楽しかった。

もっとも、楽しかったのは最初の三日くらいで、だんだんと面倒くささの方が勝っていたのだが。


 そして、PCでメールをチェックしていくと、待ちに待っていた返事が届いていた。

内容を見ていくと、いくつかの候補日が挙げられていて、あちらの事務所での打ち合わせを希望していると。

さらにお呼び立てして申し訳ないという一文と、水菓子を用意してお待ちしております、とのことが添えられていた。

行くのは全然かまわないし、むしろそういう風に誘導しているのだから問題ないのだが、気になるのは後者の方。

これも何か姉妹の間での符丁なのかと考えていると、遥が隣に寄ってきて微笑んでいた。

「ちゃんとメッセージは届いたようですね。そして、やはり姉で間違いないようです。」

遥は確信しているようだが、やり取りの意味がわからない。

「水菓子ってどういうこと?それに、遥の方から送ってた朝顔って?」


 私が尋ねると、遥は苦笑しながら返してきた。

「わからないですよね。ごめんなさい陽介さん。」

一言謝って遥は続ける。

「朝顔は、最初は姉が小学校の夏休みの宿題で育て始めたものなんです。その後に私も宿題で朝顔を育てることになったのですが、宿題が終わっても姉妹で毎年植えていました。それなりに庭を占領してしまうものですから、母は嫌がっていましたが。」

私が頷きながら聞いていると、遥は続きを話していった。

「それに、私が姉に絵を教えた時に姉に手習いで書かせたのが、ちょうど庭に咲いていた朝顔だったんです。他にもいくつか姉妹での思い出はありますが、私から姉にアプローチを掛けるのであれば、これが一番良いかと思いまして。」


 なるほど。

それは確かに効果的だろうと思いながらも、絵の話が出てきたことに少し心が痛む。

「それで、水菓子の方はどういう話なの?」

朝顔の話は深掘りしない方が良いかと思い、話題を変えようと聞いてみると遥は恥ずかしそうに笑っていた。

「それは、その、私の勘違いだったんです。」

どういうことなんだろうか?

首を傾げながら、意味がわからず考えていると、遥は説明してくれた。

「私が小学生の頃に、どこからか聞いて覚えた"水菓子"を食べたいと言いました。それで、姉は私を喜ばせようとお小遣いをはたいて、高価な桃を買ってきてくれたんです。」

あぁ、やっぱり優しいお姉さんだったんだなと思っていると、少し恥ずかしそうに遥は続けた。

「それで、姉が買ってきてくれた事は嬉しかったのですが、私は"水菓子"が水羊羹の事だと思っていたので泣き出してしまったんです。そんな様子を見て、姉は桃を使ってゼリーを作ってくれました。」

だから、と遥はさらに続ける。

「これは姉からのメッセージだと思います。好意的に待っているということで、桃のゼリーがあるかは分かりませんけどね。」

こうして、遥の話を聞いてみると、あのやり取りで姉妹の間では通じているんだろう。

きっと、今説明してくれた意味以外にも、言外に秘められた思いもあるのだろうが。


 そこからシフトを確認して、早い方が良いかと一番近い日を指定してメールを返信する。

とりあえず、これで話は進むかと思っていると、時間は普段家を出る時間を少し過ぎていた。

慌てて、バタバタと荷物をポケットに放り込み、スニーカーをつっかけて踵を踏んづけると、背後から遥の声が聞こえてくる。

「いってらっしゃいませ、陽介さん。お気をつけて。」

その声に私はいってきますと短く返事をして、踵を靴の中に押し込むと、バイトへ走っていった。

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