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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:73

 早速、流行りの歌を覚えてもらおうと、いくつか遥に聴いてもらっていたのだが。

「これ、人間が歌えますか?舌が五枚くらいないと足りなさそうなんですけど...。」

まぁ、高速詠唱みたいな曲とか、ラップ系はそういう印象を受けてもおかしくない。

だが、これを歌ってる人間はそれなりにいるわけで、遥でもなんとかなるのではと思っていると。

「生で完璧に歌える人なんてほとんどいませんよ。ワンフレーズできれば、あとは編曲の人がなんとかしてくれますので。」

葵がそう言うのだが、それもそれで夢がないような。

とはいえ、今流しているこの曲も、アカペラで一人で歌うには物理的に無理だし、そういうものなのかなぁと思っていると。


 グー。

音が鳴る方を見ると、葵がお腹を押さえてうずくまっていた。

葵は身体を曲げたまま、上目遣いにこちらを窺う。

「その...。すみません...。お昼も食べずに出てきたもので...。」

おそらく、急に絵里に呼び出されて連れてこられたんだろう。

葵の性格なら、元々来る予定だったのであれば連絡していただろうし。

外を見ると、すっかり日は暮れていて時間は19時過ぎ。

私も遅い昼食だったものの、いくらか奪われてしまったこともあって、お腹は空いてきていた。

「えーっと、ご飯でも行きますか?時間も時間なんで、飲みでも良いですし。」

私が促すと、葵は恥ずかしそうに首を縦に振っていた。

時間もまだまだ終電まで余裕はあるし、駅前で適当なところに行くかと考えて、遥にもいっしょに行くか聞いてみたが。

「いえ、私は食べられないですし、歌の練習もしたいのでお二人で行ってきてください。どんなものを食べてきたのか、土産話を楽しみに待ってますね。」

どうやら、遥は来ないようなので二人で出かけることになった。


 そういえば、絵里と宅飲みはしてても、どこかに飲みに行ったりはなかった。

今まではきっかけがなかったので、行かなかったが今度誘ってみようか。

そんなことを思いながら、駅前の方まで歩いていったのだが、端から見たら変なコンビだろう。

多少肌寒くなってきたが、近いこともあって半袖のTシャツにジーパンの私と、パンツルックのリクルートスーツのような服装にパンクメイクの葵。

良い方に捉えれば、アーティストやミュージシャン系の人に見えるのかもしれないが、悪く見れば反社会的な組み合わせでもあって。

気付けば駅前の広場まで着いていたものの、どこにするのか決めていなかったので、葵に聞いてみる。

「どこでも大丈夫です。好き嫌いやアレルギーもないので。」

そう言われるのもなかなか困るもので、日頃先輩と行ってる立ち飲み屋に連れていくのもなぁと思っていると。

「私が出しますので、あのお寿司のお店はいかがですか?とても美味しかったので、他の物も食べてみたいなと。」

駅前の店だという話をしていたっけ。

私もトロとイクラを取られて不完全燃焼だったので、その申し出は渡りに船だった。

「いいですね!今日もいろいろと助けてもらったので、払いはこちらで持ちますよ。食べたい物食べてください。」


 店名を確認して、マップで場所を調べて向かって行ったのだが、思っていたよりもバイト先から近かった。

店の名前は見たことがあるとは思っていたが、こんなに近かったのか。

店の入っている雑居ビルに入っていくと、狭いエレベーターへ乗っていく。

近くに居ると大きく感じるのだが、こうやって閉鎖空間の中だと改めて葵の身長を感じる。

エレベーターのドアが開いて店のドアを開いた。

もしかしたら、予約しないと入れないかと思ったが、店内は人が疎らですぐにカウンターへ通される。

「回らないお寿司なんて久しぶりです。親に就職祝いをしてもらった以来かも。」

それは私も同じだった。もっとも、それより間隔は開いているが。


 席についてメニューを見たが、思っていたよりは安い。

ディナータイムということもあって、それなりの金額は覚悟していたのだが、Uberで頼んだよりも安いくらいで。

このくらいなら、少し高めの居酒屋くらいかとおまかせ握りを二人前頼むと。

「お飲み物は何になさいますか?」

上品な着付けの仲居さんから聞かれる。

「じゃあ、この日本酒で。冷やでお願いします。」

せっかくだしと、私が日本酒を頼むと葵は悩んでいた。

おそらくこの前の失態を思い出しているんだろう。

「無理に付き合わなくていいですよ。お寿司だったら日本酒が合うかなぁと思ったくらいなので...。」

私はふんわりと促してみたのだが、リスクよりも欲望の方が勝ったようで。

「私も同じ日本酒を冷やでお願いします。あと、温かいお茶もいっしょに。」

仲居さんはにこやかに注文を取ると、板前に声を掛け厨房の方へと下がっていく。


そして、間もなく枡に入ったグラスが運ばれてきて、なみなみと日本酒が注がれていった。

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