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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:72

 いきなり絵里がいなくなって、落ち着かない様子の葵。

絵里といっしょに帰れば良かったのだろうが、帰るタイミングを失ったのか、挙動不審にキョロキョロとしていた。

「えーっと...。」

私が声を掛けようとすると、葵はビクッと身構える。

「は、はい!歌枠についてですが、他にもいくつか実施に向けての問題がありまして...。」

そういうつもりではなかったのだが、遥も興味を持っているようだったので、ついでに聞いておこうか。

私が相槌を打っていると、葵は続きを話していく。

「費用や納期、レコーディングや編曲なども問題なのですが、それ以前に権利関係や音源が問題になります。事務所に所属している場合は、専門の担当がその辺りの確認や手続き、交渉をしてくれるのですが、個人だと全て自分でやらないといけないのでかなり大変です。」


 これもまた頭が痛い問題だった。

この前の税金の話もそうだが、素人の私一人でできる範囲を超えてきてしまっている気がする。

どれか一つでも元々携わっていたようなものならまだ良いのだが、どれも初めてのことで、話を理解するだけでも難しい。

そんなことを悩んでいると、葵はさらに続けた。

「作るのもそうなのですが、一番の問題は遥さんの歌です。特別に上手くなくても良いのですが、それなりのクオリティは求められるので...。」

そういえば、遥の歌は聴いたことがなかった。

何かしているときに鼻歌を歌っていたり、短いフレーズくらいは聴いたことはあったが、ちゃんとした歌を歌っているところは見たことがない。

さっきの配信での遥の口ぶりからは、得意ではあるようなのだがどうなのだろう?


 私が遥に聞こうとしたが、それより早く葵が遥に訊ねていた。

「遥さん。少し歌ってみていただけませんか?今後の参考にもなりますし。」

確かに気にはなっていたのだが、葵が聴きたいだけというのもある気が...。

「何か歌える遥?短い曲でも良いんだけど。」

私も聴いてみたくはあったので、遥に聞いてみると。

「そうですね。久しぶりで上手く歌えるかわかりませんが、何か歌ってみましょうか。」

その言葉に、葵はPCに手をやりカチャカチャと操作していく。

どこから持ってきたのか、背景が付いて即席のライブ会場が画面の中に出来上がった。

「曲は何にしましょうか?ここで歌うだけなら、YouTubeにカラオケ音源はありますから、すぐに準備できます。」

やっぱり、葵が聴きたかっただけなのではないだろうか。準備の手際がやたらといい。

そんな葵に遥は曲をリクエストするのだが、聞いたことがない曲名が出てくる。

どんな曲なんだろうかと期待していると、イントロが流れ、観客二名のコンサートが始まった。


 画面の中の遥が、フルートが鳴るような綺麗な歌声を披露していく。

普段の話し声から声が綺麗だとは思っていたが、歌になると一段と澄んだ声が際立つ。

高音だけではなく、低音もしっかり響き、技術的にも上手だと思ったのだが。

「合唱曲...?」

思わず疑問が口から洩れてしまっていた。

曲名だとわからなかったが、学生の頃に合唱コンクールで聞いたことがある気がする。隣のクラスの課題曲だったような。

しばらくすると、曲は終わって葵が拍手をする。

私も合わせて拍手をしていると、葵は遥をほめちぎる。

「すばらしいです遥さん!ますますファンになってしまいました。こんな綺麗な歌声を聴かせていただけるなんて幸せです!」

それはそうなんだけど、そうじゃなくて、配信で合唱曲はと思っていると。

「遥さん、先ほどの曲も良かったのですが、他の曲も聴いてみたいです。できれば、ジャンルを変えてポップスやボカロなどで、何か一曲歌っていただけるとうれしいのですが...。」

よし、いいぞ葵!ツッコミづらかったが、いい感じに誘導してくれて助かる。

葵がそう聞くと、遥は少し悩んで答えた。

「最近の曲はあまりわからないんですよね。他の配信者の方が歌っているのを見たりはしているのですが、練習もしていないので歌えるかどうか...。」

新しい曲でなくてもいいので、何か歌える曲はないか私が続いて聞いてみると。

「そうですねぇ、あまり経験はないのですが、姉にカラオケに連れていってもらった時に教えてもらった曲であればなんとか...。」


 そうして、遥が挙げた曲はまた聞いた事が無い曲名だった。

だが、イントロが始まるとそれが何かはわかった。

昭和の名曲集に入ってるやつだ。これも聴いたことがある。

遥は謙遜していたものの、先ほどの合唱曲に負けず劣らずの出来で、贔屓目抜きでもとても上手い。

叙情豊かに歌い上げると、葵と私はまた拍手をする。

葵が先ほどと同じように褒めちぎっていたのだが、二曲が終わって課題は明らかだった。

曲のラインナップが悪い。

ネタとしてたまにやるには良いが、こういうのしか歌えないのは明らかにニーズに合ってない。

葵が何かを言おうとしていたが、私はそれを遮って言った。

「遥、歌覚えよう。流行りのやつ。」

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