うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:71
配信ボタンを押すと、待機中の画面が映し出された。
すぐに配信本編に入ってもいいのだが、せっかく作ってもらったものだし、2~3分流してみることにしていた。
その間に、自分のスマホでもライブ視聴の画面を開いたり、絵里や葵も同じようにしていると、どんどん視聴者数が増えていく。
余裕を持って告知していたこともあるのだろうが、今は平日の昼過ぎ。
そんなに多くはこないだろう、というかまだ勝手がわからないこともあって、ゴールデンタイムを避けていたのだが既に視聴者数が千人に迫ろうとしていた。
開始直前は落ちつけていたのだが、私はその数字にまた緊張して顔が強張っているのを感じる。
そろそろ本編に入るかと、遥へアイコンタクトをすると、遥はにっこりと微笑んでいた。
その笑みに少し気が楽になり、配信アプリを操作していくとオープニングが流れ、3D化された遥の姿が画面の中へと映し出される。
「みなさんこんにちは~!お待たせしました、黄泉乃ヒカリです。今日ははじめてのYoutubeでの配信なのですが、ゆっくりとお付き合いいただけるとうれしいです。」
遥が挨拶をすると、ものすごい勢いでコメント欄が流れていく。
あまりにも早すぎて内容はほとんど読めないが、スマホ配信の方に来てくれていた名前がいくつか見えた。
こっちも見に来てくれたんだなぁと思っていると、遥はぐるぐると回ってみたり、手を振ったりしていた。
「お知り合いに作っていただいたんですが、この辺りなんてほんとうに綺麗で。」
そうやって遥がお気に入りポイントを見せていくのだが、こうやって見てもやはり出来が良い。
私が作ったわけではないのだが、遥が喜んで、視聴者が褒めてくれるのを見ていると誇らしくなってくる。
しばらく、そうやって3Dモデルのお披露目や、最近の話題などを話したりしていたのだが、コメントの勢いが少し落ち着いて拾えるようになったようで。
「アーカイブ?アーカイブってなんですか?」
遥が質問すると、コメント欄でどんどん説明が飛んでくる。
「配信に来れなかった人も、後から見られるようにですか。それはいいですね、できるか確認してみます。」
また、別の話をしていると、今後の配信についての質問もいくつか出てきていた。
その中でも多かったのは歌についてで、遥もそれに返していく。
「私が配信を始めたいと思ったのも、あるVtuberの方が歌枠ライブをされているのを見て、それに憧れたからなんです。だから、すぐには難しいかもしれませんが、やりたいことではあるので頑張っていきたいと思います。」
そういえば、始めたきっかけはそうだった。
同じようにYoutubeで配信をしようと思って、すぐにはできそうになかったのでスマホアプリの配信をするようになったのが始まりで、思えばけっこう遠回りしてしまったような気もする。
身振り手振りが使えるようになったこともあって、気付けばあっという間に一時間が過ぎていた。
そろそろ終わりに、とサインを出すと遥は締めの挨拶をして、エンディングを流し、Youtubeでの初配信は終わっていった。
最終的な視聴者数は1,755人。
他に有名なVtuberの配信が被ってなかったこともあるのだろうが、想像以上に多くてビックリした。
これは葵や夏帆に作ってもらったものが良かったのもあるが、Youtubeでの配信もひとまず成功かと思っていると。
「これならすぐに収益化できそうね。早ければ来月くらいに申請できるかなぁ?」
絵里も喜んでいるようだったのだが、収益化?来月?
「早くて来月ってどういうこと?収益化って何をするの?」
意味がわからず、絵里に聞いてみると。
「あー、スマホアプリの方と違って、チャンネル登録者とか再生時間とか基準を超えてから申請しないとお金もらえないのよ。まぁ、この調子なら問題ないと思うけど。」
知らなかったこととはいえ、スマホアプリで配信していたときよりも多くの人が来てくれたので、てっきりもっと貰えるものなのかと思っていたが、まだスタートラインにも立てていないようだった。
お金のためにやっているわけではないが、葵に依頼したり、機材を買うのもお金が要るので、収入が途絶えるのは少し困る。
私が悩んでいると、絵里は私の背中をバシバシ叩いてきた。
「何悩んでんのよ。スマホの方に比べたら時間も掛かるし、そんなにポンと伸びるわけじゃないけど、もう十分貯金はあるしスマホ配信も並行してやればいいでしょ?そんなの、私みたいな底辺配信者が悩むことで、遥はもうそんなんじゃないんだから。」
まぁ、確かに貯金もあるし、並行してやれば良いかと絵里の話に納得していると、今度は葵が言ってくる。
「でも、歌枠やライブやろうと思うと、今の予算だと足りませんね。MV作るだけでもまともなものは百万以上掛かりますし、オリジナル曲やライブをやろうと思ったらその数倍は覚悟しておかないといけませんし。」
えっ?そんなに掛かるの?Live2Dのモデルだけでも高いと思っていたのに?
そんな話をしていると絵里が。
「あっヤバイ、バイト遅れちゃう。ごめーん遥、葵、陽介。またね~!」
バタバタと絵里が去っていき、いっしょに来た葵は部屋に取り残されていた。




