うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:6
懐かしい夢を見ていた。
蝉の鳴く声。眩しい日差し。草の匂い。
盆に祖母の家に行った時の思い出。
何もない、四国の片田舎。
何度か連れていかれたが、遊べるものもなく、いつも退屈な思いをしていた。
辺りを探索しても、すぐに飽きてしまい、よく板の間で転がっていた。
床はひんやりと冷たく、汗ばんだ身体を冷やしてくれて。
そうやって、転がっていると白い女が顔を覗き込んできて・・・
白い女?
青白い顔が近づいて来る。
もがいて逃れようとするが、身体はピクリとも動かない。
恐怖に身をすくめていると、その顔はどんどんと近づいて来て、黒い髪が垂れ、私の頬にザラリと当たる。
血の気のない、瞳孔の開いた目が合うと。
目が覚めた。
日は高く昇っていて、カーテン越しに部屋の中に光を送り込んでいる。
息を整え、身体を触ると、Tシャツは寝汗でぐっしょりと濡れていて、布団も生温く湿っていた。
怖い夢を見た。
そう思いながら、身体を起こして、ふと、横を見ると点けっぱなしにしていた、PCのディスプレイに白い女の後ろ姿が映っている。
まだ夢が覚めていないのか。
恐ろしくなって、ビクッと身をすくめたが、頭がはっきりしてくると思いだした。
「おはよう、遥。」
ディスプレイの方の空間に、一人で挨拶をすると、スピーカーから返事が返ってきた。
「おはようございます、陽介さん。でも、もうお昼過ぎだから、こんにちはですね。」
遥の声は、少しからかうように笑っていた。
朝起きて、誰かと挨拶するなんて何年ぶりだろう。
実家を出てから、誰かと同じ部屋で寝るのも、修学旅行ぶりだった。
「遥はよく眠れた?」
ふと気になって聞いたが、思っていなかった返事が返ってくる。
「眠くならなかったので、そのまま起きてました。布団が落ちそうになるのを、戻そうとしたんですけど、あまり上手く行かなくって。」
なんとなく、悪夢の原因が分かった気がした。
気遣いは嬉しかったが、そのままだと毎晩悪夢を見ることになりそうだったので、寝相が悪くても放っておいてくれるよう、やんわりとお願いする。
「ありがとう遥。でも、それで目が覚めちゃうかもしれないから、そのままにしておいてくれた方が嬉しいな。」
遥は少し不満そうにしていたが、静かに首を縦に振って答えていた。
ベッドから立つと、洗面所に行って顔を洗う。
鏡に映った顔を見ると、髭が伸びかけていて、それを手のひらで撫でる。
適当に石鹸を塗りたくり、髭剃りで泡ごと髭を刈り取っていく。
剃り終わって、肌を撫でると、ツルツルとした触感に頬が緩んだ。
鏡に映った表情を見て思う。
休みの日に髭を剃るなんて、いつ以来だろう。それに、髭を剃って笑うだなんて。
余計に可笑しくなってきて、声を出しそうになりながら、部屋へと戻った。
ヤカンを火に掛け、冷蔵庫に仕舞っていたおにぎりを電子レンジに放り込む。
昨夜、放置していた洗い物を手早く片付けると、手を拭いて煙草に火を付けた。
ゆっくりと煙を吸い込んで、フゥーと音を立てながら吐き出す。
レンジがチンと鳴り、ガスの燃える音が続く。
片手でマグカップを置いて、インスタントコーヒーの粉を入れた。
もう一つ、マグカップを置く。
台所の引き出しから、緑茶のティーバッグを取り出し、もう一つのマグカップにセットした。
煙草を吸い終わる頃、ヤカンがピーっと鳴り、湯が沸いた事を知らせる。
二つのマグカップにお湯を注ぐと、レンジから温まったおにぎりを取り出し、机に着いた。
「お茶で良かった?朝からコーラよりも良いかなと思って。」
そう言って、マグカップを机の脇に差し出すと、遥は喜んでくれたようで。
「ありがとうございます。大事に頂きますね。」
そう言って、マグカップを両手で包んで、微笑んでいた。




