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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:59

 遥が少しだけ何かに触れたりするのは知っていた。

だが、頑張っても机の上に置かれている軽いものを突いて落とすくらいがせいぜいで、コントロールも効かないし、持ち上げたりもできない。

遥の希望もあって、何回か練習したりもしていたが、上達することもなかったのでそんなものかと諦めていた。

それが、画面の"中"に手を入れて、思い通りに動かした?

iPadのタッチパネルもまともに触れないのに、PCのディスプレイの中に?


 「ちょっと遥。もう一回やってみて。そこの道路の間を繋げて...。」

画面を指差しながら、指示すると遥は画面に指を伸ばしていって。

止まった。

「あれ?どうやったんでしょう?」

伸ばした指を一度戻してから、もう一度画面へ向けていく。

「さっきは、こう、えっと...。」

画面に指が触れるかどうかのところで、遥が力を入れると、盛大にすり抜けてつんのめっていく。

人間だったら壁に額をしたたかに打ち付けているところだが、半分めり込むだけで済むのは幽霊である利点かもしれない。

遥は机に埋まった腰を引き抜くと、横に回って私の隣に戻ってくる。

「確かにさっきは中に入ってたのに、今度はすり抜けちゃいましたね。でも、さっき出来たってことは、練習すれば出来るんでしょうか?」

遥としては新たな課題として、ポジティブに捉えているようだったが、壁に半分めり込んでいたのが心配で聞いてみた。

「遥、大丈夫?頭痛くない?」

遥は口に手を当てて、微笑んで答えた。

「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ陽介さん。壁の奥が暗かったので、少しクラクラしましたけど、痛かったりはしませんから。」


 そういうものなのか?

それなりに月日も経ってきたが、どうしても感覚的なところはわからない。

触れる、触れない、中に入れる、すり抜ける。

何が違って、どうなっているんだろうか。

そんなことを考えていると、ふと疑問が湧いた。

「床に抜けないのはなんでなんだろう?ここ、二階だけど。」

私が問いかけると、遥は足元をじっと見ていた。

その場で足踏みしながら、返事を返してくる。

「どうなってるんでしょうね?床は床だから、そういうことなんでしょうか?意識したらできるのかな?」


 遥はあれこれ、物を触ろうとしたりしながら、Siriに聞いたりしていたが、良い答えは見つからないようだった。

まぁ、幽霊が描いた文献だったり、幽霊のための物の触り方なんて調べても出てくるわけがないわけで。

遥がiPadと戯れている中、私はまたPCのゲームをしばらく遊んでいると、部屋のチャイムが鳴る。

時計を見ると気付けば0時を回っていて、バイトを終えた絵里が来たようだった。


 玄関を開けると絵里が入ってくるのだが、なんだか元気がない。

日頃は少し上がり気味の眉が下がっていて、手はだらりと、背も曲がっている。

「お疲れ様。どうしたの?大丈夫?」

私が声を掛けると、絵里は荷物も置かずに抱き着いてきた。

突然のことに驚いたが、その身体を受け止めて背に手を回すと、絵里が愚痴ってくる。

「若い奴らがゲロって、その処理してたらまた別の奴らがゲロるし。ホールぐちゃぐちゃで、トイレも使えないのに客は入ってくるしさぁ。もう...。」

今日は大変だったらしい。

日常的なトラブルではあるのだが、重なると修羅場と化すわけで。

「店長も先輩も客対応でいつまで経っても戻ってこないから、一人で駆け回んないといけないのに、田辺は役に立たないしさぁ。」

頭を私の胸にゴツゴツ打ち付けながら、グダグダと文句を言っている。

まあまあと、背中をさすって頭を撫でていると、少しは落ち着いたのかパッと離れて、絵里は部屋の中へと入っていった。


 そんな様子を見ていたからか、遥は控えめに声を掛けていたが、絵里は言うだけ言ってスッキリしていたようで。

「こんばんは遥。Live2Dの話だっけ?連絡は取っておいたから、今から話聞いてみる?」

今から相談かと思っていたら、既に遥から絵里にメッセージを送っていたようで、知らぬところで話は進んでいた。

念のために私からも聞いてみると。

「遥から事情は聞いてるから大丈夫。陽介も問題なかったら、FacetimeかDiscord繋いで打ち合わせしようと思うんだけど良い?」

ずいぶん段取りが良いようだった。

今日の今日で、もう打ち合わせか。

PCはいつまでも来なかったのに、こういうのは早いらしい。


 特に待つ必要もないので、首を縦に振ると、遥もうんうんと頷いていた。

「じゃあ、葵に連絡取るからちょっと待ってて。」

絵里はスマホを片手に、椅子に腰かけながら続ける。

「見た目は...。ちょっとびっくりするかもしれないけど、すごく真面目で良い子だから。」

気になる前置きをされながら、しばらく待っているとPCの方に通知音が鳴る。

こっちは三人いるし、Discordの方で繋いだほうがいいかと、操作していくと画面の向こうに人影が映し出された。

黒い背景に浮かびあがった青白い肌。

鼻や唇に山ほどピアスが付いていて、目元は隈取のように真っ黒に塗られている。

その穴が開いた唇も黒く塗られていて、ゴスというよりもっと不吉な感じがして身構えてしまう。

「ごめんね葵、夜遅くに呼び出しちゃって。Live2Dの発注したいみたいだから、いろいろ教えてくれない?私も葵にお願いしたけど、あんまりわかってないし。」

紹介されたはいいものの、何もかもわからない状態で。

そうして、深夜の打ち合わせは始まっていった。


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