表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/56

うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:45

 水の上に浮いていた。

空は雲一つない晴天で、太陽だけがギラギラと輝いている。

緩やかに揺られながら、波に身を任せていると、だんだんと揺れが大きくなってきた。

心地よさを通り越して、上に下にと揺さぶられ、もがこうとするが身体はピクリとも動かない。

ただ一つ、動く視線を巡らせてみるが、空と海の青しか見えず、船も島も雲すら見えない。

沈みそうで沈まない身体に不安が膨らんでいくと、身体はますます硬直していった。

どこからともなく、白い影が現れ、動かぬ身体を細かく揺さぶられる。


 「陽介さん!陽介さん!起きてください!お仕事に間に合わなくなりますよ!」

その声に目が覚める。

部屋の中には遥の声と、スマホのアラームがスヌーズで何度も鳴り響いていた。

今は何時だろうかとスマホに手を伸ばすと、時計は15時を過ぎており、普段であればそろそろ家を出ようかという時間。

慌てて飛び起きると、急いで身支度を整えていく。

「ごめんなさい、私が夜更かしをさせてしまったから...。」

遥が謝ってきたが、起きられなかったのは自身の問題であって、遥の責任ではない。

「いや、遥は悪くないよ。俺が起きられなかっただけだし。」

服を着替えて、わずかな荷物をポケットへ入れると、振り返って遥へ言った。

「ごめん、遥。できれば、バイトに出る前にもう少し話をしたかったけど。」

昨日、というか今朝に話せなかったことが気になったが、時間は待ってくれない。

急いで家を出ることに後ろめたさを感じつつ、玄関へと向かうと後ろから遥の声が聞こえた。

「心配掛けてごめんなさい。でも、私は大丈夫ですから、無理はしないでくださいね。」


 その声を背に、駅の方へ足早に歩いていくと、道端の赤い色が目についた。


彼岸花。


鮮やかで、どこか禍々しいその姿にふと足が止まる。

他に草木のない、荒れた道端にポツンと一輪。

綺麗だとは思いながらも、何か嫌なものを示しているようでどこか落ち着かない。

そこから目を離して辺りを見回すと、視界の端に違う色を見つけた。

青々と茂った花壇に、薄紫のコスモスが身を寄せ合って咲き誇っていた。

辺りには藍や黄色の他の花も咲いていて、様々な色がモザイク模様を作っている。

こっちの方が良いよな。

その花壇に何か救われたような気がして、また歩を進めて行った。


 いつものように、店に着いて開店の準備をしていると、絵里が出勤してきた。

「おはようございまーす。」

私や店長がその声に挨拶を返していると、絵里はロッカーへは向かわずに私の方へ近づいてきた。

目の前まで来ると、顔を近づけ、声を潜めて聞いてきた。

「遥、大丈夫なの?遥からも返事は来てたけど、バイトなんて来てていいの?」

私も昨日の今日で、遥のことが心配なのは同感なのだが、急にバイトを休むわけにもいかない。

遥もなかなか起きてこない私を起こして送り出してくれたので、大丈夫なのかと思って家を出たのだが。

「あの後、明け方まで遥と話してて、どうして取り乱したのかは教えてくれて、なんとか落ち着いたみたいだったし...。」

私がそう返すと、絵里はさらに顔を近づけてきて、手を添えながら耳元で言った。

「遥が心配だし、今日も行くから。残業せずにすぐ帰りなさいよ。」


 絵里は私から離れると、ロッカーへ小走りに入っていく。

それと入れ替わるように、今度は店長が私へ近寄ってきて、小声で尋ねてきた。

「絵里ちゃんとは...その...そういう関係ではないんだよね...?」

話の内容はそんな話ではなかったのだが、端から見れば誤解しか生まないような絵面だっただろう。

いちおう、仕事帰りに家に来るのだから、状況証拠としてはそれはそうなのだが。

「あまり他の人には知られたくなかったみたいで、特に変な話とかじゃないですから。」

適当に誤魔化してみたものの、変な話かと言えば、実際には店長が想像しているよりよっぽど変な話なわけで。

「なら良いんだけど...。」

店長が不安そうにつぶやくのを、苦笑しながら大丈夫と返したものの、自分でそう言っていることに余計におかしく思えてくる。


 そして、今日もまた忙しく業務をこなしていると、あっという間に時間は過ぎていき、営業中の札を裏返す。

最後の客の使った食器を洗っていると、帰りの挨拶をしながら絵里がこちらに視線を投げてくる。

わかってるから、少し待っててくれと心の中で思っていると、その視線に気づいたのか店長が言った。

「後は僕がやっておくから、小柳くんはあがっちゃってよ。タイムカードも切っておくからさ。」

ありがたい気遣いなのだが、余計に誤解を広げてしまっているようで心苦しい。

「ありがとうございます、店長。」

私はそう返事をすると、お言葉に甘えて絵里の後を追うように店の裏口を足早に去っていった。

背中に店長からの視線を感じながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ