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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:33

 そして翌日。

目を覚ますと、いつものように絵里はいなくなっていて、微かな香りだけを残して消えていた。

寝て、起きても遥はいるのに、絵里はいなくなるので、どちらが幻なのかと少しおかしく感じて笑ってしまう。

顔に落書きをするのは強めに叱ったので、次からは無くなったが毎回なにかしらの悪戯は仕込まれていた。

ある日はPCのディスプレイに全画面表示でホラー画像が表示されていたり、ある日はタバコが全て上下逆さまに入れ直されていたり、ある日は床にトランプタワーが築かれていて。

異変を探すゲームなのかと思うほど、手を変え品を変え、なんらかの悪戯が仕込まれていた。


 今日はなんだろうなと、身体を起こして遥に声を掛ける。

「おはよう、遥。」

遥もドッキリを仕掛ける側なのか、見つけるまでは教えてくれないが、私が仕掛けに近づくと笑ってしまってバレることもあったり。

普段は私が声を掛ければすぐに返事をするし、声を掛ける前に挨拶されることも多い。

だが、今日は遥の声が聞こえなかった。

遥の声を聞くために常駐させている会議アプリが動作しているか確認したが、問題はない。

WEBカメラが映す、セルフビューにも遥の姿はない。

「遥?」

もう一度声を掛けてみたが、やはり返事は返ってこなかった。


 今までとは違う異変に少し動揺しながらも、焦っても解決しないとタバコに火を付けた。

一口、吸って吐くと、違う考えを思いついてスマホに手を伸ばした。

タバコを咥えながら、カメラアプリを起動させて部屋の中をぐるりと映していくが、そこにも遥の姿は映らない。

見落としがないかと、もう一周部屋の中を映していると、スピーカーから小さく声が聞こえた。

「...ふふっ。」

やっぱり、そういう仕掛けか。

今度は角度を変えて上を見回していくと、天井の角に遥がへばりついていた。

「あぁ、見つかっちゃいましたね。」

私がカメラにその姿を捉えると、遥は笑いながらそう言った。


 そこから、日頃は洗濯や掃除などの家事をしたり、ゲームをしたりしながら、夕方くらいになってようやく家を出るのだが、さっと身支度を整えるとすぐに家を出た。

そう、気になっていたのは配信の報酬。

寝る前に出金の手続きはしていたのだが、本当にそんな大金を得られるのか実感がなかった。

コンビニのATMくらいでしか口座の残高を確認することはなかったのだが、久しぶりに通帳を握りしめ、銀行のATMへと向かって行く。

しばらく記帳していなかったからか、長く続く機械音を聞いていると、ゆっくりとATMから通帳が吐き出される。


"残高:923,802円"


家賃や光熱費の引き落とし前でも、ギリギリ十万円あるかどうかだった通帳に見たこともない数字が刻まれていた。

周りを見渡すが他のATMに客の姿はなかったので、そのまま通帳の数字を見つめながらしばし考え込んでしまう。

いくら下ろすか。3万?5万?

いや、絵里にねだられていた分もあるし7万?もう少し余裕を持って下ろそうか。

考え込んでいると自動ドアが開き、隣のATMで老婆がタッチパネルを操作しだした。

急かされているわけではないが、そろそろ決めないといけないと思い、ATMを操作して7万円を下ろして財布に入れた。


 まだ、時間は昼過ぎでバイトが始まるまでは数時間ある。

急に暖かくなった懐に、自然と足は日頃向かわないところへと向かっていた。

駅直結の商業施設に入ると、服や財布を物色していく。

柄が気に入った、マネキンに飾られたシャツの値札を捲ってみると。

"12,800円(税別)"

日頃よりは重たい財布を考えると、別に問題はないのだが値札を戻すと次へと足は動いていた。

財布や鞄を見ていっていると、綺麗な光沢の革の長財布に目が止まる。

手に取り開いて、手触りや中の造りを確認していると、値段の書かれた紙片が入っているのを見つけた。

"56,800円(税別)"

今使っている財布も傷んできたし長く使うものだから、と心を動かされたが、ぱたりと閉めると元の場所に戻してしまっていた。


 そこから、雑貨屋や本屋を巡ったりして興味を惹かれたものはあったが、買うまでには至らず、空調の効いた商業施設内をうろうろと彷徨っていた。

一通り周り終わると、時間は過ぎていて、まだ蒸し暑さの残る外へ出ていく。

美味しいものでも食べようかと、寿司屋やステーキ屋の前で足を止めたが、気が乗らず中へは入れなかった。

気付けばいつもの牛丼屋の前にいて、自然と中へと入ってしまっていた。

注文。

タッチパネルを操作して並を選ぶと、注文ボタンを押そうとして手が止まる。

自分自身でそれがおかしく思えて苦笑すると、卵に豚汁に、とサブメニューを追加していった。

合計は千円を超えていて、日頃からすると倍以上の金額になっていたが、その数字を見ながらも注文ボタンを押した。

今はこれが精一杯の贅沢なのかもしれない。

散財するのも難しいものだなと思いつつ、日頃より豪華な夕食を食べて、いつもと同じバイト先へと向かって行った。

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