うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:3
幽霊の言葉に、私は夕方の店長の言葉を思い出していた。
大学を卒業してからというものの、なんとなく上手く行かなくて、流されるように、ただ、生きていた。
私の言葉は、誰かの耳に入っているんだろうか?
私の姿は、誰かの目に映っているんだろうか?
灰皿に置かれた煙草は、根元まで焼けて、嫌な臭いを漂わせていた。
不意の幽霊の言葉に、心の内に沈んでいると、
グー。
腹が鳴る。間抜けな音が狭い部屋の中に響いた。
視界は色を取り戻し、ちらつく蛍光灯の光が、黄ばんだ壁紙を鈍く照らす。
「ごめんなさい。お腹も空いちゃいますよね。」
ディスプレイ越しの幽霊は、口に手を当て、身体を震わせ微笑んでいた。
なんだか悩んでいたのが、馬鹿らしくなってきて、私もいっしょになって笑っていた。
何か食べようかとも思ったが、冷蔵庫にはマヨネーズくらいしか入っていない。
時計を見ると、短針が水平からわずかに下に落ちてきていた。
コンビニにでも行って、カップ麺でも買おうかとスマホを手に取った。
電源ボタンを押して、画面を点けると、その端にはカメラのアイコンが映っている。
これは。
PCに付いているWEBカメラに映るなら?
私はスマホのカメラのアイコンを押すと、そこにいるだろう幽霊に言った。
「ちょっと、そこを動かないでね。」
横目で見たディスプレイには、律儀に背筋を伸ばして立っている幽霊の姿が映っている。
ゆっくりと、スマホのカメラを向けていくと、小さい画面の中に白い幽霊の姿が綺麗に映っていた。
なるほど。WEBカメラだけではなく、カメラならなんでも映るのかもしれない。
そう思うと、嬉しくなってきてシャッターのボタンを押した。
狭い部屋の中に、乾いたカシャリという、少し大きい音が鳴る。
小さくなったサムネイルを押して、全画面表示にすると、そこには白い靄の上に人の顔に見えなくもない、霞んだ姿が映っていた。
心霊写真だ。
いや、幽霊を撮っているんだから、心霊写真なのはそうなのだが。
おかしくなって、笑いながらその画面を幽霊のいる方向に向ける。
「バッチリ撮れたよ、心霊写真が。」
ディスプレイを見ると、幽霊がスマホの画面をのぞき込んでいた。
「ちゃんと映ってないですね。私、ちゃんと動かずに待ってたのに。」
その言葉に、また私は笑ってしまっていた。
そうしていると、また腹の音が鳴ったので、改めてコンビニに行こうかと思ったのだが、変な事が気になった。
幽霊を置いていってもいいんだろうか?
ふと、幽霊に問いかけてみる。
「コンビニ行くんだけど、いっしょに行く?」
少し部屋の中に戻って、ディスプレイを横目に見る。
スピーカーを通して、返事が返ってきた。
「行きます!行きたいです。連れていってくれるんですよね?」
もちろん、と返事をすると、イヤホンを耳に詰め、キーケースをポケットに入れて家を出た。




