うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:26
絵里が無理やり家に来ると言い出した、午前0時半過ぎ。
止まない雨の中、帰り道の途中にあるコンビニに寄った。
傘の雫を払い、店内に入っていくと、いつもの外国人の店員がカタコトのイラッシャイマセで迎えてくれる。
普段は気にもしていないのだが、今日は絵里を連れていることもあって、好奇の目で見られているような気がして、なんだか居心地が悪い。
適当に飲み物や弁当を手に取っていると、絵里が声を掛けてきた。
「小柳さん家にメイク落としとかトリートメントとか、化粧水とか乳液とか無いですよね?あったらあったで引きますけど。」
じゃあ聞くなよ。
「ないよ。」
私が短く返すと、絵里はトラベルセットのコスメ類をカゴに詰めてレジへと向かって行った。
会計を済ませて、外に出ると雨足が強くなっていて、音がするほどザンザンと降り注いでいた。
「うわー...。」
ゲンナリとしながら傘を開いて、絵里を入れながら歩いていくと、ふと絵里の肩が身体に触れる。
首を向けると、絵里はこちらを上目遣いに見上げて言う。
「もう...。くっつきたくてくっついてるんじゃないんだからね。」
そのままくっついていると、さらに余計なことを要求されそうだったので、身体を捩って離れようとすると。
「あー!小柳さん、サービスしてあげてるのになんで避けるんですか!離れたら濡れちゃうじゃないですか!ちゃんと入れてくださいよ、もう。」
そんな話をしながらも、コンビニから家までは大した距離もないので、五分も掛からずに家に着く。
玄関のカギを開け、ドアを開く。
「ただいま~。」
「おじゃましま~す。」
そう言うと、部屋の奥から声が返ってくる。
「おかえりなさい陽介さ...ん?」
困惑しているような遥の声が聞こえてくると、絵里は驚きながら尋ねてくる。
「やっぱり彼女いるんじゃないですか。さすがに気まずいんで帰ろうかなぁ...。」
そうしてくれると助かる。
じゃあ、これでお泊りイベントは回避できたかと思っていると。
「誤解させちゃうと悪いんで、ご挨拶だけしていきますね。」
結局、回避できないルートらしかった。
そして、絵里は部屋に入っていきながら、声を掛けようとするが。
「すみません、急に押しかけちゃって。同じバイト先なんですけど、終電逃して雨が降ってき......?」
絵里はキョロキョロと狭い部屋の中を見回す。
だが、もちろんそこには誰の姿も無い。
絵里が困惑していると、スピーカーから遥の声が響く。
「それは災難でしたね。せっかく来ていただいたのに、私はお構いできないんですけど。」
その声を聞くと、絵里はさらに混乱してきたようで。
「えっ?なに?どういうこと?どこから?カメラ?」
このままだと埒が開かないので、間に入ってそれぞれを紹介した。
「こちらはバイト先の清水絵里さん。終電が間に合わなくて、雨も降ってきたから家に泊めて欲しいんだって。」
そう伝えると、スピーカーから声が返ってくる。
「そうでしたか。いつも陽介さんがお世話になっております。」
相変わらず状況がわからない絵里に、PCのディスプレイを指して、今度は遥を紹介する。
「家に住んでる、幽霊の菅遥さん。直接は見えないし、声も聞こえないけど、PCやスマホを通せば、ちゃんと映るし聞こえる。」
説明をしたが、絵里は信じられないのか画面に映る自分の姿と、遥がいるだろう場所を交互に見回す。
「AIとかCGじゃなくて?そういうのを作ってるとかじゃないの?」
信じられないのは無理もない。
私もそうだったし。
PCに映っているだけだと、そういうアプリにも見えるので、違う方法で確認してもらうことにした。
「自分のスマホ開いて、カメラで見てみて。」
絵里が恐る恐るスマホを操作し、カメラを向けると、遥が両手でピースしている姿が映っている。
さらに絵里が違う方向にカメラを向けたり戻したりとしていると。
スピーカーから遥の声がする。
「えへへ。これで信じてもらえました?」
まだ半信半疑で消化できていないのか、絵里は神妙な顔で考え込んでいた。
追加でさっきの絵里の疑問に対しての回答をする。
「だから、俺が配信をやってるわけじゃないし、彼女もいないけど、配信には関わってるってこと。これでわかった?」
そう伝えたが、まだ絵里はうーんと唸っていた。
お腹も空いたし、とコンビニで買ってきた弁当をレンジで温めようとしていると。
「くちゅん!」
絵里が可愛らしいくしゃみをすると、続けて言った。
「いろいろ聞きたいことはあるんですけど、とりあえずシャワー借りていいですか?」




