うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:25
色とりどりの看板が光る、駅前の通りに絵里は立ち止まる。
雨は紺のTシャツを濡らし、斑にシミを作っていく。
私は隣にいなくなっている事に気付き、慌てて駆け寄ろうとすると、絵里が口を開いた。
「いつから...。いつから気付いてたんですか?」
何を聞かれているのだろうか。
「気付く?何のことを...。」
今までのことを思い出しながら、そう言いかけて、全てが繋がった。
「あー...。ごめん絵里ちゃん。今、気付いた。」
私が答えると、絵里は暗く俯いていた顔を上げ、今度は顔を真っ赤にしてまくし立ててきた。
「えっ!?別に気付いてたわけじゃなかったんですか?自爆?恥ずかしいじゃないですか!なんなんですか、もう!」
とりあえず、絵里を宥めながら近くの店の軒先まで行き、雨宿りしながら話を続けた。
「思ってたより身近な人でびっくりしたけど、配信やってたんだね。残業にならないようにとか、シフトとかは協力するよ。」
私がそう言うと、絵里はまた怒りだした。
「そういうことじゃないんです!職場バレとか最悪じゃないですか!もうやだ!どんな顔してバイト行けばいいんですか!」
バイトでの大人しい印象とは違って、配信以上のテンションで感情を爆発させる。
「まあまあ、たぶん気付いてるのは俺だけだし。他の人に教えたりとかはしないから大丈夫、大丈夫。」
宥めてはいたが、絵里の機嫌はなかなか直らないようで、まだムスッと頬を膨らませていた。
「Xにもバイトの愚痴とか書いてるし...。あ、ヤバ。小柳さんの悪口とか書いてるかも。」
赤くなっていた絵里の顔は、今度は青へと変わって行っていた。
どうだっただろうか?前に読んだ限りだと、店の人間への悪口は店長に対してくらいだった気が。
私が記憶を辿っていっていると、絵里も同じように記憶を辿っていたのか、あることに気が付く。
「あれ、黄泉乃ヒカリって小柳さんなんですか?バ美肉?」
攻守交替。答えにくいことを質問された。
「いや、俺じゃないよ。関係はしてて、それでたまたま知っちゃったんだけど。」
それを聞いた絵里は、険しい顔をして悩みだした。
「小柳さん彼女いないですよね?モテなさそうだし。家族?親戚?誰なんですか?」
しれっと失礼なことを言われた。別に自分自身でも顔立ちが整っている方だとは思っていないが、少し傷ついた。
しかし、幽霊がやっていると言っても、それはそれで信じてもらえなさそうだし、どう言い訳しようか。
そんなことを考えていると。
「あっ!ヤバ!終電過ぎちゃったじゃないですか。小柳さんが変なこと言うから。」
時間はいつの間にか進んでいて、0時30分。
5分くらい前に下りの電車は終わっていた。
「小柳さん家って、ここから徒歩なんですよね?責任取って泊めてくれます?もちろん、変なことしたらすぐ警察に通報しますけど。」
なんだか思ってもない方向に勝手に話が進んでいっていた。
女性を泊めるというのも問題だし、家には遥がいるし。
「いや、家はちょっと...。」
なんとか断ろうとすると、追撃される。
「汚部屋なんですか?それだったら嫌ですけど。」
「ちゃんと掃除はしてるよ。そういうことじゃなくて...。」
「ならいいじゃないですか。多少変な趣味のものとかが置いてあっても気にしないんで。」
「じゃあ、タクシー呼ぶ?」
「お金無いんでいいです。家まで乗ったら8千円くらい掛かるし。」
「なら、ネカフェは?始発までそこで。」
「それこそ嫌ですよ。あそこのネカフェ臭いし汚いし変な客いるし。」
半ば強引に家に来ることを決められてしまい。
「歩いて10分も掛からないんですよね?濡れちゃってシャワーも早く浴びたいし、早く連れていってください。」
それからも抵抗は続けていたが、引きずられるようにして雨の降り続く夜の道を、二人で家へと帰っていった。




