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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:24

 深い森の中。

真っすぐに伸びる道の先には明かりが見えていて、白い女が先を歩いていた。

脇を見ると、木立の奥には岩肌がむき出しの崖が見えていて、深い谷になっている。

その女の後を追って歩いていると、女は時折振り向いて、こちらへ手招きをする。

しばらく歩いていると、カサカサと何かが動く音がした。

辺りを見回すが、そこにはただ森が広がっていて、特に何も見えない。

さらに歩いていくと、その音はだんだんと大きくなり、近づいてくる。

ふと、振り向くと足元は黒い虫に埋め尽くされていた。

それは身体を登ろうと、足に取りつき這い上がる。

振り払って逃げようとするが、虫はどんどん増えていき、背後を黒い霧のように追ってくる。

走る足はもつれ、転んで地面に倒れると、這う虫に身体を覆われていく。

助けを求めようと、先を歩く女に手を伸ばす。


 そこで目が覚めた。

まだ、ぼんやりとしている意識の中、二つの声が聞こえてくる。


「Hey Siri!ゴキブリは何月くらいが多いんですか?」


「はい。一般的には7月から8月が多いです。」


「Hey Siri!ゴキブリを退治するにはどうすればいいんでしょうか?」


「はい。毒エサ(ベイト剤)の設置とスプレーの併用が効果的だとされています。」


どうやら、遥が昨日覚えたSiriと会話しているようだった。

悪夢の内容はこれのせいか。

身体を起こすと、それに気づいたのか遥が振り向いた。

「おはようございます陽介さん。今日もいいお天気です。ただ、夜半から雨が降るかもしれないので、傘を持っていった方が良いですよ。」

おそらく、今日の天気もSiriに聞いていたんだろう。

聞かなくても勝手に教えてくる、デジタルアシスタント幽霊になっていた。


 軽い頭痛を抱えながら、スマホの画面を開くと大量の通知。

昨日の時点でも多かったが、投稿への反応はさらに増えていた。

外国人観光客の反応もあるのか、英語だけではない、返信やDMも飛んできていて。

煙草を片手に持ち、なぞっていくがほとんどはどうやって作ったのかとか、激励やスパムだったり。

読み飛ばしていっていると、あるDMに目が止まる。


甘音 マカロン@amane_makaron

めっちゃバズってるじゃん!おめでとう!頑張ってね!


自分のことのように嬉しくて、遥にもそれを開いて見せる。

「甘音さん!すごい嬉しいです!」

遥は続けて、私に頼んできた。

「陽介さん、お礼のメッセージを送ってもらえますか?ありがとうございます。これも、甘音さんにいろいろ教えてもらったおかげです。って。」

私もお礼をしたかったので、すぐに返信を送った。


 そんなことをしながらも、仕事がなくなるわけではないので、夕方くらいになると居酒屋のバイトへと出かける。

夏の盛りは過ぎ、日が陰ると少し涼しくなってきていた。

駅前までの途中にある、小学校の花壇に咲いている花も色合いが変わっていて、遥が見れば写真を撮りたがるだろう。

そうして、今日もドタバタと忙しい仕事を終えると、いつものように絵里ちゃんはそそくさと帰っていった。


 少し遅れて、私も階段を降りていくと、ビルの入り口で絵里ちゃんが立っている。

外はしとしとと雨が振っていて、強く振っているというほどではないが、駅までの距離を考えればそれなりに濡れてしまうだろう。

「絵里ちゃん傘持ってこなかったの?」

私がそう聞くと、絵里はめんどくさそうに答えた。

「昼はあんなに晴れてたのに。小柳さんは傘持ってきたんですか?」

私は遥に言われていたので、傘を持ってきていたが、絵里は持ってきていなかったようで。

天気予報で言ってたから、と適当に返すと絵里が尋ねる。

「これ、少し待ってたら止みますかねぇ?」

止むかどうかはわからないし、ずっと待っていたら終電がなくなるので、提案してみた。

「駅まで送って行こうか?俺は徒歩だし。」

そう言うと、絵里は不満そうに答える。

「小柳さんと相合傘ですか?まぁ、いいですけど。」

その嫌そうな態度に少し苛立ったが、年頃の女性はそういうものだろう。


 傘を開いて、駅までの道を歩いていく。

黙っているのも気まずいので、何を喋ろうかと思っていると、絵里がつぶやいた。

「どうしたらバズるんですかね?」

日頃の表情とは違って、固く何かを考え込んでいるようだった。

この前の会話の違和感もあったので、あることを聞いてみた。

「バズ?絵里ちゃん配信とかしてるの?」

そう問われると、絵里は戸惑い言葉に詰まる。

「いえ...。いや、そうなんですけど、配信というか...。」

なんだか歯切れが悪い。

あまり触れて欲しくないところなのだろうか。

話題を少しズラそうと、最近の話をしてみた。

「浜野先輩に教えてもらったりして、最近Vtuberとか、スマホの配信を見たりするようになったんだよね。」

そう言うと、絵里の歩みが一瞬止まる。

わずかな時間だったので、それに気づかずに続きを話していた。

「大手の事務所とかじゃないんだけど、甘音マカロンって人の配信を最近見てて。」


絵里の足は完全に止まり、傘から外れて晩夏の雨に濡れていた。

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