うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:23
秋葉原まで行って買ってきたiPad。
さっそく利用するために初期設定を行っていく。
その途中で出てきた、ある設定でふと手が止まった。
Siri。
もしかして、これを利用すれば遥もiPadを操作できる?
「遥、画面に指示が出るから、その通りに読み上げていって。」
私がそう言うと、遥は画面に出てきた文字を順番に読んでいく。
「Hey Siri。今日の天気は?」
遥が声を掛けると、チェックマークが表示され、ちゃんと認識されたようで。
次々と読み上げていったが、チェックマークが付いていき、設定が完了する。
「これはどういう機能なんですか?おしゃべりしたら、答えてくれるんですか?」
遥は首を傾げながら、不思議そうに見ていた。
「そうそう。画面を触らなくても、声を掛けたらいろいろしてくれるんだよ。」
そう答えて、自分のiPhoneで実演して見せた。
「Hey Siri。明日の天気を教えて。」
私が呼びかけると、機械音声が明日の天気を読み上げていった。
「すごい!タブレットが喋るんですか!?未来の技術!?」
なかなか良い反応だった。
こういうものは、自分が使うよりも人が使っているのを見る方が面白いかもしれない。
「設定は終わったから、遥も使ってみて。天気だけじゃなくて、何か調べて欲しいものがあれば、そういうのを聞いても教えてくれるよ。」
そこからしばらく、遥はいろいろとSiriに聞いていて、それを見ているだけで面白かった。
「Hey Siri!日本で一番高い山を教えて!」
「Hey Siri!世界で一番深い海はどこ?」
「Hey Siri!フランスの有名な料理を教えて!」
遥が問いかけると、Siriは次々に答えていった。
「すごいです!陽介さん!Siriさんなんでも知ってます!」
検索してるからそれはそうなんだけど、初めて現代技術に触れた古代人のようで可笑しかった。
今まで遥とした話からすると、遥とはそんなに世代差があるわけではないはずなんだけど。
そうして、遊んでいると夜も更けてきて、いつも配信している時間になったので、配信を始めていく。
遥がiPadで配信をしている横で、ようやく解放された自分のスマホで配信告知をしようとすると、通知欄が埋め尽くされていた。
昨日まで二桁だったXのフォロワーは四桁になりそうな勢いで増えていて、いいねや返信が山のようについている。
ビューに至っては数万に達していて、何が起こっているかわからない。
配信も次々に新しい視聴者が入ってきて、今までは片手で足りるくらいの人数だったのが、気付けば100名を超えていた。
遥があわあわと急に増えた視聴者に驚いていると、返事をする間もなくスターが飛び交っていく。
私は私で、何が起きているのか調べようとしていると、Xの返信で原因が見えてきた。
どうやら、今日秋葉原へ出かけたのが、他の人のカメラにも写り込んでいたらしい。
あちこちで心霊写真の画像が投稿され、その震源地としてここまで多くの人が押し寄せてきているようだった。
返信には加工やAIを疑う声や、何かのプロモーションを勘ぐったり、陰謀論のような声もあり、反応は混沌としている。
そんな濁流の中、なんとか遥は配信を続けていたのだが、あるところで声が止まった。
何が起こったのかと思い、画面を覗き込むと視聴者から、とあるコメントが送られてきていた。
特盛チーズ牛丼:ヒカリさんって本物の幽霊なんですか?
遥はどう答えて良いかわからず、おろおろとしている。
見かねて、PCのキーボードを叩いて指示を出した。
"はい。って言っちゃって大丈夫!そういう設定だから、って後で言い訳できるから!"
遥はコクリと頷くと、また言葉を紡いでいく。
視聴者数は減るどころか、どんどん増えていき300名に達している。
コメント欄は高速でどんどん流れていき、読む間もなく勢いよく追加されていっていた。
"コメントは全部拾わなくて良いよ!無理せずに自分のペースで話して!"
明らかにキャパシティーを超えてそうだったので、追加で指示を出すと、慣れないながらも遥は少し落ち着いていった。
慌ただしくあれこれと対応していると、あっという間に時間は過ぎていき、いつもは配信を終える時刻を過ぎていた。
"遥!そろそろ配信止めよう。コメントは全部拾わなくていいから、今日は終わりにしよう。"
遥はその指示を見ると終わりの挨拶を始め、それを言い終わるのを聞くと、私は配信終了のボタンを押した。
画面に配信終了の文字が流れると、遥はふにゃりと崩れ息を吐いた。
「ふわぁ~。びっくりしました。たくさん見てもらいたいとは思っていましたが、こんなに増えるなんて。」
私としても全く想定外だった。
秋葉原で撮った写真を投稿してから、数時間しか経ってない。
だが、配信をしている間にもXのビューは増えていて10万を突破している。
これが良いことなのか悪いことなのかわからなかったが、少なくとも配信としてはプラスに働いてはいる。
今まで小遣い程度にもならなかったスターも、今日の配信だけで数万ポイント以上飛んでいた。
「急だったけど、とりあえずバズったんだよ。明日はどうなるかわからないけど、ひとまず喜ぼう。」
私がそう言うと、遥は静かに頷いていた。
「そうですね...。ちゃんと出来たかわからないですが、たくさんの人に見てもらえましたもんね。」
そうして、急激に動き出した夜はひとまず終わり、一時の静寂へと戻っていった。




