うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:21
配信活動の一環として、Xのツイートを始めてからしばらく。
いくらかビューは付いていたが、ふんわりとした投稿と、お花の写真くらいだったので大して伸びてはいなかった。
Xのフォロワーの内訳も、配信を見に来てくれた方がオマケでフォローしてくれたのと、スパムアカウントみたいなものくらい。
こんなものと言えばそうなのだが、増えない数字に少し焦りを覚えていた。
そこであることを思いつく。
「遥、Xのツイートで一つ提案があるんだけど。」
私が改まってそう言うと、遥は背筋を伸ばして答えた。
「はい、なんでしょう陽介さん?何か面白いことでもやってみるんですか?」
そんなに特別なものではない。
ただ、遥がやってくれるかが問題で。
「遥の自撮り写真を載せてみよう。心霊写真っぽい、というか実際心霊写真だから、けっこうバズると思うんだよね。」
想定してはいたが、その提案に遥はあまり良い感触を示さなかった。
「少し恥ずかしいですし、ネットに自分の写真を載せるのはあまり良くないのでは...。」
遥の反応は尤もだった。
ただしそれは、"生きている人間"の場合の話である。
「ネットに自分の写真を載せるのが良くないのは何故だと思う?遥。」
遥はうーん、と考え回答していく。
「個人を特定されるからでしょうか?そこから、住所や本名を調べられたりとか、ストーカーや嫌がらせがあったりするから?」
模範解答と言っていいだろう。
しかし、遥の場合はそうならない。
「幽霊になってる遥を、そういう人たちはどうやって見つけるのかな?仮にここの住所がわかったとしても、遥の姿は見えないのに。」
私が説明すると、遥は頷いていた。
「たしかにそうですね。心配する身がないのは、喜んでいいのか悲しんでいいのかわからないですけど。」
さらに遥のいる辺りを、スマホのカメラで写真を撮って、その画面を見せた。
「あぁ...。私が映ってるんでしょうけど、顔ははっきり見えないし、少し靄が掛かって透けてますね。」
そう、WEBカメラで動画として映っている分には、動きもあるので割とはっきり見える気がするのだが、静止画になると靄や透過が目立ってしまい、心霊写真レベルでしか映っていなかった。
「これなら、私が心配していたことは問題なさそうですね。できればもっとかわいく撮って欲しかったんですけど。」
遥は笑いながら、少しいじわるそうに言った。
高いカメラだったら、もう少しちゃんと映るのだろうか?
まぁ、それは懐に余裕が出たときにまた考えよう。
「さっそくなんだけど、この前の公園に行って写真撮ろうか。今度は花の写真じゃなくて、遥の写真をね。」
私がそう言うと、遥は案外乗り気で。
「深夜の街灯の下に佇む白い影。シャッターを切るたびにそれは徐々に近づいて来て...。ホラーですね。」
もう、気分はホラー映画の登場人物になっているようだった。
逃げる方じゃなくて、襲う方の。
そうして、虫の声だけいくらか聞こえる深夜遅く。
近所の公園に着くと、遥に指示を出して撮影を始めて行く。
「遥ー!その街灯のちょうど下で、真っすぐ立って、少し俯いてこっち向いて。そうそう、そんな感じ。」
シャッターを何度か切ると、次の指示を出していく。
「そこから三歩くらいこっちに寄って。右手だけこっちに伸ばして。そうそう、良いよ遥。」
私もすっかりカメラマンの気分になっていた。
「今度は腕は降ろして、首を思いっきり横にグッと。めっちゃホラー!さすが遥、ポーズ取るの上手いよ。」
撮影を続けて行っていたところで、ここまでに撮った写真を確認していた。
白飛びした街灯の下で、ぼやけている姿はすごく幽霊っぽいし、近づいてくる姿はまさにホラー映画のワンシーン。
まぁ、本物の幽霊なんだから、リアルさで負けるわけがないのだが。
そして、続きを撮ろうと街灯の方にカメラを向ける。
遥がいない?
左右へカメラを振ってみるが、それらしい姿は映らない。
「遥?」
声を掛けながら、後ろの方まで振り返ると、画面いっぱいに遥の姿が映る。
「うわっ!遥!?」
飛び退こうとして、足がもつれて尻もちをつく。
イヤホンを通して、遥の声が聞こえてきた。
「ごめんなさい陽介さん、お怪我はないですか?撮った写真に夢中になってるようだったから、少し驚かそうと思って。」
ホラー風の写真を撮ろうとは言ったが、別に実演はしなくてもいい。
怪我はなかったが、寿命は少し縮まったかもしれない。
「ほんと驚いたよ遥。怒ってないけど、こういう悪戯はあんまりしないでね。びっくりして死んじゃうかもしれないから。」
冗談交じりにそう言うと、遥は少し俯きながらも、同じく冗談交じりに返してきた。
「それは私も困るので気を付けますね。"たまに"しか、しないようにしますね。」
そんな話をしながら、残りの2~3カットを撮り終わり。
夜更けの街灯がちらつく道を、家へと帰っていった。




