うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:20
そんな休日を過ごしたりしながら、気付けば配信生活も二週間が過ぎ。
ちょこちょこと新しい視聴者やフォロワーは増えていっていたが、大した数ではなく、日によってゼロだったり、多くても片手で数えられるくらい。
配信プラットフォームの仕組みもわかってきたし、遥も配信に慣れてきた。
そろそろ、視聴者を増やしていきたい。
ということで、遥にあることを提案する。
「遥。SNSをやってみよう。」
遥はゆっくりと、何かを思い出しながら答えた。
「SNSですか...。mixiでしたっけ?Twitterとか?」
前にも同じようなことはあったが、遥のネット知識は少し古かった。
簡単にSNSの流行りの移り変わりだったり、Vtuberの配信告知だったりを説明していくと。
「良いですね陽介さん!配信以外で、いろんな人に伝えられる場になるし。」
そして、遥用に新しいXのアカウントを作成して、適当にいくつかのツイートを見ていく。
「今はこういう感じなんですねぇ。絵とか短い動画とか、短い文章だけではないんですね。」
浦島太郎な遥の知識を更新していきながら、他の配信者の人のツイートも漁っていった。
当たり前といえばそうなのだが、甘音さんのアカウントもあったので、それを見ていくと。
@amane_makaron
今日も!バイトが!忙しい!
@amane_makaron
店長ウザい。シフト入れないでよ。
@amane_makaron
ピックアップ引けた!今回は天井までいかなくて良かったぁ。
@amane_makaron
枠建てたよ~。見に来てね~。
@amane_makaron
ライブ当選したんで、来週日曜の配信はお休みです。あと、ご飯がしばらく素うどんです。
@amane_makaron
夏休みだからって居酒屋に飲みにくるんじゃねぇ!大学生は真面目に勉強してろ!
半分くらいバイトの愚痴、残りの大半は趣味や生活の話で、配信関係のツイートはおまけ程度だった。
配信や、遥の配信を見に来てくれた時のコメントはやさしく、面倒見が良い感じだったが、ツイートはずいぶんやさぐれた感じで生々しく。
ある意味そういうものではあるのだが、身近な人の裏の一面を見てしまったようで。
遥はそんなツイートを見ながら、つぶやいた。
「思ったことを素直に書いても良いんですね。日頃の印象とは少し違いましたが、親しみが持てて。こういう方法もあるんですね。」
まぁ、間違ってはいないが、加減や限度というものがあるので、遥にはもう少し節度を持ったツイートをお願いしたいところだが。
せっかく、アカウントを作ったところだし、何かツイートしたいことがないか聞いてみると。
「そうですねぇ...。最近のことだと、近所の公園でリンドウが咲いてたんですよ。すごく綺麗だったので、それを伝えたいです。」
それを聞いて、遥らしいというか、少しおばあちゃんくさいなぁなんて苦笑していると、違和感に気付く。
近所の公園?どこだ?いつ見に行った?
気になったので、率直に質問する。
「リンドウはどこにあったの?いつ見たの?」
遥は突然の質問に少し驚いていたが、穏やかに微笑んで答える。
「駅に行く途中の、小学校近くの公園ですよ。あそこは季節の花がいろいろ植えてあって、見に行くたびに違う花が咲いているんです。」
確かに、小学校の近くに小さい公園がある。広めの花壇があって、何か植えてあった気はする。
しかし、いつ見に行っているんだろうか。考え込んでいると、笑いながら遥が続ける。
「陽介さんが寝てたり、バイトに行っている間にたまにお散歩してるんですよ。最近はベランダから出た方が早いから、そっちから出ちゃってるんですけどね。」
同居しているようなものだが、知らなかった一面だった。
ずっといっしょにいるようで、顔を合わせている時間は一日の三分の一もない。
知らない時間の方が多い。
その時間には私の前にいるものとは違う遥がいる。
遥がいる生活に慣れてきたつもりだったが、そう考えると新鮮な感覚があった。
今日も配信を終えた後で、夜はすっかりと更けて、夜明けの方が近かったがその知らないものを見たくなった。
「今から公園に行って、リンドウ見に行こうか。」
私がそう言うと、遥は元気よく返事をした。
「はい!まだ咲いていると思うので、見に行きましょう!きっと、夜の灯りに照らされて綺麗ですよ。」
そうして、夜の静まり返った道に出て歩いていく。
通行人の姿は見えず、車の走る音も聞こえない。
公園はそう遠くなく、五分も掛からず辿り着いた。
近所に住んでいるが、公園の中に入るのは初めてかもしれない。
夜中でも灯っている街灯には、蛾や羽虫が集まり、飛び回っていた。
申し訳程度の、パンダの遊具が置かれた小さい公園に入っていくと、背の低い花壇がいくつか並んでいる。
その内の一つが、深夜のわずかな明かりの中にくすんだ藍の色を返していた。
「これか。綺麗だね。ありがとう遥。」
花壇の一角にリンドウが閉じた花を並べていた。
光が強く当たっているところは、わずかに花弁を開いていて、昼間の姿を感じさせている。
「夜のリンドウも良いですね。藍が濃くて、また違った色に見えて。」
何枚か写真を撮って、部屋に帰るとさっそくツイートを書いていく。
文面は遥の言葉を整えて、画像を添えて。
@yomino_hikari
真夜中のお散歩。満開のリンドウが夜明けを待っていました。
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