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うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???  作者: 入舟三叉


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20/31

うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:20

 そんな休日を過ごしたりしながら、気付けば配信生活も二週間が過ぎ。

ちょこちょこと新しい視聴者やフォロワーは増えていっていたが、大した数ではなく、日によってゼロだったり、多くても片手で数えられるくらい。

配信プラットフォームの仕組みもわかってきたし、遥も配信に慣れてきた。

そろそろ、視聴者を増やしていきたい。

ということで、遥にあることを提案する。


 「遥。SNSをやってみよう。」

遥はゆっくりと、何かを思い出しながら答えた。

「SNSですか...。mixiでしたっけ?Twitterとか?」

前にも同じようなことはあったが、遥のネット知識は少し古かった。

簡単にSNSの流行りの移り変わりだったり、Vtuberの配信告知だったりを説明していくと。

「良いですね陽介さん!配信以外で、いろんな人に伝えられる場になるし。」


 そして、遥用に新しいXのアカウントを作成して、適当にいくつかのツイートを見ていく。

「今はこういう感じなんですねぇ。絵とか短い動画とか、短い文章だけではないんですね。」

浦島太郎な遥の知識を更新していきながら、他の配信者の人のツイートも漁っていった。

当たり前といえばそうなのだが、甘音さんのアカウントもあったので、それを見ていくと。


@amane_makaron

今日も!バイトが!忙しい!


@amane_makaron

店長ウザい。シフト入れないでよ。


@amane_makaron

ピックアップ引けた!今回は天井までいかなくて良かったぁ。


@amane_makaron

枠建てたよ~。見に来てね~。


@amane_makaron

ライブ当選したんで、来週日曜の配信はお休みです。あと、ご飯がしばらく素うどんです。


@amane_makaron

夏休みだからって居酒屋に飲みにくるんじゃねぇ!大学生は真面目に勉強してろ!


半分くらいバイトの愚痴、残りの大半は趣味や生活の話で、配信関係のツイートはおまけ程度だった。

配信や、遥の配信を見に来てくれた時のコメントはやさしく、面倒見が良い感じだったが、ツイートはずいぶんやさぐれた感じで生々しく。

ある意味そういうものではあるのだが、身近な人の裏の一面を見てしまったようで。


 遥はそんなツイートを見ながら、つぶやいた。

「思ったことを素直に書いても良いんですね。日頃の印象とは少し違いましたが、親しみが持てて。こういう方法もあるんですね。」

まぁ、間違ってはいないが、加減や限度というものがあるので、遥にはもう少し節度を持ったツイートをお願いしたいところだが。

せっかく、アカウントを作ったところだし、何かツイートしたいことがないか聞いてみると。

「そうですねぇ...。最近のことだと、近所の公園でリンドウが咲いてたんですよ。すごく綺麗だったので、それを伝えたいです。」


 それを聞いて、遥らしいというか、少しおばあちゃんくさいなぁなんて苦笑していると、違和感に気付く。

近所の公園?どこだ?いつ見に行った?

気になったので、率直に質問する。

「リンドウはどこにあったの?いつ見たの?」

遥は突然の質問に少し驚いていたが、穏やかに微笑んで答える。

「駅に行く途中の、小学校近くの公園ですよ。あそこは季節の花がいろいろ植えてあって、見に行くたびに違う花が咲いているんです。」

確かに、小学校の近くに小さい公園がある。広めの花壇があって、何か植えてあった気はする。

しかし、いつ見に行っているんだろうか。考え込んでいると、笑いながら遥が続ける。

「陽介さんが寝てたり、バイトに行っている間にたまにお散歩してるんですよ。最近はベランダから出た方が早いから、そっちから出ちゃってるんですけどね。」


 同居しているようなものだが、知らなかった一面だった。

ずっといっしょにいるようで、顔を合わせている時間は一日の三分の一もない。

知らない時間の方が多い。

その時間には私の前にいるものとは違う遥がいる。

遥がいる生活に慣れてきたつもりだったが、そう考えると新鮮な感覚があった。

今日も配信を終えた後で、夜はすっかりと更けて、夜明けの方が近かったがその知らないものを見たくなった。

「今から公園に行って、リンドウ見に行こうか。」

私がそう言うと、遥は元気よく返事をした。

「はい!まだ咲いていると思うので、見に行きましょう!きっと、夜の灯りに照らされて綺麗ですよ。」


 そうして、夜の静まり返った道に出て歩いていく。

通行人の姿は見えず、車の走る音も聞こえない。

公園はそう遠くなく、五分も掛からず辿り着いた。

近所に住んでいるが、公園の中に入るのは初めてかもしれない。

夜中でも灯っている街灯には、蛾や羽虫が集まり、飛び回っていた。

申し訳程度の、パンダの遊具が置かれた小さい公園に入っていくと、背の低い花壇がいくつか並んでいる。

その内の一つが、深夜のわずかな明かりの中にくすんだ藍の色を返していた。

「これか。綺麗だね。ありがとう遥。」

花壇の一角にリンドウが閉じた花を並べていた。

光が強く当たっているところは、わずかに花弁を開いていて、昼間の姿を感じさせている。

「夜のリンドウも良いですね。藍が濃くて、また違った色に見えて。」


 何枚か写真を撮って、部屋に帰るとさっそくツイートを書いていく。

文面は遥の言葉を整えて、画像を添えて。


@yomino_hikari

真夜中のお散歩。満開のリンドウが夜明けを待っていました。

rindou.jpg

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