うちに住み着いた幽霊が、人気配信者になってチャンネル登録者100万人???:13
浜野先輩にイラストの依頼をしてから数日。
進捗を聞いても、
「何パターンか試作してるから、もうちょい待ってて。」
と言われ、翌日に追加で聞いてみても、
「大丈夫、大丈夫。もうすぐ出来るから、楽しみにしといてよ。」
と。
正直、こういう返事はあまり信用できないなぁ、と思いつつもそれ以上突っ込むことも出来ずに悶々としながら待っていた。
その間、遥はというと案外落ち着いていたもので。
「えっ?イラストの事ですか?先輩が大丈夫って言っているなら、いいんじゃないですか?」
のんびりと構えているので、焦らないのか聞いてみると。
「そうですね。早く始めたいという気持ちはあります。でも、今まで待ってきた月日を考えれば、一週間くらいはそんなに長くはありませんよ。」
そう言う遥を見ていると、急いでいるのは私だけなのかもしれない。
そんな事を考えていると、遥はからかいながら言った。
「ふふっ。そういうところは、陽介さん子供っぽいですね。果報は寝て待てですよ。」
そう言われ、悩んでいると、画面越しには私を指先で突いている遥の姿が映っていた。
そして、Discordで先輩と話をしてから十日。
日頃は週2くらいで、安酒をあおりつつ通話をしていたのだが、それからは全くなくなっていた。
ちゃんと作ってくれているんだろうかと思いながら、仕事から帰ると通知が鳴る。
"出来たぞ。集合。"
待ってましたと、荷物も適当に放り出すとボイスチャットに入った。
何分も経たずに、先輩が入ってきて、その表情はニヤニヤとしながら満足そうにしていた。
「お待たせ陽介。出来たから、これで良いか確認してくれるか?」
先輩は画面共有とチャットで、いくつかの画像を送ってきた。
全身の立ち絵、バストアップ、顔だけとサイズの違う画像。
遥の顔立ちをイメージしながら、アニメ調に寄せつつも、日頃描いているようなライブ用のフラットなスタイリッシュさもある、独特の筆致で。
これは思っていたよりも、新鮮で面白いと感嘆していると、遥がプルプルと震えていた。
「すごい...。かっこいいです!でも、これが私だと思うと、ちょっと恥ずかしくなっちゃいますね。」
遥が照れながら、嬉しそうにしていると、先輩が言った。
「俺なりに、流行りの画風とかも真似てみたんだよ。かわいくて、かっこよくて、ちょっとホラーで。いろいろ直してたら、時間掛かっちまった。」
私も良い出来だと思った。この絵のサムネだったら、見てみたくなるかもしれない。
さらに先輩は続ける。
「あと、サムネ用に表情とポーズの差分も3つ作ったから、とりあえずはこれで足りるかな?追加は時間ある時に作っていくわ。」
そう言うと、ホラーで暗い表情、笑って両手を上げているポーズ、困って怒っているようなものと、背景も変えたサムネ用の画像を送ってくれた。
私としては、一枚絵だけ作ってもらうくらいのイメージでいて、後は加工したり編集しないといけないだろうと思っていたが、簡単な作業で使えるくらいに下準備までされていた。
学生時代から、ずっとライブを開催したりしていたのは聞いていたが、こんなに多才だとは思っていなかったので、改めて先輩に尊敬の念を感じていると、遥がまたプルプルと震えだした。
「やりましょう。初配信。先輩が作ってくれた絵を動かしてみたいです。」
前は私の事を子供っぽいと言っていたのに、今度は遥の方が待ちきれないようだった。
まだ、時間は午前一時。
早い時間とは言えないが、夜明けまでは十分時間があるし、この時間でも少しは人は来るだろう。
じゃあ、と画像に文字を入れようと思ったが、先輩が遮る。
「初回くらいはサービスしとくぜ。そんなに時間は掛からないから、煙草でも吸って待っててくれ。」
画面の向こうから、カチカチとマウスをクリックする音や、キーボードを叩く音が響く。
何分も経たずに、さっきのサムネ用の画像に文字や装飾が入ったものが送られてきた。
それをダウンロードすると、スマホに送って配信の設定を入力していく。
あとは配信開始のボタンを押すだけ。
夏も深い、風のない深夜。
遥の初めての配信が始まる。




