浮かぶ疑念と卑劣漢からの呼び出し
第七章:悪夢の再来
処女を喪失してから三日間、弓果は大学を休み、自室のベッドで震えて過ごしていた。
心身に刻まれた痛みに加え、疑念が濁流のように押し寄せる。
「なぜ、あの男は私の名前を知っていたの?」
「なぜ、あらかじめ縄なんて用意していたの?」
「部外者がどうやって、日曜の女子シャワー室へ……?」
思考を巡らせるうち、あの日、不自然に練習を切り上げて立ち去った数子の背中が脳裏に焼き付いて離れなくなる。まさか、親友である彼女が。そんなはずはないと打ち消すが、不安は増すばかりだった。
そんな折、弓果のスマホが無機質な着信音を鳴らした。画面には見覚えのない番号。嫌な予感に指を震わせながら通話ボタンを押すと、あの卑俗な声が鼓膜を打った。
「よう。この前はどうも。元気にしてたか?」
「……っ!」
「あの日撮った画像、どうしようかと思ってさ。俺の雇い主は世間にバラ撒けって言ってるんだが……あんた、そんなことされたら自殺もんだろ? 一度、話し合おうぜ」
拒絶すれば何が起こるか分からない。弓果は意を決して指定された街外れのカフェへと向かった。
第八章:白日の下の辱め
カフェに現れた弓果は、清楚な白のブラウスに紺色のスカートという、良家のお嬢様らしい装いだった。しかし、その顔色は蒼白で、気品ある美貌には深い陰が落ちている。
対照的に、福井は下卑た笑みを浮かべてテーブルで待っていた。
「よう、俺は福井。改めてよろしくな」
「人でなし……!」
弓果が絞り出すようになじると、福井は動じず、いやらしい目でブラウス越しに盛り上がった彼女の豊かな乳房をねっとりと眺めた。
「美人は怒っても絵になるねえ。バージン捨ててすっきりしたか?」
「最低よ、あなた……!」
「そんなに睨むなよ。流出してデジタルタトゥーになるのは怖いだろ?」
福井の言葉に、弓果は屈辱に震えながらも小さく頷かざるを得なかった。福井は身を乗り出し、衝撃的な提案を突きつける。
「そこで提案だ。最低週二回会ってデートしよう。それで流出は待ってやる。ただし、会うたびに性行為をしてもらう」
「性行為……って?」
「まずフェラチオにセックス、他に色々」
静かなカフェの店内に、福井のがさつな地声が響き渡った。周囲の客が何事かと視線を向ける。羞恥心の強い弓果は、顔を真っ赤にして周囲を気にし、必死に小声で制した。
「そんな……声を小さくしてください、お願い……」
「恥ずかしがるなって。もう俺たちは『ただの関係』じゃないんだから。なあ? 大人の女になった気分はどうだ。友達に自慢できるだろ?」
「……そんなこと言わないで」
弓果は今にも泣き出しそうだった。だが、福井の口撃は止まらない。
「そもそも二十一まで処女だったなんておかしいだろうが。バージン捨てられてさっぱりしたろ? こんな美人でデカパイなのに処女だったなんて、身体に欠陥があると思われても仕方ねえ。腋臭とか劇臭ま〇ことかな。もしそうなら、あんたにセックス頼まれても俺も断ってたかもな」
「やめて……お願い、声を小さくして……!」
最初の強気はどこへやら、弓果はただ哀願するしかなかった。福井はさらに畳みかける。
「記念に紅白饅頭でも作るか? 『祝・遠野弓果貫通記念』なんて文字入れてよ。あんたの家の前を通る奴らに配って歩くか」
あまりの羞恥に弓果が耳を塞ごうとすると、福井は目つきを鋭く変えた。
「手を下ろせ。耳を塞ぐなら、もっと大声で喋ってやるぞ。いいのか?」
脅された弓果は、震えながら耳から手を離した。公共の場で、自分の最も秘められた部分を嘲笑され、玩具のように扱われる。
名門大学の才媛としてのプライドは、このがさつな男の言葉によって、一分一秒ごとに削り取られていった。




