1万+35対15万の戦 2 (左の涙)
意味深な言葉がバレバレだって?ハハッ。許してください。私の技能ではこれが精一杯なんです。
「《創造魔法:付与:ロンギヌスの槍》」
ロンギヌスの槍の性質をそこら辺に落ちていた石ころに付与する。
これにするとMPの消費を抑えられるからね。
「せいやっ!」
4~50mほど先にいる男に向かって投げる。目視では捉えられないはずの一撃だ。
しかし、
「ふんっ!」
ギャリン!
それを大剣を斜めにして軌道をそらす。遠くで悲鳴が聞こえたが気にしていないようだ。それほどまでに何か私怨があるのだろう。
だけど、
「やられる訳にはいかないよ!《創造魔法:アンドロメダの鎖》!」
今度は直接作り出す。大きな円が虚空にできたと思ったらその中から鎖が何本も飛び出していく。
「《武技:絶対回避》」
私はまさか、と目を見張った。なぜなら視線の先には無数に飛び出していく鎖の合間を縫って男が突撃して来たからだ。流石に避けられるとは思っていなかった。
まじかよ、、、
「せいっ!」
ザシュ!
驚きによって固まってしまっていたため反応が遅れた。しかし、バックステップをギリギリで踏んだため最小限に抑えれた。と思いたい。なぜなら
「傷が、、、治らない?」
《龍人化》に統合されている自動HP回復が働いていなかったからだ。
それを見た男は
「やっぱり竜人種か。角からしてそうだと思っていたが、やっぱりか。この剣はなあ、竜殺しが付与されてんだ。竜種に対して色々な補正がかかるってやつだ。自慢の一品なんだが、どうだ?」
なるほど、厄介である。男は自慢気に剣をクルクルと回しながらこちらを見てくる。
「なるほど。厄介だね。その剣。」
「そうだろう、そうだろう。じゃあっ、いくぜ!」
ガン!
速い。いつのまにか懐に潜り込まれている。
ガン!
首を狙ったなぎ払いを強引に剣の腹を足で蹴り上げてその反動を利用して後ろに下がる。
「おっとっとと、さすがの馬鹿力だな。」
話しかけてくるが答えている暇がないぐらいに斬りかかってくる。
ガン!ギン!ガン!
弾いて、弾いて、弾いて、、、こちとら武器を作る暇がないんだよ!少しは隙を作ってくれ!
しばらく続いて互いに息が切れ始めた頃。
「なあ、お嬢ちゃん。」
男が尋ねてくる。なんだ、と思いながらも男を見る。
そして、その瞬間、思わずぞわっと鳥肌が立ってしまった。
なぜなら男の眼は
「なんで竜人種とか魔族とかがいるんだろうな?亜人種なんて、いなくなってしまえばいいのに。」
私と戦う前とは打って変わって光を灯しておらず、まるで過去に大事なものと生きがいを失ってしまった人のような、そんな諦めきった眼をしていたからだ。
こいつ、、、私と同じ?
そんな雰囲気を感じ取る。
そう思いつつも構えを取る。今回は剣で行こう。
「《創造魔法:エディタ:生成:『嵐』》」
刀身が波打つような形をした長剣を作成し、両手で持つ。構え型は両手を上にあげ、剣先を下に傾けた感じ。
そして、真っ直ぐに男を見つめる。
(一体何が君をそこまでにしてしまったんだい?)
そう尋ねるように。すると意思が伝わったのか、
「いや、ただの復讐だ。俺の今無き故郷で唯一の生き残りの復讐だよ。」
と返してきた。私にとってその言葉だけで十分だった。
復讐したって終わった後に残るのは酷い喪失感と自分への嫌悪感。ただそれだけだと知っているから。
彼を助ける為に殺そう。本気を出す事を決める。
あまり使いすぎると身体に負荷がかかるから本当は使いたくないんだけど。
「行くよ。」
足に魔力を纏わせて踏み込み
「おう、かかってこいよ。」
ドゴン!
地面を蹴り砕く、そのままの反動で駆け抜ける。
「【神性を起動】」
神様としての真っ当な仕事を始めよう。
【神性解放の申請、、、授与されました。神性の解放を許可します。】
今まで使っていた神性よりも強力な神性を解放する。
「《龍の神性:復活の神性:絶望の神性:起動:魔導の真髄:MP軽減:発動:神化:ウロボロス》」
腕や足などを覆っていた鱗が吸い込まれそうなほど深い黒に変わる。
聞いた話だと眼の色も変わっているらしい。以前にルナの神域で試した時に言われた。
その時は、絶対にそれを安安と使うでないぞ。
とも言っていた。
けど、彼を救う為には仕方がない。
「《武技:一閃》!」
周りの土を巻き上げながら音速の速さで近づく。
ガン!
「お嬢ちゃん。あんたが何を考えてそんな顔をしているかは分からない。けどな。ここで止まる訳にはいかねぇんだよ。」
ドン。と音がしそうなぐらいの膨大な殺気が向けられる。足が止まりそうになるが突き進む。
あと少し!
「オラァァ!!」
バギン!
この速度に追いつけただけではなく。更には持っていた剣までもを破壊されてしまった。
なんつー筋力だよ。援護の方も相当な手練れだと感じさせる。なので
「《夜魔法:断裂》《夜魔法:魔封じ》」
ボソボソと聞こえないように唱える。すると、男の動きが急に鈍くなる。補助魔法をカットしたから当然か
そこに新しく生成したもう一本の『嵐』で斬りかかる。
ザン!
男の胸から腰にかけて真っ直ぐに赤い線ができる。
「ぐっ!」
そして男が反撃に出る前に直ぐに下がり
「《絶望の神性》《夜魔法:コネクトカット》《龍の神性:龍神の咆哮》」
神性と魔法を使って視界、触感、を潰す。多分彼は今、目の前に靄がかかったようになっているだろう。さらに触感をカットした事で自分が立っているかもわからないようにどんどんなっていっている。そして仕上げに
すぅぅうっと息を吸い
「ガア"ア"ア"ア"ァ!!」
叫ぶ。戦場に響く龍の咆哮。それは振動波さえも生み出し、周りの草や木を引きちぎっていった。
後から聞いた話によるとこの時、サン達は新手の敵の出現かと思ってしまいついつい構えてしまったとの事。
「ぐぁぁあああああ!!??」
そして次は男が狂ったかの様に叫び出す。耳からは血が流れてさらに何かの汁も垂れてきていた。
どうやら鼓膜が破れたようだ。これで男はもう何もできない。わからない。感じない。私は彼にゆっくりとと近づいていき
「《絶望の神性:EXTRACT THE SOUL》《復活の神性:浄化:輪廻回帰》」
絶叫が終わり、抵抗が弱まったところで先ほどの切り口から心臓付近にある魂を抜き取る。手のひらに乗っている男の魂は冷たくかった。
昔の私みたいだな。と苦笑しながら解析して、悪くなっているところを直して、さらに、無事に来世が過ごせるようにと加護をつけて輪廻へと送る。魂のなくなった彼の肉体は、やがて灰となり、静かに崩れ去った。
「本当に、、過去を見るのは辛いなあ、、、」
脳裏には彼の記憶の一部がこびりついたままだった。
目の前でレッドドラゴンに家族を焼かれた。妹も、母も、父も、息子まで、その記憶が。
「久しぶりにこっちを流したなあ。」
私は左眼から涙を零した。
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その頃中央隊指揮本部にて、
「なんなんですの!?あの少女は!?」
ヒステリックな声を上げながら若い女性が水晶を覗き込んでいた。
「さあ、あれは神族、と呼ばれる者たちですかね。神話大戦の頃の文献に載っていたと思います。」
冷静に返していく、白衣を着て、片眼鏡をかけた小柄な少年。
「なんにせよ、あのアランがやられた事には変わりはない。あいつを用心しておくに越したことは無いだろう。」
と2人に忠告する神官風の衣装の男。
3人が見つめる先には、ふう、とため息を吐くユキチが居た。
Q、魂が抜けると何故灰になるの??
A、魔力やら意思やらが消えて形状さえも細胞がそれを忘れるため崩壊して灰になります。




