第1話『俺の親は美男、美女でした』
目が覚めると赤髪の美女がこちらを覗き込んでいた。
(キレイな人だな)
初めて見る赤髪の女性に違和感なくそう思った。
「ーーーーーーー・・・」
ーーーー何か言ってる?声は聞こえるのに一つも聞き取れない。
急にアラビア語で話しかけられる感覚と言えば分かりやすいか。
その言語は生前のどこの国にも属さないものだった。
ガチャ
若い男が扉を開けて入ってくる。白髪の男だ。
男はこちらに近付くと俺の顔を覗き込む。
男に見下ろされるのなんて、俺の趣味ではないが不思議と悪い気はしなかった。
恐らく近くで見た男の顔が俺でもかっこいいと思ってしまうほどの美形だったからだろう。
氷みたいな透き通った青氷色の目も原因だろう。
「ーーーーー・・・ーー・・・・」
男が何か言ってる・・・・やっぱり分からない。
こう言うのは最初からわかるものだと思ってたけど、そんなに甘くないか。
恐らくだか二人は夫婦だろう、そしてその子供に俺が転生したってところか。
雰囲気や俺に対する表情、仕草で分かってしまった。
生前、営業職をしていたことがあり、そこで培った能力だ。
こんな所で役立つとは嬉しい誤算だったが。
当然今二人が不安な顔をしている理由も分かる。
さっきから俺が真顔で静かすぎるからだ。
確かに俺も自分の子供が全く泣いたり笑ったりしなかったら心配になると思う。
とりあえず泣き喚く事にした。
「おんぎゃー、おぎゃあ、おぎゃあ」
赤ん坊の鳴き声なんて分からないのでテンプレを何回か言ってみる。
「ーーーー・・・・ーー・・」
何か言って笑い合っている。
相変わらず何言ってるか分からないが笑ってるので良いということだろう。
ーーーーあれ?なんか急に眠くなってきた。
自分の意思とは関係なく眠気が襲う。
「ーーーー♪ーーー・・・♪♪ーー」
(子守唄?そんなの聞いたらさらに眠く・・・)
何を歌っているのかは分からなかったがそこには忘れかけていた母の温もりが感じられた。
それが今は何よりも嬉しかったのだ。
俺は母の腕の中で眠りについた。
ー二ヶ月後ー
最近、日課ができた。
それは母の乳に顔を突っ込み母乳を吸うことだ。
こんな俺をエロ猿などと罵る声もあるかも知れないが、それは見当違いだ。
確かに俺は精神は成人男性だし美女の乳を吸えて嬉しいとも思ってる、しかしそれ以前に美女の赤ん坊なのだ。
飲まないと心配されてしまうし、この世界に粉ミルクなんてものは無いので、母乳以外で栄養が補給出来ないのだ。
後一年は吸おうと思ってるでよろしくお願いします。
ーさらに四ヶ月後ー
「人間は適応の生き物だ」誰かがそう言っていた。
この世界に来た頃は何言ってるかさっぱりだったのだが、今では全て理解できるようになってしまった。
もちろんこの体が幼児でなんでもスポンジのように吸い取ってしまうのもあるだろう。
言葉がわかるようになりわかったことが増えた。
どうやら俺の名前はアマード・へストルゲーらしい。
言葉を理解し始めた頃はアミと愛称で呼ばれてたから分からなかったのだが、最近外に行く機会がありその時に知った。
女の子みたいな愛称だかちゃんと股間に一本と二個付いてるぜ!
ちなみに母はデメテール・ストルゲー父はセノス・ストルゲーという名前だ。
ーさらに三ヶ月後ー
最近ハイハイが出来るようになり色々とわかることが増えてきた。
家は木造建築で広さは三十五坪くらいあり二階建てだ。
電球とかはなく家の光は松明で蝋燭照らされている。
窓から見える景色は田んぼと畑それとポツポツと建つ同じような木造建築の家、他は広大な野原が広がっているだけ。
いわゆる田舎町というやつだ。
生前、東京で人と文明に揉まれて生きていた俺にとって田舎は憧れだった。
老後は田舎暮らしをしようと考えていた程だ。
ご近所付き合いもあり収穫したものをよく持って来る。
ちなみに田んぼに植えてあるのは全て小麦でこの世界に来て米を一口も食っていない。
別にそこまでの不満は無いのだが、やっぱり元日本人として米が少し恋しいな。
外のことはこれくらいしか分かっていない、窓から外に出ようと何度か試みたが出た瞬間何処からともなく母が飛んできて家に戻されるからだ。
(この母には特別なサーチ能力でもついているのだろうか)
本音は外のことをもっと知りたかったが、何かあってからじゃ遅ので、諦めることにした。
ーーーーそういえば家の中でも二階は寝室以外行ったことなかったな、歩けるようになったら行ってみよう。
そう心の中で決め眠りにつくのであった。
ありがとうございました。




