第4章:水棲怪物、俺たちが来た!!!
水棲怪物はイカのような姿をしており、体と触手は頑丈な装甲に覆われていた。村人たちは手元にあるありとあらゆるものを投げつけ、中にはロケット弾まであった。しかし、どれも装甲に傷一つつけられなかった。
カイオ「こんな武器がこの世界にあるとはな。ちょっと驚きだ。」
カイオ「もしかしてこの世界、1989年あたりなのか?」
荒木「時代の話をしている場合か!」
カイオ「あ、そうだな。ちょっと待ってろ。」
カイオの腕が次第に変形し、複数の銃身が露出する――徹甲弾を発射する機関銃だ。
カイオ「アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー。」
《ブルルルルッ! ダダダダダッ!!!》
連続する銃撃が怪物に直撃する。徹甲弾は装甲にひび割れを生じさせ、怪物は苦痛の叫びをあげ、触手を激しく暴れさせた。
岸に迫る直前に、荒木とカイオはボートから飛び降りた。
荒木「俺は攻撃範囲にいる人々を救出する。お前は怪物の足を止めていろ!」
カイオ「了解、ボス!」
陸に着くなり、荒木はすぐさま二人の男を触手の脅威から救い出した。
カイオ「これを食らえ!」
カイオの右腕がバズーカに変形し、三発のロケット弾を触手に向けて発射する。しかし、それも効果はなかった。
別の触手が近くの住民三人を襲おうとした瞬間、カイオは両手首からワイヤー状のフックを射出し、その触手に絡みついた。カイオは後ろに倒れ込み、触手を引き寄せて動きを封じる。その隙に荒木が三人を救出した。
カイオの踵から円盤状の小型ロボット群が次々と飛び出し、触手に張り付く。そして同時に爆発し、その触手を完全に破壊した。
一方、荒木は村長を問い詰めていた。老村長は壊れた軒先の下で震えながら座り込み、罪悪感と恐怖に満ちた目をしている。荒木は彼を隅に連れていき、暴れ回る触手の届かない場所へと移動させた。
荒木「なぜあいつは村人を襲うんだ? お前たちはあれを『水神』だと言っていたんじゃないのか!」
村長「神……いや、あれは神などではない。あれは、かつて妻と私が共に育てたペットなのだ。」
老人は目を閉じ、記憶と格闘するように言葉を続けた。
村長「妻は……魔獣使いの達人だった。彼女が亡くなる前に、最後の託けとして私にこの生き物を残してくれた。それは私たちの愛の証しだった。私は手放すことができず、密かにこの湖で何年も育て続けてきた。しかし、あまりにも早く成長し……その食欲も止まるところを知らなかった。」
荒木「お前は『異端者』の罪を着せた者たちを、あいつに与えていたのか?」
村長はうなずき、しわだらけの頬に涙が伝った。
村長「この村では昔から異端者の数が異常に多くてな。異端者の集団を捕まえるたび、皆で湖に投げ込んだ。最初は秩序を守るためだった。だが後になって、私は自分の怠慢であいつを生かし続けていることに気づいた。ただ、妻の最後の遺品を手放したくなかっただけだ。しかし今日……もう異端者もおらず、餌が尽きたあいつは制御を失った……。この日が来ることはわかっていた。だが、まさかこんなに早く来るとは。」
荒木はしばし沈黙した。遠くからカイオが怪物と格闘する爆発音が聞こえる。彼はため息をつき、村長を立ち上がらせた。
荒木「では、あいつに弱点はあるのか? 例えば、妻がかつて使っていた鎮静法のようなものは?」
村長はためらいながら、古びたマントを開いた。胸元には、柔らかな光を放つ石が付いたペンダントがあった。
村長「これは『愛の石』と言って、妻が作ったものだ。正しい周波数で共鳴させれば、どんな魔獣でも鎮められると言っていた。しかし、私は一度も試したことがない……」
荒木「それを貸してくれ。」
村長がペンダントを荒木に手渡す。荒木はそれを受け取り、カイオに向かって大声で叫んだ。
荒木「カイオ! これを起動させてくれ! 周波数は600Hzだ!」
遠くで、カイオは腕を巨大なスピーカーに変形させながら叫び返す。
カイオ「600Hzだって?! 何それ?! バラード曲か脳波かどっちだよ?!」
荒木は歯を食いしばり、カイオのところへ走り寄りながらペンダントを彼の手に押し込んだ。
荒木「とにかく光らせればいい! 冗談を言え、元妻の話をしろ、歌を歌え、何でもいいから!」
カイオは石を見つめ、次に怒り狂う水棲怪物を見つめた。彼は咳払いを一つし、石に手を当て、目を閉じた。
カイオ「よし……これはあるバカの話だ。そのバカは、宇宙よりも妻を愛していた。だが、実験室に夢中になりすぎて、彼女を失ってしまった……」
カイオの声は震えていた。石が淡く輝き始め、温かな波動を広げる。水棲怪物が突然動きを止めた。振り上げていた触手がゆっくりと速度を落とし、やがて地面に下ろされた。
カイオ「……そして、どんなことがあっても、俺は彼女を愛し続け、彼女の幸せを願っている。たとえどんな世界にいようとも。」
石がまばゆい光を放った。怪物は低く悲しげな鳴き声をあげ、ゆっくりと湖へと退いていく。もはや凶暴さはなく、その大きな瞳には孤独の色が浮かんでいた。やがて沈み、ただ波紋だけが残された。
村人たちは沈黙した。村長はひざまずき、声をあげて泣いた。カイオは目を開け、いつの間にか流れていた涙を慌てて拭った。
カイオ「なあ、荒木。なんだか急に心が軽くなった気がする。」
荒木は彼の肩を叩いた。
荒木「『俺たちは未来に向かって進む』、覚えてるか?」
カイオはうなずき、微笑んだ。
カイオ「ああ。でも、ちょっと問題ができたぞ。」
カイオは、巨大なイカに偶然破壊されたゲートを指さした。
荒木「はあ。お前、ここに残りたいって言ってなかったか?」
カイオ「何言ってんだよ。俺は自分勝手に自分のことだけ考えるような奴じゃないだろ? それに、お前は俺の親友だ。」
荒木「カイオ、だが俺は――」
カイオ「もういいや。とにかくここを離れよう。あの連中に何されるかわかったもんじゃない。まさか去勢されるなんてごめんだ。」
荒木「そうだな。」
荒木は村長のところへ歩み寄り、石を彼の手に戻した。
荒木「あいつには、もっと健全な餌を与えたほうがいい。また暴れ出して村人を襲うかもしれないぞ。」
そう言い終えると、荒木はカイオと共に村の門へと歩み寄り、去ろうとした。
村長「待ってくれ!」
村長「お前たちは……いったい何者なんだ?」
二人は足を止め、振り返って言った。
荒木/カイオ「俺たちは、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」
夕闇が山の向こうに沈みゆく。それでもなお、その残光は、どこから来たとも知れぬ二人の英雄の背中を照らしていた。
第4章 終わり
第1章――終わり




