第52話 公爵夫人へ呪いが移ったという噂が、王都まで届きました
灯りが消えた瞬間。
誰かの悲鳴が上がった。
「動くな!」
アレクシスの声が、暗闇を切り裂く。
「子どもを踏むな! 全員、その場にいろ!」
窓は閉まっている。
昼間なのに、部屋の中は夜のように暗かった。
十一のランプが。
風もないのに。
同時に消えた。
「リリアーヌ!」
「ここです」
答えた直後、肩を強く引かれた。
アレクシスの腕が私の身体を抱え込み、ノアから引き離す。
少年の手が離れた。
爪を立てられていた手の甲が、じんじん痛んだ。
「離してください」
「嫌だ」
「ノアを確認しないと」
「医師がいる」
「でも」
「お前は下がれ」
怒っている。
声だけで分かる。
「灯りを!」
医師が叫ぶ。
「火打ち石はどこ!」
「机の上です!」
「誰か窓を開けて!」
大人たちの声。
泣く子ども。
椅子へ足をぶつけたらしい音。
混乱の中で、ようやく鎧戸が開かれた。
白い光が、部屋へ差し込む。
「ノア!」
母親が長椅子へ駆け寄った。
少年は。
目を開けていた。
大きく息をしながら、ぼんやり天井を見つめている。
「お母さん?」
「ノア、大丈夫? どこか痛い?」
「……眠い」
それは。
普通の子どもの声だった。
先ほどの、誰ともつかない低い声ではない。
「リリアーヌ様」
ミレイユが私の手を見ている。
顔色が。
真っ青だった。
「どうしました?」
「手首」
「手首?」
右手を見る。
その瞬間。
息が止まった。
皮膚の下に。
細い黒い線が浮かんでいる。
手首を一周するような、歪んだ円。
そこから何本もの線が、指先と肘へ向かって伸びていた。
神殿で。
アレクシスの胸から私へ移りかけた。
あの呪印に似ている。
「触るな!」
アレクシスが叫ぶ。
近づこうとした医師が、足を止める。
「診察しなければ」
「素手で触れるな」
「手袋を用意します!」
エレナ先生が走り出した。
「アレクシス」
「何だ」
「腕を離してください」
「駄目だ」
「あなたも触れています」
彼の手は。
私の肩と腰へ。
しっかり触れていた。
「俺はいい」
「よくありません!」
「もし呪いなら、俺には元からあった」
「解けたでしょう!」
「戻るだけだ」
「簡単に言わないでください!」
私は彼の胸を押した。
けれど、腕は緩まない。
「離してください」
「嫌だ」
「子どもたちが見ています」
「構わない」
「私は構います!」
アレクシスの顔を見上げる。
怒っている。
でも。
それ以上に。
怖がっている。
洪水の報告を受けたときと同じ顔。
「大丈夫です」
「嘘を言うな」
「嘘では」
「お前も怖いはずだ」
言葉を遮られる。
「怖いと言う約束だった」
「……怖いです」
認める。
「そうか」
「だから調べます」
「ああ」
「そのために、まず離れてください」
「嫌だ」
「話が戻っています!」
そのとき。
手首の黒い線が。
ふっと薄くなった。
「消える」
ミレイユが呟く。
数秒後。
呪印は。
最初から何もなかったように消えた。
皮膚には、ノアの爪痕だけが残っている。
「今のを見た者は?」
アレクシスが周囲を見る。
部屋には。
医師。
教師。
子どもたち。
家族。
護衛。
ミレイユ。
少なくとも二十人以上がいた。
「全員ですね」
私が答える。
「口止めする」
「できません」
「する」
「村中へ広がります」
「広げさせない」
「無理です!」
すでに。
子どもの母親たちは互いに不安そうな顔を見合わせている。
ノアの母親など。
私から息子を守るように。
長椅子の前へ立っていた。
その気持ちを。
責められなかった。
「公爵夫人様」
ノアの母親が、震える声で言った。
「あの子に、何をしたんですか」
「何もしていません」
「手を握ったでしょう」
「はい」
「そのあと、あの子の声が変わった」
「それは」
「あなたの腕に、黒いものが出た!」
責める声ではない。
恐怖の声。
「呪いなんですか」
「まだ分かりません」
「公爵様の呪いは、奥様へ移ったんじゃないんですか」
部屋が静かになる。
「違う」
アレクシスが即座に答えた。
「なぜ言い切れるんです!」
「呪いは解けた」
「でも、今見ました!」
「似ていただけだ」
「同じでしょう!」
「アレクシス」
私は彼の袖を掴む。
「今は、断言しないでください」
「リリアーヌ」
「分からないことを、分かると言わないで」
「お前まで疑うのか」
その言葉に。
胸が痛んだ。
「あなたを疑っているのではありません」
「なら」
「私自身が、原因ではないと言い切れないんです」
「違う」
「どうして分かるんです?」
「お前だからだ」
「答えになっていません!」
「俺にはなる」
以前にも聞いた言葉。
夫だから。
妻だから。
信じているから。
けれど。
病や呪いは、信頼だけでは説明できない。
「ノア」
医師が少年へ尋ねる。
「先ほどのことを覚えている?」
「何のこと?」
「リリアーヌ様のお名前を呼んだでしょう」
少年が。
私を見る。
首を横に振る。
「知らない」
「この方のお名前を?」
「公爵夫人様?」
「それ以外には」
「知らない」
「黒い部屋は?」
ノアの顔が、こわばった。
「見た」
「何があった?」
「石が」
少年は、毛布を握りしめた。
「石が怒ってた」
「誰に?」
「分からない」
「女の人の声は?」
「聞こえた」
「何と言った?」
「痛いのを忘れるなって」
それだけ言うと。
ノアは激しく震え始めた。
「もういいです」
私は医師を止める。
「今日は休ませましょう」
「ですが」
「これ以上聞けば、眠ること自体がもっと怖くなります」
ノアの母親を見る。
「今日は、私がこの建物から離れます」
「え?」
「私が近くにいることで、不安になる人がいるでしょうから」
「お前が離れる必要はない」
アレクシスが言う。
「あります」
「ない」
「子どもたちを落ち着かせるためです」
「お前を原因と認めることになる」
「認めるのではなく、可能性を一つずつ確かめます」
「駄目だ」
「では、子どもたちを別の場所へ移しますか?」
「そうすればいい」
「十一人と家族を?」
「ああ」
「村から追い出されたと思わせるんですか!」
アレクシスが黙る。
「私が移動したほうが負担は少ないです」
「一人にする気はない」
「あなたが一緒なら、原因が私なのか、私たちなのか分からなくなる」
「だから何だ」
「調査になりません!」
「リリアーヌ」
「怖いのは分かります」
「分かっていない」
「分かります!」
今度は。
私の声が大きくなった。
「私も、あなたと離れるのは怖いです!」
部屋中が静まる。
言ってしまった。
子どもたちも。
村人もいる前で。
「でも」
私は続ける。
「怖いから何もしないわけにはいきません」
アレクシスの腕が。
ゆっくり緩む。
それでも。
完全には離れなかった。
◇
私たちは、その日のうちに学校から村の役場へ移った。
正確には。
私は役場。
アレクシスは同じ建物の隣室。
別々にすると言ったのに、壁一枚を隔てただけだった。
「これでは、あまり意味がありません」
「意味はある」
「何が?」
「同じ部屋ではない」
「子どもの理屈です!」
「扉も閉める」
「距離の話をしています!」
アレクシスは譲らなかった。
結局。
私は役場の会議室。
彼は隣の書庫。
扉は閉じる。
ただし鍵はかけない。
医師以外は、私へ直接触れない。
食器や衣服も分ける。
子どもたちの症状に変化があるか、一晩だけ確認する。
そこまで決めるのに、一時間かかった。
「夜だけですよ」
私は念を押す。
「ああ」
「明日、何も変化がなければ方法を見直します」
「ああ」
「勝手に扉を開けないでください」
「お前が呼んだら開ける」
「呼びません」
「呼べ」
「何のために分けるんです!」
「声が聞こえないと困る」
「壁一枚ですよ?」
「それでもだ」
アレクシスは。
本当に。
面倒だった。
◇
噂が広がったのは。
その夜のうちだった。
「どうして、こんなに早く」
翌朝。
ミレイユが持ってきた書簡を見て、私は頭を抱えた。
隣村の神官から。
領都の商人から。
街道沿いの宿屋から。
すでに三通。
内容は、少しずつ違っていた。
『グランツ公爵夫人の腕に、呪印が現れた』
『眠れない子どもへ、公爵夫人が触れたところ、悪霊が乗り移った』
『公爵の呪いは消えたのではなく、妻へ移された』
さらに酷いものもある。
『公爵夫人が自らの呪いを軽くするため、村の子どもへ痛みを分けている』
「誰が、そんな話を」
ミレイユが怒りで紙を握りつぶしそうになっている。
「広めた者を探します」
「一人とは限りません」
「でも!」
「見た人が多すぎます」
人は。
分からないことを怖がる。
そして。
怖いものへ、分かりやすい名前をつけたがる。
呪われた公爵。
呪いを受け継いだ妻。
子どもへ痛みを分ける公爵夫人。
そういう物語は。
病の原因が分からないという現実より、ずっと理解しやすい。
「公爵家から正式な説明を出す」
アレクシスが言う。
「呪いではないと」
「まだ原因が分かっていません」
「関係ない」
「あります」
「お前が子どもへ呪いを移していないことは分かる」
「どうして」
「お前だからだ」
「またそれですか!」
「何度でも言う」
「私は嬉しいです。でも、説明にはなりません!」
アレクシスの眉間に皺が寄る。
「では、何と書く」
「調査中。子どもたちは医師の管理下にある。公爵夫人の手首へ一時的な変化があったが、原因は不明」
「お前に不利だ」
「事実です」
「書く必要はない」
「隠せば、あとで余計に疑われます」
「疑う者は処罰する」
「噂を話した村人を全員?」
「ああ」
「牢が足りません!」
「増やす」
「そういう問題ではありません!」
ミレイユが、小さく手を挙げた。
「一つ、よろしいでしょうか」
「何です?」
「公爵様」
「何だ」
「怖いから怒っています?」
アレクシスが黙る。
「ミレイユさん」
「以前、お二人が怖いときは怖いと言う約束をしたと」
「なぜ知っている」
「護衛から聞きました」
「俺たちの会話は、どこまで報告されている」
「かなりです」
「減俸する」
「やめてください!」
私は止める。
「でも、ミレイユさんの言うとおりです」
「何が」
「今、怖い?」
アレクシスは、私から目を逸らした。
「……ああ」
「何がです?」
「お前が」
言葉が途切れる。
「皆に、呪いだと決めつけられることが」
「はい」
「俺のせいだと言われることが」
「それも?」
「ああ」
「アレクシス」
「呪いは俺のものだった」
声が低くなる。
「お前が巻き込まれた」
「自分で選びました」
「今度は子どもまで」
「まだ何も分かっていません」
「だから怖い」
ようやく。
怒りの下にあるものを。
言葉にした。
「私も怖いです」
「ああ」
「でも、噂より先に原因を探しましょう」
「ああ」
「処罰はあとです」
「あとならいいのか」
「悪意を持って広めた者がいたなら」
「全員」
「一人ずつ調べてください!」
◇
三日後。
噂は王都へ届いた。
速すぎる。
普通の書簡なら、ヴァル村から王都まで五日以上かかる。
誰かが。
早馬を使った。
「偶然ではありませんね」
公爵邸へ戻った朝。
ハロルドが王都からの書状を机へ置いた。
「大神殿からでございます」
「もう?」
封蝋には。
太陽と三本の剣。
王都大神殿の印。
アレクシスが書状を開く。
目を通すほど。
顔が冷たくなっていく。
「何と?」
「来る」
「誰が」
「異端審問官だ」
胸が重くなる。
「大神殿は、本気で呪いと判断したのですか」
「調査すると書いてある」
「なら」
「お前を隔離するとも」
「……」
「子どもたちとの接触禁止。俺との別居。公爵邸の一部を神殿の管理下へ置く」
アレクシスが。
書状を握りつぶした。
「認めない」
「まず、話を聞きましょう」
「聞く必要はない」
「また!」
「妻を連れていかせない」
「まだ来てもいません!」
「来る前に追い返す」
「大神殿と争うつもりですか?」
「ああ」
「即答しないでください!」
「騎士団を門へ置く」
「駄目です!」
「なぜ」
「王都に、公爵家が呪いを隠していると思われます!」
「思わせておけ」
「領民まで疑われるんですよ!」
アレクシスが止まる。
「ヴァル村の子どもたちも、呪われた村の子として扱われます」
「……」
「私だけの問題ではありません」
「だから神殿へ渡せと?」
「言っていません」
「同じだ」
「違います!」
話し合いは。
大神殿の一団が到着するまで。
結論が出なかった。
◇
異端審問官ヴィクトール司祭は。
想像していたより若い男だった。
三十代前半。
金色に近い薄茶の髪。
神官服は白を基調にしているが、腰には細身の剣を下げている。
連れてきた神官は八名。
護衛の神殿騎士は十二名。
少なくはない。
「グランツ公爵閣下。公爵夫人」
謁見室へ入ると。
ヴィクトール司祭は丁寧に頭を下げた。
「大神殿の命により、調査へ参りました」
「帰れ」
アレクシスが言った。
「アレクシス!」
「話は終わりだ」
「まだ始まっていません!」
ヴィクトール司祭は。
驚くでもなく。
私たちを見た。
「噂に違わず、奥方を大切にしておられる」
「なら、連れていくと言うな」
「隔離は、罰ではありません」
「同じだ」
「感染、呪詛、魔力汚染。原因不明の現象が発生した際、接触者を分けるのは基本です」
「妻は物ではない」
「存じております」
「なら本人に聞け」
アレクシスの声に。
私は少し驚いた。
決める権利を。
私へ渡した。
ヴィクトール司祭も、こちらを見る。
「公爵夫人。右手を拝見しても?」
「今は何もありません」
「一時的に呪印が浮かんだことは?」
「事実です」
「隠さないのですね」
「隠せば、調査になりません」
私は右手を差し出した。
司祭は直接触れず。
銀色の細い棒を手首へ近づける。
先端の透明な石が。
ごくわずかに黒く曇った。
「反応があります」
神官たちがざわめく。
アレクシスが立ち上がる。
「ただし」
ヴィクトール司祭が続けた。
「呪いとは断定できません。黒碑へ接触した者には、残滓が長期間残る場合もある」
「では隔離は不要だ」
「逆です」
「何?」
「原因を確かめるため、接触を減らす必要があります」
「どのくらい」
私が尋ねる。
「まず七日間」
「長すぎる」
アレクシスが即座に言う。
「子どもたちと会わないこと。食器、寝具、衣服を分けること。そして」
司祭は。
私とアレクシスを交互に見る。
「公爵夫妻は、別々の建物でお過ごしください」
「却下する」
「アレクシス」
「聞く必要はない」
「今度は最後まで聞きました!」
「結論は同じだ」
「公爵閣下」
ヴィクトール司祭が静かに言う。
「あなたが最も長く、夫人へ接触しています」
「ああ」
「夫人が原因なら、あなたに症状が出る可能性が高い」
「出ればいい」
「よくありません!」
私が叫ぶ。
「あなたまで倒れたら、領地はどうするんです!」
「倒れない」
「根拠は?」
「十年耐えた」
「二度目も耐えられるとは限りません!」
「お前を一人にするよりいい」
「よくないです!」
「俺にはいい」
「あなたの基準だけで決めないで!」
声が。
謁見室へ響く。
司祭たちが見ている。
それでも。
止められなかった。
「私は、条件付きで隔離を受けます」
「駄目だ」
「受けます」
「許可しない」
「私の身体です!」
アレクシスの顔が。
固まった。
「……俺と離れたいのか」
低い声。
痛いところを。
突かれた。
「そんなわけないでしょう」
「なら」
「離れたくないです」
正直に言う。
「一緒に眠りたい。手を握ってほしい。怖いから、抱きしめてほしいです」
神官たちの前で。
何を言っているのだろう。
顔が熱い。
でも。
言わなければ伝わらない。
「それでも」
私は続けた。
「子どもたちの不眠が、私たちと関係あるかもしれない」
「ない」
「断言しないで!」
「お前が子どもを傷つけるはずがない」
「意思の話ではありません!」
私が望んでいなくても。
呪いが。
残滓が。
私を通して広がることはあるかもしれない。
「七日間だけです」
「長い」
「原因を絞るために必要です」
「別の建物は認めない」
「アレクシス」
「隣室だ」
「聞いていました?」
「同じ建物の隣室。接触はしない。食事も寝具も分ける」
「距離が足りません」
ヴィクトール司祭が口を挟む。
「なら神殿は帰れ」
「話が極端です!」
「妻を別棟へ連れていくなら、騎士団を門に置く」
司祭が、わずかに眉を上げる。
「大神殿へ宣戦布告を?」
「ああ」
「しないでください!」
「連れていくなら、だ」
「条件付きでも言わないで!」
ヴィクトール司祭が。
小さく息を吐いた。
「公爵夫人」
「はい」
「毎日、医師と神官による診察を受けること。子どもたちとの接触を避けること。夫君とも直接触れないこと」
「はい」
「寝室は、同じ館の両端」
「遠すぎる」
アレクシスが言う。
「では中央に監視室を置き、相互の行き来を禁じます」
「扉の前に俺が座る」
「接触禁止です」
「扉越しなら触れない」
「アレクシス!」
「声は聞こえる」
彼は。
そこだけは譲らない顔をしていた。
「七日間」
私が言う。
「夜、就寝前に扉越しで話す。それなら?」
ヴィクトール司祭が考える。
「直接接触がなければ」
「認めるのか」
アレクシスが尋ねる。
「調査の妨げにならない範囲で」
「なら、それでいい」
「私は、まだいいと言っていません」
「嫌か」
「嫌ではありませんけど!」
完全な別居よりは。
ずっといい。
その時点で。
私は気づくべきだった。
アレクシスは最初から。
そこまで譲らせるつもりだったのかもしれない。
「決まりですね」
ヴィクトール司祭が言う。
「七日間の条件付き隔離」
「はい」
「リリアーヌ」
アレクシスが私を見る。
「本当にやるのか」
「やります」
「夜、眠れなくなったら」
「声をかけます」
「すぐ返事をする」
「あなたも眠ってください」
「無理だ」
「始まる前から言わないで!」
「お前がいないと眠れない」
謁見室が。
静まり返る。
ヴィクトール司祭が、わずかに視線を逸らした。
神官の一人は、咳払いしている。
「今ここで言わないでください!」
「事実だ」
「だからって!」
「呪いがなくてもだ」
顔が。
ますます熱くなる。
「七日です」
「ああ」
「七日くらい、耐えてください」
「長い」
「子どもみたいなことを言わないで!」
「毎晩話す」
「はい」
「朝も」
「診察の邪魔にならなければ」
「昼も」
「仕事をしてください!」
「食事の時間も」
「何回話すつもりです!」
アレクシスは。
真顔で答えた。
「できるだけ多く」
七日間。
直接触れられない。
同じベッドでも眠れない。
それだけのことが。
呪いの神殿へ向かうより。
私たちには。
ずっと難しい試練になる気がした。




