第1589話 201号室に帰還する
みんなでぞろぞろと地下通路を歩く。
この感じも久しぶりだな。
「じゃあ、俺はこっちだ、また明日な」
「あいよ、二学期もがんばろー」
カーチス兄ちゃんが待合室に入っていった。
奴は武道場口から男子寮に向かうのだ。
派閥の集会場の引っ越しは済んでるのかな。
一階のあの部屋は居心地がよかったけど。
隣はペンティア部だったが、新集会室は隣が新聞部だな。
メリッサさんとマリリンが壁新聞にエッセイを執筆しているから、何かと便利かもね。
階段を上がり、女子寮の地下に出た。
うーん、このアイロンの匂い、洗濯室だねえ。
帰ってきたぞ、というかんじ。
今日は日曜日なので、大浴場は混んでないね。
夏休み中、ちゃんと聖女の湯はやっていたのかな。
「新しい入浴剤作らないとね」
「明日作ろうか」
「そうね」
夏休みの終わりは聖女の湯の素を作る事に費やされるのであった。
「それじゃ、また晩餐で」
「そうね、またあとで」
エレベーターで上層階に行く、カロルとゆりゆり先輩を見送った。
メリッサさんと廊下を歩く。
「あんなに長いと思っていた夏休みも明日で終わりですわね」
「楽しい時間はあっという間ね」
「メリッサさま、マコトさま!」
お、マリリンが階段の上でお出迎えだ。
「ワンワン」
「まあ、マメちゃんもお帰りなさい」
「マリリン、王都に変わりはない?」
「特になにもありませんでしたわ」
マリリンはマメちゃんを優しく抱き上げてそう言った。
「マリリン、会いたかったわ、ただいま」
「お帰りなさい、メリッサさまが居ない王都は寂しゅうございましたわ」
「来年の夏はアンドレア領に遊びに来て下さいませ」
「それはようございますね」
マリリンは微笑んだ。
私たちは階段で二階に上がった。
205号室の前で、メリッサさんとマリリンと別れた。
ドアノブを回すと鍵は掛かって無くて、普通に開いて、中にはコリンナちゃんが普通に勉強していて、扉の音でこちらを振り返った。
「おお、おかえりマコト」
「ただいま~」
「巡礼の旅、どうだった?」
「歩いて歩いて二週間、結構疲れたけど、綺麗な景色とかいっぱい見たよ」
「どこに巡礼してきたんだ? クアンツ大聖堂か?」
クアンツ大聖堂はアップルトン四大聖堂の一つだな。
いずれ参拝したい。
「アンドレア領のサフラン大聖堂とファルンガルド大聖堂を見てきた」
「おお、というか、カロルの領に行ったのか、来るなって行ってなかったか?」
「だからこそ、歩いてテクテク侵入したんだよ」
「おー、カロルは怒って居なかったか?」
「領境でカロルの暗殺計画があってそれを阻止したから歓迎してくれたよ」
「そうだったのか。まあ、怒られなくて何より」
「うん、事情を聞いたら、まあ、しょうがないかなって」
「なんでカロルはマコトに来てほしくなかったんだ?」
「子供の頃にさらわれて惨い目にあった事件の首謀者が叔母だったから、その子供ごとつるし首にしたらしい。それを知られるのを恐れてたって」
「そうかー、わかるが、気にしなくていいのに、マコトは馬鹿だからそんな事、さっぱり気にならねえのに」
「まるっきり気にならねえ」
コリンナちゃんとゲラゲラ笑い合った。
うん、下町訛りで荒っぽく喋るのは楽しいね。
「コリンナちゃんは変わり無かった?」
「無いなあ、勉強ばっかりしてたよ。これが本来の私の夏休みだ」
「ちゃんとランニングしてた?」
「剣術部の馬鹿二人に絞られて困ったよ。一応五周ぐらいは走れるようになったよ」
「おお、優秀!」
ずっと続けていると、いつしか突破出来るんだよね。
なによりだ。
「なにか巡礼のお土産は?」
私は収納袋からブロウライト牛の干し肉を出してコリンナちゃんに渡した。
奴は無言でむしって干し肉を食べた。
「またイザベラさまに食肉加工品を山ほどもたされたか」
「半分大神殿に置いてきた。もう半分は食堂にあげるわ」
「それは良いね」
私はハシゴを登り、ベッドに寝転んだ。
懐かしいぜ。
マメちゃんが影から出て来て暴れ回っているぜ。
収納袋には読む本が無いなあ。
図書館行ってくるかな。
手持ちは御詠歌の本だけだしな。
「お、どこに行く?」
「図書館で本を借りてくる」
「いってらっしゃい」
ハシゴを下りて205号室を後にした。
マメちゃんが付いてきた。
地下まで階段で下りて、地下道に入った。
図書館まで直通だ。
マメちゃんを足にまとわりつかせながら歩く。
図書館地下に入ると、旅行前と変わってないね。
お養父様たちが整理したとおりに書庫がならんでいる。
螺旋階段を上がって、図書館に入る。
貸し出しカウンターは二階だな。
階段をあがると、貸し出しカウンターにルカッちがいた。
「本返しにきたよー」
「ああ」
収納袋から借りた本を出してカウンターに並べた。
ルカッちは記入してから図書カードを戻してきた。
「巡礼のガイドブックはどこかな」
「旅行記の棚だから、五番の書庫だ」
「ありがとう」
「というか、巡礼とかは大神殿の図書室じゃね?」
「それもそうだけど、借りるの面倒くさい、ルカッちもいないし」
「そうか、それはどうも」
五番の棚にいくと、旅行記が結構あった。
巡礼の旅のガイドは二冊ぐらいかな。
まあ、次の巡礼は結構後になるけど、いろいろ読んで知っておくと便利だからね。
私は旅行書を三冊借りた。
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