第1588話 ゆりゆり先輩を迎え入れ王都に戻る
子供とアダベルが、オープンテラスで山のようにクッキーを食い散らかしたあと、使用人さん達に大荷物を持たせたゆりゆり先輩が現れた。
ミーシャさんも一緒だな。
「お待たせいたしましたわ」
「クッキーが美味しかったからゆるす」
「ゆるすよゆるすよ」
子供はお菓子が食べられたらなんでも良いのか。
「荷物は後部貨物室に入れてください」
「ありがとう、助かりますわ」
「なんで忘れてたんだい、ユリーシャ先輩」
ゆりゆり先輩は明後日の方向を見た。
「例年なら一週間前に領を出ないと王都に着かなかったのですわ、で、今年は飛空艇だから、明後日で間に合うと思いましたの」
「明後日は始業式ですよ」
「式とか出なくてもよろしいのよ。おほほ」
ゆりゆり先輩は、わりと適当様だな。
エイダさんに連絡して、後部ハッチを開けてもらい、使用人さん達にゆりゆり先輩の荷物を入れてもらった。
私たちもお茶を飲み干し席を立った。
「久々の飛空艇ですわね。特等船室を使ってもよろしくって?」
「良いですよ」
ゆりゆり先輩はスイートルームが好きだな。
他の派閥員とアダベルと子供はメイン操縦室が好きだが。
私は艇長席によじのぼった。
さて発進準備だ。
「エイダさん、次は王都です」
【了解しました、航路をマップ画面に表示いたします】
ファンファンと独特の飛行音を立てて蒼穹の覇者号は離陸した。
快速で蒼穹の覇者号は飛行し、一時間半ほどで前方に王都が見えて来た。
南方から王都に侵入し、大神殿の練兵場に着陸させた。
聖騎士さんたちがこちらを見上げて歓声をあげてくれた。
マジックハンドでアダベルの籠を甲板から持ち上げ、テントの奧に押し込んだ。
アダベルと子供達は船を下りて孤児院の方に駆けていった。
後部ハッチを開けて、聖騎士さんを呼んで、ワイン樽を下ろして貰う。
ダルシーも重拳で樽の移動を手伝っているな。
ワイン樽を全部下ろし、ブロウライトのソーセージ、ハム、干し肉などを半分持って行ってもらった。
もう半分は収納袋に入れておこう。
貨物室はゆりゆり先輩の荷物だけになった。
よしよし。
ハムソーセージの残りは食堂に渡そうかな。
あまり持っていてもアダベルに囓られるだけだしね。
リンダさんが来て挨拶をしてきた。
「お帰りなさいマコト様、巡礼の旅はどうでしたか」
「なかなか楽しかったわ、偉い尼さんを仕込んでいたわね」
「ええ、ヴィヴィアンヌさまの派閥の人と近づいておくと、後々便利ですからね」
なかなか生臭い話であった。
まあでも、おばさん尼さんたちも、ヴィヴィアンヌさまも良い人だったけどね。
アントンはあの派閥でゆっくりと信仰生活に慣れて行くだろう。
「ワイン樽とハムソーセージありがとうございます」
「沢山持っていてもしょうがないからね」
甲板からヒューイが降りて来て後部貨物室に入った。
彼の姿を見て思いだした。
収納袋から『変身の鏡』を三つ取りだして、リンダさんに返した。
「ありがとうございます。いつでもお貸ししますから言ってくださいね」
「来年の夏かなあ」
今年の冬の『人工聖女作戦』に使うかもだな。
あっちの事件もまだ動かせない感じだ。
「じゃあ、またね、リンダさん」
「マコト様が王都に帰られて大変嬉しゅうございます。ではまた明日」
リンダさんに挨拶をして飛空艇のタラップを上がった。
さて、学園に戻ろう。
子供達は孤児院に任せておけばよかろうなのだ。
蒼穹の覇者号を離陸させて学園を飛び越し、貴族街へと向かう。
リチャード兄さんとモンチーをブロウライト家のタウンハウスで下ろした。
「ありがとう、またよろしくね」
「はい、次は冬ですか」
「そうだね、冬の帰省になるね。いつも冬の旅は命が危なかったんだけど、蒼穹の覇者号なら何でも無いと思う」
リチャード兄さんはにこやかに笑い、モンチーと一緒に下りていった。
蒼穹の覇者号をついっと離陸させて、懐かしのビアンカ基地にバックで格納する。
地下基地よ、私は帰ってきた。
おっとヒューイを下ろすのを忘れた。
(ハッチ開けるから勝手に帰る?)
《勝手に行く》
まあ、パスカル部長がいれば厩舎に入れて世話をしてくれるだろう。
「エイダさん、後部ハッチを開けて」
【了解しました】
ハッチを開けると、ヒューイが勝手に出て来て、ハッチの開いた通路を走っていった。
ゆりゆり先輩とミーシャさんがスイートから出て来て、タラップを下りた。
私とカロルも一緒に下りる。
カーチス兄ちゃんとエルザさん、あとメリッサさんも降りて来た。
メリッサさんのメイドのカリーナさんも下りてきたね。
後部ハッチでゆりゆり先輩とミーシャさんが荷物を前に沈黙していた。
「去年は馬車に人足がおりましたね」
「飛空艇は経験が薄いのでこまりますわね」
「ユリーシャ先輩、収納袋は?」
「もはや一杯ですわ。あふれた物がこれですの」
「私の収納袋に空きがありますから、運びましょう」
「あら、やってくださる? カロリーヌさま」
「いいですよ」
カロルの収納袋は巨大だからいいなあ。
世界で二番目に大きい収納袋らしい。
カロルはひょいひょいと、ゆりゆり先輩の物資を格納していった。
あっというまに無くなった。
「助かりますわ」
「いえいえ」
カロルはゆりゆり先輩に笑顔をむけた。
彼女はエレベーターが使えるからな。
さあ、女子寮に帰ろう。
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