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町と私と冒険者

ー数日後ー

この数日間町へのルートの整地や、畑づくりなど村の整備を行った。

夜、夕食を終えた三人は暖かいお茶を飲みながら談笑していた。

「ねぇ、二人とも。明日町に行こうと思うんだけど」

二人は話をやめ、少し不安そうな顔をする。

「正気なのか?お前が行けばきっと町の人間どもにつかまって、殺されるぞ」

「殺されるって、大げさだよ。確かに、町の住人ではない私は怪しまれると思うけど、さすがに殺されはしないでしょ。それに、私そんなに弱くないわよ?」

「ユキさんの強さを心配しているわけではないんです。ただ、見た目が、」

ルナはもごもごと言葉を詰まらせる。

「見た目?もしかして私、この世界の人とは見た目が違うの?」

「ほかの国のことはよく知らないけど、オレ達が住んでたオーレン王国では、黒髪に黒目は不吉の象徴と

 されているんだ。大昔に国を破滅寸前に追い込んだ魔女が黒髪に黒目だったらしい。オーレン王国には

 様々な人種の人間がいるけど、黒髪に生まれた奴はそれを隠して生活してる。ユキは黒髪に黒目だろ?

 町の奴らはユキのことを魔女と間違えて殺してしまうかもしれない」

ルノは耳をたらし、眉をしかめて、今にも泣き出しそうな表情で訴えてくる。

(私のことを心配してくれているのね。確かに今のまま町に向かうと、町に入れてさへくれないかもしれ

 ない。髪の色や目の色を変える方法はないのかしら)

ユキが変装のことを頭に浮かべると、久しぶりに頭の中で声が響いた。

<スキル:変装を獲得しました>

(久しぶりにきたわね!さっそく試してみましょう!)

「二人とも心配しないで良くなったわよ」

ユキは椅子から立ち上がり、スキルを使った。

するとみるみる内に髪の色は金色に変わり、目の色はオレンジ色に変わった。

「すっすごい!魔法か⁉魔法なのか⁉」

魔法好きのルノはキラキラと目を輝かせ、大興奮している。

「これは変装のスキルよ!これなら町に出ても大丈夫かしら」

「はい!大丈夫です!町にいた人たちと同じ髪と目の色してます!」

「よかった。じゃあ、明日の朝に出発して、夕方までには帰ってくるわね」

「わかった!無事に帰って来いよ!」

ユキは柔らかい笑顔を浮かべ、二人の頭をそっとなでた。

「さあ、もう夜も遅いし、寝る時間よ」

二人を部屋まで送り、布団をかける。

「おやすみ。いい夢を」

頬をそっとなで、部屋をでる。

ユキも自分の部屋に戻り、町に行く準備をすまして眠りについた。


ー翌朝ー

日が昇り始めた頃、ユキは髪と目の色を変え、ローブを羽織り、フードを深くかぶって、家の戸をゆっくり開けた。

「もう行くのか」

声をかけられ振り向くと、階段からルノがひょこりと顔を出した。

「ルノ、ごめんね、起こしちゃった?」

ルノはユキに駆け寄り抱きしめた。

「無事に帰って来いよ」

そういったルノの声は少し弱弱しく感じた。

(仲間が殺され、自分の傷ついた場所に行くと言われて心配しないわけがないわよね)

「うん!夕方には戻ってくるからね、ルナと仲良くまってて」

ルノは小さく頷く。

やさしくルノの頭をなで、扉を開ける。

「行ってきます」

ユキはそういって町に向かった。

森を抜けるまでは約3キロ、森を抜けて町につくまでは約2キロ、少なくとも1時間半はかかる。

「森の外にワープマーカーをつけておくべきだったわ」

この数日間、ルートの整地をしていたユキは移動の効率化を図るためにワープスキルを獲得にしていた。

ワープマーカーをつけておくことで、どこからでもワープすることができるのだ。

「町に着いたら忘れないうちにワープマーカーをつけておこう」

地面は整地しておいたおかげで歩きやすくなっており、周りには結界を張ったので魔物とも出会わない。

ユキはどんどん進んみ、森をぬけ、町の門の近くまできた。

門から少し離れた場所にワープマーカーを設置して、さっそく町の中に入ることにした。

「そこの者、止まれ」

門番に引き留められ、フードをおろす。

「冒険者登録、または商人ギルドに所属しているものか?」

「いえ、どちらにも所属していませんが」

「ならば、入場料として銀貨一枚を払え」

ユキは神様が用意してくれたなけなしの銀貨を払う。

「よし。通っていいぞ」

ようやく町の中に入れたユキは目の前に広がる光景に驚いた。

そこには大きな商店街のような空間が広がり、出店が並び、とてもにぎわっていた。

(とてもスラム街があるとは思えないわ、とても栄えた場所じゃない)

ユキは出店を気にしながら、冒険者ギルドへと向かう。

ルノたちに魔物の素材は冒険者ギルドで買い取ってもらえるという情報を聞いていたのだ。

しかし、初めての町で冒険者ギルドどころか何がどこにあるのかすらわからない。

ユキは出店に立ち寄り、冒険者ギルドの場所を聞いてみることにした。

「すみません、冒険者ギルドへの道を教えていただけませんか?」

「冒険者ギルドならこの突き当りを右に曲がったところにあるよ。お姉ちゃん、冒険者になるのかい?」

「いえ、素材の買い取りに、でも場合によっては冒険者になることも考えてます」

「まあ、若いのに苦労してるのね」

「幼い弟たちを食べさせていくためですから」

ユキは出店の婦人に頭を下げて冒険者ギルドに向かった。

「ここが冒険者ギルドね」

大きな看板には、剣の絵と冒険者ギルドという文字がでかでかと書かれている。

そっと扉をあけて中に入る。

冒険者ギルドなかには、武装した大男や杖を持ちローブをまとった女性など様々な人がいた。

ユキはまっすぐ受付へと足を運ぶ。

ユキが冒険者ではないことを悟った冒険者たちは、ユキの身なりをみて嘲笑っている。

ユキはそんな輩に目もくれず、受付をする。

「すみません、魔物の素材の買い取りをお願いしたいのですが」

「わかりました、冒険者ギルドへの登録は行っていますか?」

「いいえ、していませんが、買い取りに必要なのですか?」

「いえ、大丈夫ですよ。ではこちらの方に素材を出していただけますか」

ユキはアイテムボックスから大量の素材を取り出した。

「ホーンラビットの毛皮と角が4本、ポイズンスパイダーの殻と爪、キンググリズリーの毛皮と爪と牙

 と、キンググリズリーの体内から出てきた魔石です」

「ちょ、ちょっとお待ちください」

受付嬢は驚き、慌てた様子で奥に下がっていった。

「どうしたのかしら」

しばらくして、受付嬢が戻ってきた。

「お待たせしました、買い取りのご相談は奥の部屋でさせていただきますね」

受付の奥の部屋へと案内され、部屋に入る。

「失礼します」

「待たせて悪かったな。私はここのギルド長のオルベムだ。其方は冒険者でないにもかかわらず、たいそ

 うな素材を持ってきたそうだな」

受付嬢が素材を運んでくる。

オルベムは運ばれてきた素材を手に取り、吟味している。

「これはキンググリズリーか?」

「はい、そうですが」

「どこでこの素材を手に入れたんだ?」

「どこでと言われましても、自分で狩ってきたのですが」

「キンググリズリーをか⁉」

「はい」

オルベムは心底驚いたという表情でユキを見つめる。

「キンググリズリーはAランクの魔物だぞ。Aランクの冒険者パーティーが数人で戦って勝てるかどうか

 の魔物だ。それを一人で倒したっていうのか?」

「はい、私は冒険者ギルドに加入していませんし、パーティーも組んでいません」

オルベムは深いため息をつき、頭を抱えた。

「嘘をついているようには見えん、其方の話は本当なのだろう。しばし待て、素材の買い取り金を用意しよう。それと、冒険者登録も済ませておいてやる」

「ま、待ってください。私冒険者になるつもりはないんです」

「キンググリズリーを狩るほどの実力を持っておきながら、冒険者ギルドに登録するつもりはないと?」

「はい、私には幼い弟と妹がおります。冒険をするつもりはないのです」

「それならなおさら登録しておいた方がいい。冒険者だからといって必ずしも冒険をしなければならない

 決まりはない。それに冒険者ギルドに加入している者は買い取り手数料も安くなるし、解体も無料にな

 る」

(解体は自分でできるからいいけど、買い取り手数料が安くなるのはいいわね)

「わかりました。登録します」

「承知した。普通、冒険者はFランクから始めるのだが、ギルド長権限により、Bランクとして登録して

 おいてやろう」

(一番下がFランクってことは、Bランクは5つも上ってこと⁉)

「Bランクって、いくらなんでも高すぎるんじゃ」

「Aランクの魔物を一人で倒す奴がFランクじゃ示しがつかんだろう」

言い返す言葉が見つからず、口をつむぐ。

「受付で待っていろ」

部屋からでて、受付近くの椅子に腰を掛けて待つ。

周りの冒険者たちはギルド長に呼ばれたユキに興味を持ったのか、チラチラと視線を送ってくる。

居心地の悪さを感じながらもおとなしく待つ。

10分ほどがたち、受付嬢に名前を呼ばれる。

「ユキ様、お待たせいたしました、こちら素材の買い取り金額になります」

受付嬢が中くらいの袋をカウンターにのせる。

「こちら買い取り手数料を引きまして、占めて金貨250枚となります」

相当な金額に周りで聞き耳を立てていた冒険者たちがざわつき始める。

「一番高かったのがキンググリズリーの皮で金貨70枚、魔石も金貨50枚ですね」

受付嬢が金掛けの内わけを読み上げていくとさらにざわついた。

「キンググリズリーだって?あのAランクの魔物か?」

「信じられねぇ、あの細っこい姉ちゃんが倒したっていうのかよ」

周りは驚きを隠せず、ひそひそと話していた輩も次第に声が大きくなっていった。

「そしてこちらがBランクのギルドカードになります。町や国に入る際の入場料が無料になりますので門

 番にお見せください。それと、Bランクの依頼受注期間は半年に1度です。あちらにある掲示板から依

 頼を確認し、受注の際は紙を引きちぎり、受付へお持ちください」

「わかりました。ありがとうございます」

買い取り金とギルドカードを受け取り、足早に冒険者ギルドをでた。

(長居すると変な輩に声をかけられるかもしれないからね、さっさと次の目的地に向かいましょう)

次にユキは、野菜の種や苗を購入し、服用の布も購入した。

目的の物をすべて購入したユキは、帰ろうとしていた。

「ちょっとそこのお姉ちゃん!見てってくれよ!」

出店の主人に声をかけられ足を止める。

「いいものが手に入ったんだ、見てっておくれ」

少しだけならとユキは出店に立ち寄った。

その出店はアクセサリーショップで宝石や綺麗な装飾の首飾りなどが売られていた。

「これだよ、これ、この石は魔石なんだが、自分の魔力を込めることもできるんだ」

<鑑定:魔石があしらわれた首飾り 魔力を込めることができる魔石があしらわれた首飾り>

(嘘ではないようね)

「限定で2つだけ売ってるんだ。どうだい?今なら破格の金貨3枚ずつだ!」

「では、2つともいただけますか?」

ユキは金貨を6枚差し出し、首飾りを受け取った。

「毎度あり!またきてくれよ!」

アクセサリーショップの店主に手を振り、町をでて、ワープマーカーの場所まで行く。

<ワープ>

ユキがそう唱えると、ワープマーカーが青く光り、姿を消し、村へと戻った。

日が暮れ始める前に戻ってこれたが、少し遅くなってしまった。

「ただいま」

家のドアをゆっくりとあける。

「ユキ!」

ドアを開けるとルノとルナが飛びついてきた。

「お帰り!ユキ!遅いぞ!」

二人はユキのスカートに頭をグリグリと押し付けながら、尻尾をブンブンと振り、嬉しそうにしている。

「ただいま、二人とも。遅くなってごめんね。でもお土産があるのよ」

ユキは魔石があしらわれた首飾りを二人の首にかけた。

「この首輪には私の魔力を注いであるの。この首飾りをつけていればあなた達を守ってくれるわ」

二人は首飾りを見てニヤニヤと嬉しそうにしている。

「喜んでくれてうれしいわ。さあ、晩御飯にしましょうか」

ユキは夕飯の用意をしながら、町での話や、二人の話を聞き、ゆっくり休んだ。

ユキの鑑定日記


魔石があしらわれた首飾り:魔力を込めることができる魔石があしらわれた首飾り

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