村の再建と使い魔と
翌朝、日が昇り、カーテンの隙間から日差しが入り始めるころ、ユキが豪快にルノ達の部屋のドアを開ける。
「ルノ!ルナ!起きるのよ!」
元気いっぱいのユキに対して、ルノとルナはゆっくりと体をおこし、目をこすっていいる。
「なんだよユキ~」
「どうかしたんですか~?」
二人は寝起きでフニャフニャしている。
「さあ起きて!二人とも!今日もやる事が山積みよ!」
ユキは勢いよくカーテンを開け、部屋に日差しを入れる。
二人をベットから出し、抱えて下に降りる。
「二人ともいい加減に起きなさい。ほら、朝ごはんだよ」
昨日町で買ってきたフルーツとパンをだす。
「いただきます、、、」
まだ眠そうだが、しっかりと手を合わせ、少しずつ食べ始める。
二人はとても朝が弱く、ユキが起こしに行くまで起きることはほとんどない。
「今日は何をするんですか?」
先に目が覚めてきたルナが話を始めた。
「今日はね、村の整備を再開するわ。まずは畑を整備しようと思うの」
「畑?野菜でも育てるのか?」
野菜が苦手なルノは少し嫌そうな顔をしている。
「昨日町に行ったときに色々な野菜の苗と種芋を買ってきたの。午前中は畑を耕して、午後から苗を植え
ようと思っているわ」
「わかりました!頑張ります!」
ルナは素直で、いつも率先して手伝いをしてくれる。
「ありがとう、ルナ」
微笑みながら頭をなでる。
「オレもやらないとは言ってないだろ!」
ルノは少しツンデレなところがあるが、お手伝いはしっかりとしてくれる。
「ありがとう。じゃあ、片づけをして、外に出ましょうか」
朝ごはんの食器を洗い、畑仕事の準備をする。
「はい!二人とも!これを被って」
ユキは麦わら帽子を二人に渡した。
「昨日買ってきたんだけど、耳が外に出るように編みなおしたから、二人でも被れるでしょ?」
昨夜、ルノ達が眠りについた後、こっそり編みなおしていたのだ。
「ありがとうございます!」
「ピッタリだぜ!」
二人は耳をピクピクさせ、とても喜んでいる。
ユキも自分用の麦わら帽子を被り、道具をもって外に出る。
「まずは畑を耕すところからね。二人とも少し離れててくれる?」
ユキは畑に手をかざし、土魔法を使って、土をおこした。
「これで柔らかくなったから、後は耕して、畝を作るわよ」
ユキは鍬で、ルノとルナは小さなスコップで畑に畝を作っていく。
「ふ~、なんとか作れたわね」
予定通り昼までに畑を作り終え、早めの昼食をとることにした。
「はい、どうぞ」
ユキはテーブルの上にサンドウィッチを置いた。
「ん?なんだこれ?」
どうやらふたりはサンドウィッチを見るのは初めてらしい。
「サンドウィッチっていうの。柔らかいパンに、卵やハム、野菜を挟んだものよ。こっちの世界では珍し
いのかしら」
「いや、オレ達は生まれた頃からスラムで育ったから、まともな食事をとってこなかったし、」
「あっ」
申し訳なさそうに、下を向く二人の頭をそっと撫でる。
「辛いことを思い出させてしまってごめんなさい。さっ!気を取り直して食べましょう」
三人は手を合わせ、サンドウィッチを手に取る。
「三種類作ってみたの。ルナのはハムマヨネーズ、ルノのはカツサンド、私のはフルーツサンドよ」
三人はパクっと一口ほおばる。
「おいしー!ハムとマヨネーズ?がよく合ってとっても美味しいです!」
「オレのは肉が分厚くてめっちゃうまい!」
「我ながら良くできてるわ!これで午後からもがんばれそうね!」
あっという間にサンドウィッチをたいらげて、作業を再開する。
「さあ、まずは種芋を植えていくわよ!」
午前中に耕した畑に苗を植えていく。
「私はこの種芋を半分に切っていくから、二人は切り口を下に向けて埋めていってくれる?」
「「わかった」」
ユキが切った種芋をルノとルナで埋めていき、三人のコンビネーションで、あっという間に終わった。
「次は、野菜の苗ね」
「これはなんていう野菜の苗なんですか?」
「これはトメトっていう野菜の苗よ。こっちはキューリン。この種はキャレットの種ね」
(元の世界の野菜と名前が似てたから買ってきたけど、きっと同じものよね)
「私は苗を植えるから、二人は種を植えてくれる?穴を掘って二つぶずつ種を埋めるの。できそう?」
「まかせろ!」
ユキは苗を、ルノ達は種を植えていきながら、雑談をする。
「なあ、ユキ。町に行ったとき、オレ達の仲間を見かけなかったか?」
「ううん、見かけなかったわ。それどころか、数日前に争いが起こったとは思えないくらい賑わってた」
「そうなのか。ユキは大通りの商店街の方に行ったんだな。オレ達が住んでたスラム街は商店街の裏通り
にあるから気づかなかったんだろ」
ルノの表情は心配で曇っている。
「また町に行ったときに何があったのか町の人に聞いてみるね」
ユキがニコリと笑うと、ルノの表情も少し明るくなった。
「お兄ちゃん!ユキさん!種まき終わったよ」
「こっちも終わったわ。予定よりも随分と早く終わったわね。二人が手伝ってくれたおかげよ」
二人は照れくさそうに笑う。
「予定よりも早く終わったから、日が暮れるまでまだ時間があるわね。狩りにでも行ってこようかな」
「狩りに行くのか!オレも行きたい!」
ユキの独り言を聞いて、ルノは目を輝かせている。
「ダメよ。いくら結界で守られているとはいえ、危険すぎるわ」
「だってユキ、魔法教えてくれるって言ったのにいつまでたっても教えてくれなんだもん。狩りの時って魔法使うんだろ?見るだけでもいいから!連れて行って!」
珍しく駄々をこねている。
「魔法は今度教えてあげるから、今日はルナと一緒にお留守番してて」
「お兄ちゃん!ユキさんを困らせちゃダメだよ!おとなしくお留守番してよう?」
ルナの一言でルノはおとなしくなり、不満そうだが、おとなしくお留守番してくれるようだ。
「じゃあちょっと行ってくるからね」
ユキは森へと入っていく。
町へのルートとは反対の森へと足を踏み入れ、魔物を探す。
ホーンラビットを3匹ほど倒し、大物を求めて深みへと進んでいく。
深みへ入っていく途中でガシャンと金属音がなった。
「なんだろう」
そーっと、音のした方に近づいて様子を見る。
そこには大きな鳥かごのようなものにつかまって怪我をしている黒い大きな鳥がいた。
(錆びた罠ね。昔の住民が仕掛けたものかしら)
ユキが様子を確認していると、音を聞きつけた魔物が近づいてきた。
(あれは何?大きな牛みたいだけど)
<鑑定:デッドブル 大きな角と赤黒い毛皮が特徴的でとても獰猛だが、肉は柔らかく高級品である>
(危険だわ、あの鳥を助けないと)
キーキーキーキー
罠につかまった鳥は恐怖で暴れまわっている。
(あのまま暴れまわったら怪我が悪化してしまう)
ユキは立ち上がり、魔法を放つ。
<ライトニング=アロー>
光の矢は真っ直ぐにデッドブルの腹部に突き刺さる。
グモーーーーーーー‼
デッドブルは唸りをあげたが倒れない。
「うそでしょ」
デッドブルはユキ目掛けて一直線に走ってくる。
ユキは腰に掛けていたショートソードに光をまとわせる。
<ライトニング=ソード>
突っ込んできたデッドブルの額に突き刺さる。
グモーーーーーーーー‼
デッドブルが暴れまわる。
ユキは振り落とされ、地面に転がる。
「痛ったー、あ!危ない!」
デッドブルが暴れた衝撃で、鳥かごの罠が倒れそうになっていた。
<ウィンド>
鳥かごが地面に倒れる直前に魔法を使い、ふわりと浮かせ、衝撃を和らげる。
デッドブルは力尽き、地面に倒れる。
「光魔法一発で倒れないなんて、高ランクの魔物なのかしら」
デッドブルは放っておき、鳥かごに近づく。
黒い鳥は籠が倒れた衝撃で怪我が悪化し、ぐったりとしていた。
「急いで治療しないと!」
アイテムボックスからポーションを取りだし、黒い鳥にかける。
傷は治り、翼を広げ、力をとりもどしたようだった。
黒い鳥はユキの周りをフワフワと飛び回り、肩にとまった。
「人懐っこいのね。元気になってなによりだわ」
デッドブルの血抜きを済ませ、アイテムボックスに仕舞い帰ろうとするが、黒い鳥はユキから離れる様子はなく、ついてこようとする。
「あなたも一緒に来る?」
黒い鳥に話しかけると嬉しそうに返事をしてついてきた。
「ただいま」
家に着いた頃には日が暮れており、家の中には光がともっていた。
「遅いぞ!心配したじゃないか!」
扉を開けるなりルノが飛びついてくる。
「ごめんね、森の深くに入りすぎて帰りが遅くなったの」
怒っているルノの頭を撫でて、なだめようとする。
「ユキさん、その黒い鳥さんはなんですか?」
「この子とは森の中で出会ったの。罠にかかって怪我をしていたところを助けたらなつかれちゃったみた
い」
ルノは鳥をジッと見つめる。
「そいつ魔物だぞ、しかも従魔契約もされてるじゃないか!」
「従魔契約って?」
「魔物が人間と契約すること、いわゆる使い魔ってやつですね。私達がした主従契約とは違って、魔物を
使役することができるようになるのです」
「魔物が従魔になることを望み、人間がそれを受け入れれば契約は完了する」
「いつの間にか受け入れてたみたい」
「しっかりしろよ!っで?そいつの名前は?」
「名前?」
「まさかつけてないのかよ!」
ルノはあきれたといった表情でため息をついている。
「契約したんだから名前が必要だろ?早くつけてやれよ」
「そっそうね!じゃあ、あなたの名前はダクネスよ。よろしくね、ダクネス」
キー!
ダクネスは嬉しそうに羽を広げた。
「それにしてもあなた魔物だったのね。気づかなかったわ」
<鑑定:アンブルバード 漆黒の体に琥珀色の目が映えるためそう名付けられた。火魔法を使う>
「あなた魔法も使えるのね。頼りにしてるわ」
「魔法!そいつ魔法が使えるのか!」
魔法という言葉にルノは大興奮だ。
「見せてくれよ!魔法!」
「ルノ、今日はもう夜だし明日にしましょう。ね、ダクネスもそういってるわよ」
キィ~!
「わかったよ、絶対に明日な!」
「えぇ、約束よ!魔法も教えてあげるわ」
ルノは言葉も出ないほど喜び飛び跳ねている。
「よかったね!お兄ちゃん!」
こうして、数日前まで静かだった家に新たな仲間も加わって、いっそう賑やかになった。
ユキの鑑定日記
デッドブル:大きな角と赤黒い毛皮が特徴的でとても獰猛だが、肉は柔らかく高級品である。
アンブルバード:漆黒の体に琥珀色の目が映えるためそう名付けられた。火魔法を使う。




