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獣人との暮らしは楽しいです

双子の獣人が村の住人となることが決まり、ユキは食事の片づけにとりかかった。

「そういえば、二人とも名前はなんていうの?」

「なまえ?ああ、人間どもが呼び合っているやつのことか?」

「私達に名前はないですよ。私達は耳がいいので、名前がなくても誰が誰を呼んでいるかわかりますし」

二人はユキの質問に不思議そうに首をかしげる。

「うーん、でも名前がないと不便だしな」

「そもそもあんたは名前あるのか?」

衝撃的な出会いと、急展開に名乗るのを忘れていた。

「あれ?ごめんね、名乗るの忘れてた。私の名前は百原ユキよ。ユキって呼んで」

「ユキか、変わった名前だな」

「そうなの?」

「オレ達は人間と住む地域が近かったから人間が名前で呼び合っているのを何度も聞いたことがあるけど、あんたみたいな名前ははじめて聞いた」

「ああ、私はこの世界の人間じゃないからね、名前も聞きなじみがないのかも」

「この世界の人間じゃないってどういうことですか?」

ユキは包み隠さず話すことにした。

神様の手違いで死んだこと、廃村を再建するために転生したこと、全ての経緯を話した。

「こんな感じかな、信じられないかもしれないけどね」

「信じます!」

「オレも!」

ユキの少し不安げな表情に気を使ったのか、食い気味に返答してくれる。

「ありがとう、二人とも。そうだ!ねぇ、二人の名前、私がつけてもいいかな?」

「いいんですか!」

「いいのか!」

二人の反応は思いのほかよかった。

「もちろんよ!むしろいいの?自分で考えたっていいのに」

ユキは二人の反応に不思議そうに問いかける。

「あんた知らないのか?オレ達獣人族は魔族なんだぞ!魔族や魔物は自分たちで名前を付けあうことがで

 きない代わりに、忠誠を誓う相手からの名前を受け入れることで、パワーアップできるんだ!」

「なるほど、そんなものがあるなんて知らなかったわ」

「ユキさんは異世界から来たんでしょう?知らなくて当然だよ!」

女の子の獣人が励ましてくれる。

頭をなでながら「ありがとう」と言う。

「でも、なおさら私がつけてもいいの?忠誠って、いわゆる契約みたいなものでしょ?」

「いいんだ、オレ達はユキに命を救われた、ユキは命の恩人なんだ」

「死んだお父さんが言ってました、誰かに助けてもらったり、救ってもらったりしたら、その恩は必ず返しなさいって」

「だからユキ!オレ達に名前をつけてくれ!オレ達はユキに忠誠を誓う!」

ユキは、二人の勢いに負けた。

「わかったわ。じゃあ、あなたがルノで、あなたがルナ、でどうかな」

男の子の方にルノ、女の子の方にルナと名付けた。

二人が満足げな笑みを浮かべた後、額から緑色の光が放たれ、紋様が浮かび上がった。

「これで契約は完了みたいね、二人とも大丈夫?」

「大丈夫だ!むしろ力が湧いてきて、今なら魔法も使えそうだ!」

「ありがとうございます!ユキさん!」

二人ともとても元気で満足げだった。

「よかった、契約も無事終わったってことで、とりあえず二人はお風呂に入りましょう!服も洗ってあげ

 る」

汚れまみれで、泥だらけだった二人を風呂に入れ、服を洗い、魔法で乾かした。

「気持ちよかった~。ね!お兄ちゃん」

「そうだな!風呂なんてはじめて入ったぜ!こんなに気持ちいいものなんだな」

「それはよかった」

二人の発言の端々にこれまでの暮らしの過酷さが滲みでている。

単に種族間の違いや、世界観の違いかもしれないが、ユキは心を痛めた。

(こんなに小さい子どもがしていい発言じゃないわ)

「そういえばユキは魔法が使えるんだな」

「え?まあ、使えるけど」

「今度教えてくれよ!さっき服を乾かすのに使っていた魔法、あれ風魔法だろ!オレ達の種族は風魔法が

 得意なんだ!いつかオレも使えるようになりたい!」

あまりにも目を輝かせているルノがかわいらしくて少し笑ってしまった。

「なっ!なんで笑うんだよ!」

ルノは顔を真っ赤にして怒っている。

「ごめんごめん、かわいくってつい、もちろん教えるよ!練習すればすぐに使えるようになるよ!」

「ほんとか!」

ルノの表情はコロコロと変わって、見ていて飽きない。

ルナもそんなルノの姿を見ていて楽しそうだ。

(この二人から笑顔を奪ってはいけない、私が守らなくちゃ!)

ユキは二人を守り抜くことを心の中で誓った。

「さあ!次は二人の部屋を用意しなくちゃね!二人とも手伝ってくれる?」

「「うん」」

ユキたちは、二階の部屋へと向かった。

二階は手付かずで、掃除も行き届いてはいない。

少し埃っぽくて、薄暗いが、掃除をすれば使えそうだ。

「さあ!掃除を始めるわよ!」

ユキは高いところを中心に、ルナは放棄で埃を集め、ルノは雑巾がけをした。

三人で協力したことで、あっという間に掃除は終わって、部屋はピカピカになった。

「ふ~、二人のおかげで思ったより早く終わったわね。ありがとう、二人とも!」

二人は恥ずかし気で、どこか誇らしげに笑った。

「じゃあ、次は、ルートを切り開くときに倒した魔物の解体と、薬草の仕分け、やる事が山積みね」

「なにか手伝えることはありますか?」

「オレ達なんでも手伝うぜ!」

悩んでいたユキを見かねて、ルノとルナが声をかけてきた。

「ありがとう、二人とも。それじゃあ、倉庫にいきましょう!薬草の仕分けをやってもらうわ」

三人は倉庫へ向かった。

「二人にはここで薬草の仕分けをしてもらうわね」

ユキは前に仕分けた薬草の瓶を棚からとり、二人の前に並べた。

「この瓶の中に入っている薬草ごとに分けてほしいの、どう?できそう?」

「大丈夫だけど、匂いがキツイな。オレ達は嗅覚が優れているから薬草の匂いで鼻が痺れる」

「そっか、ちょっとまってね」

二人の鼻と口元を布で覆う。

「だいぶましになりました!これならできそうです!」

「よかった、でも、無理はしないでね。私は隣の解体場にいるから、何かあったら呼んで」

二人を倉庫に置いて、ユキは解体場に向かう。

ルート開拓の際に倒した魔物をアイテムボックスから取り出す。

「ポイズンスパイダーが20匹に、ホーンラビットが3匹か。全部解体するのは骨が折れるわね」

ユキは早速解体を始めた。

ポイズンスパイダーは爪と皮に価値があるため丁寧にそぎ落とし、体内の毒に気をつけながら解体する。

「ポイズンスパイダーはこれで終りね、次はホーンラビットを、」

一匹目のホーンラビットを解体しようと刃を入れたとき、ホーンラビットの体内から血が噴き出した。

「うわっ!この子だけ血抜きするの忘れてたみたいね」

服も髪も血まみれになってしまい、周囲にも血が飛び散った。

そのとき、解体場の扉がキィーと音を立てて、開いた。

「ユキさん、薬草の仕分け終わったよ、」

薬草の仕分けが終わったことを伝えに来たルナが扉を開けて入ってきたのだ。

ルナは血まみれの部屋と血まみれのユキを見て凍り付き、叫びもせずに気絶し、倒れた。

「ちょ、ちょっとルナ!しっかりして、ルナ!」

ユキの慌てた声を聞きつけてルノまで部屋に飛び込んできた。

「なんだ!どうしたんだ!」

そこには、血まみれのユキがルナの傍らで叫ぶ姿だった。

信じられない状況にルノは混乱し、ルノまでも気絶して倒れた。

「ちょ!ルノまで⁉二人ともしっかりしてーーーー!!」

ユキは血まみれの体を水魔法で洗い流し、二人を抱えて家まで戻った。

次に二人が目覚めたのは日が暮れ始めた頃だった。

「しっかりしてくれ!ホントにビックリしたんだからな!」

「よかったー!ユキさん死んじゃうのかと思ったー!」

怒るルノと、泣くルナにあわあわするユキ。

「おい!聞いてるのか!」

「わーん!ユキさーん!」

ルナを抱きかかえ、慰め、ルノの説教をおとなしく聞いた。

「二人ともごめんね、心配かけたよね、もう気を付けるから、ね?」

なんとかルノを落ち着かせ、ルナを泣き止ませる。

「二人とも、薬草の仕分けありがとね。助かったわ。もう日が暮れるし、ご飯にしましょう?とっておき

 の料理を作ってあげる!」

ユキはキッチンに立ち、アイテムボックスからキンググリズリーの肉を取り出した。

「肉か!肉なのか!」

ルノは大きな肉の塊に興味津々で、目を輝かせている。

「そうよ!すぐに用意するからルナと遊んで待ってて」

ルノはおとなしくダイニングに向かい、ルナと話を始めた。

肉を切り分けながら、二人の会話に耳を傾ける。

「とっても大きなお肉だったね!」

「楽しみだな!」

二人は肉をとても楽しみにしているようだ。

ユキはアイテムボックスからあるものを取り出す。

<鑑定:ガーリッシュ 火を通すと香ばしい香りをはなち、肉などの調理に使われる>

「ルート開拓の時に見つけたのよね、名前も見た目もニンニクっぽいし、ガーリックステーキにしようと

 思って摘んできたのよ」

ガーリッシュを細かく切り刻み、肉と一緒に焼く。

部屋の中にふわりとニンニクの香りが漂う。

「なんだこの匂い!」

「すごく美味しそうな匂い!」

ダイニングにいた二人が涎を垂らしながら、待っている。

「よし!できたわよ!」

ユキはテーブルの上に肉を盛った皿と、朝の残りのスープを置く。

「「ふわ~」」

テーブルの上の肉に二人は目を輝かせる。

「キンググリズリーのガーリッシュステーキよ!」

ユキも席について手を合わせる。

さっそく肉を食べようとしていたユノは、その光景を不思議に思い声をかける。

「何してるんだ?」

「食べ物に感謝してるのよ。こうやって手を合わせて、いただきますっていうの」

二人はフォークを置いて、手を合わせる。

「それじゃあ、いただきます!」

「「いただきます!」」

三人は勢いよく肉にかぶりつく。

「うっうっうまー!」

「おいしー!」

二人はガツガツと肉にかぶりつく。

「これは美味しいわね!牛や豚、ホーンラビットとも違うおいしさだわ!」

肉を噛むたびに肉汁があふれ出し、口の中いっぱいにガーリッシュの香りが広がる。

三人はあっという間に食べ終わり、ルノとルナはソファーに横になっている。

「お腹いっぱい、もう食べられないよ~」

幸せそうなその姿を見てユキは嬉しそうに笑った。

(今までのつらい記憶がなくなるくらい幸せで包んであげたいな)

ユキは心の中でそう思った。

ユキの鑑定日記


ガーリッシュ:火を通すと香ばしい香りをはなち、肉などの調理に使われる

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